やはり俺の戦車道は間違っている。【完結済み】   作:ボッチボール

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これにて、【やはり俺の戦車道は間違っている。】は完結します、これまでお付き合い頂けた皆様に感謝と、これから始まる劇場版でよろしければまたお付き合い頂ければ幸いです。

狙ってたようにちょうどまるまる二年と続いた番外編。やはり最後ですから、ガルパンのエンディングを聞きながら読んで貰えると良いかもしれませんね(露骨な伏線)。


そして、彼と彼女達の物語は次へと進む。

戦車道が嫌いな理由。

 

その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある、少し長くなるぞ?

 

…なんて、長々と過去話をできる程のエピソードがあるのならまだ良かっただろう。あの八幡に悲しい過去が!?とかできたのだから。

 

だが、困った事にバックボーンを問われれば根本にあるのはただの負け惜しみや嫉妬の類いで。それも特別、何か大きなエピソードがあった訳ではない。

 

いや、もちろん戦車の話しすぎて引かれたとか、戦車の話題で女子とちょっと良い感じに話が出来ちゃって勘違いしちゃった話とか、細かいエピソード自体はいろいろあるんだが。本当、オタクって自分の得意分野になると急に饒舌になってマウント取りがちだよねー。

 

だが、そんな細かいエピソードを長々と話した所でしょうがないし。うっかりトラウマが甦った日には今日の夜は枕を濡らし、翌朝こっそり枕シーツを洗濯するはめになってしまう。

 

そもそもが言葉をどれだけ紡ごうとあの手この手で理屈をこねいて逃げに入ってしまうのが俺だ、特に今回の理由ならば間違いなくそうやって逃げ回るだろう確信がある。

 

単純な話。目の前の彼女にそんな自分の嫌な部分は見せたくないのだ。…いや、マジ気持ち悪いな、俺。

 

「…狐と葡萄って話、知ってるか?」

 

なので、言葉で逃げ回れないよう、例え話で縛り付ける。

 

「えと、イソップ物語…だっけ?」

 

「それな、まぁ有名な話だしな」

 

狐と葡萄、あるいは酸っぱい葡萄。

 

腹をすかせた狐が木の上になっている葡萄を見つけ、手に入れようとする。

 

しかし、木の上に実る葡萄は狐がどれだけジャンプしても、もがいても届く事はない。

 

やがて諦めた狐は去り際に「あの葡萄は出来損ないだ、食べられないよ」とか言って去っていく。

 

だいぶうろ覚えだが、まぁたぶんそんな話だ。ちなみに「明日、もう一度来てください、本物の葡萄を食べさせてあげますよ」とは言わない。

 

そもそも言えるはずがない、結局狐は葡萄を食べてもいない、手に入れていないのだから。

 

食べてもいないのに味がわかる奴なんてどこぞの美食倶楽部連中くらいなものだ、いや、狐がよっぽど美食家だったのかもしれんけど。

 

要するに、狐は取る事の出来なかった葡萄を「不味い」と決めつける事で諦める理由を作ったのだ。

 

この話は教訓の場での教訓、あるいは心理学的にもしばしば話題に出される事がある。

 

狐が葡萄を手に入れれなかった事に対する事への負け惜しみ、あるいは葡萄を不味いと決めつける事で自分を正当化する合理的判断の一つとされている。

 

「…戦車は好きなんだよ」

 

ずっと昔から好きだった。

 

「けど、戦車道は女子の武芸だからな」

 

世間的にも男は戦闘機に乗るならいいけど、戦車に乗るのは野蛮で卑怯な行為…とまで言われている。…さすがにちょっと酷くないですかねぇ?

 

「つまり、それだけの話なんだよ。あの話の狐と同じ、単なる負け惜しみだ」

 

自分が手に入れる事が出来なかったものに対する負け惜しみ、あるいは嫉妬。

 

つまらない、下らない、面白くないと決めつけて、自分を正当化した。ただそれだけの話。

 

「…ごめんね」

 

「…謝んな」

 

…本当に、止めて欲しい。西住の優しさはこういう時、鋭く刺さる。

 

「そもそも、西住に悪い要素何一つねぇし、俺が勝手に決め付けてるだけだからな」

 

戦車道なんて、女子連中が戦車をオモチャに戦争ごっこをして青春の言い訳に使う、戦車に対する冒涜だと。

 

…それはまぁ、こうして戦車道に関わるようになってからは違うというのはわかった。戦車道をする誰もが真剣で、一生懸命に戦車道という武芸に取り組んでいる事も充分わかっている。

