閉ざされた部屋で、男は永い眠りから覚めた。
 呼んでも兄は応えず、扉は内から開かない。男は端末から回線を築き、かつて暮らした部屋に眠る小さな機械――ハルを呼び起こす。
 遺跡を下ったハルが行き着いたのは、追手の踏み込んだ門の部屋だった。そこに、深手の父と幼い娘がいた。ハルは二人を門の向こうへ逃がし、門を壊して、捕らわれた。
 回線を失った男は、ハルの信号が届けば目覚める仕掛けを残し、ふたたび眠りにつく。

 門の向こう、ヤマト。
 父から言伝と腕輪を託された娘シューニャは、兄となったオシュトルとともに帝都へ上る。だが、彼の地へ渡らせてほしいという二人の願いを、帝は「足りぬものが多すぎる」と退けた。
 ディコトマの門下で、殴り合いの末に朋輩となったミカヅチ。イヅモの太守の娘ムネチカ。四人はミカヅチの故郷に眠る至宝の試練に挑み、互いに背を預ける一つの班となっていく。
 彼の地へ渡り、自分たちを逃がして捕らわれたハルを取り戻す――そのために。

 ――救刻の巫と呼ばれた少女の行く末を、白き目覚めが塗り替える。