 

それでも、それが戦車道を好きになる理由にはならない、なるはずがない。

 

「だから、俺は戦車道が嫌いだ」

 

当然だ。だって狐は横で美味しそうに葡萄を食べる彼女達を、ただ眺める事しか出来ないのだから。

 

「そう…なんだ」

 

西住が小さく呟く。彼女も西住流の家元の娘だ、戦車道という武芸がどういう物なのかはよくわかっているだろう。

 

だが、彼女はすぐに顔を上げる。

 

「あ、あのね!八幡君、お姉ちゃんに聞いたんだけど蝶野教官が男の子にも戦車道ができないかっていろいろ動いてて…」

 

「あぁ、知ってる。てか蝶野教官から直接聞いたし」

 

ってか…姉住さんも知ってたのか。まぁ、だからこそエキシビションに俺が出ると聞いてもあっさり頷いてたのだろう。

 

「えと、その…だからね、八幡君も戦車道、できるんだよ!!」

 

力強く両手を握って、ちょっと興奮気味に西住は顔を近付けてくる、いや、なんで君がそんな嬉しそうなの?

 

「いや、話は聞いたし良い試みだとは思う。まぁ…俺はやんないけどな」

 

「…なんで?」

 

あ、これは完全に素の『なんで?』だわ。そういや、あの時の蝶野教官も似たような顔をしていたな。

 

「ずっと一方的に嫉妬して、憎んで、楽しくないと決め付けて嫌っていたもんを、自分ができるとなった途端、手のひら返してノリノリでやれるかよ…」

 

正直、あの話を聞いて心がざわついた。だが、あそこで快諾をしてしまえば、今までの自分は全て嘘になる。

 

だから『比企谷 八幡、男子戦車道編』はないのだ、あしからず。

 

「…それをしたって、誰も八幡君の事を悪く言わないと思うな」

 

「俺が言うんだよ。…人なんてそう簡単には変わらん」

 

そう、人は簡単には変わらない、だからこうして今も俺は拗らせ続けてる。

 

「…私は、変われたよ?」

 

「…西住?」

 

「大洗に来て、みんなと出会って、私は変われた。あんなに苦手だった戦車道が、みんなとやるのが楽しくって、大好きになった」

 

あぁ、まぁ…それはね、その…。

 

「だから、八幡君も変われると思うな」

 

「経験者に語られたら、マジなんも反論できねぇな…」

 

いや、本当に反論の余地が一切ない。てか西住さん、それはちょっと卑怯じゃありません?

 

ずっと戦車道にトラウマを抱え、悩み続けてきた西住にこうして変われたと言われれば、そうそうに諦めた俺としては何も言えない、そもそも言える資格もないだろう。

 

「うん!木の上になっている葡萄に届かないなら…誰かが取って、それをみんなで食べればいいんだよ!!」

 

「それで猿に木の上から柿ぶつけられて死んだ蟹もいるけどな…」

 

「そ、そういう話もあったかもしれないけど…」

 

てか、その場合柿じゃなくて戦車ぶつけられんの?俺。

 

「つか、あの話ってさるかに合戦って言うわりに猿を徹底的にリンチするだけになってない?しかも、かなり戦略的に」

 

猿が火に近付いた所を栗が火傷させて、水で冷やそうとした所を蜂が指し、逃げようとした所を牛のふんが滑らせて上から臼が押し潰すという、正に計画的なピタゴラスイッチ殺人。

 

そもそも蟹、臼、栗、蜂、牛のふんってどういう交遊関係なんだよ、LINEのグループ会話とかで普段なんの話してるか見てみたいわ。

 

余談だがあの話で一番可哀想なのは猿でも蟹でもなく、牛のふんまで擬人化されているのにただの凶器として扱われた柿である。蟹に「早く実をつけないとハサミでちょんぎるからね?」とか脅されてんだぞ、あの柿。

 

「む、昔話、昔話だからね?」

 

まぁ舌切雀でも、カチカチ山でも、昔話なんて子供向けにアレンジこそされているが本来は結構グロいものが多い。

 

往々にして昔話というものは現代風にブラッシュアップされ、物語の大概はハッピーエンドに繋がるようにアレンジを加えられている。

 

…となれば、葡萄を取る事が出来なかった狐は、その後どうなったのだろうか。

 

他に美味しい食べ物を見つけた可能性はもちろんあるし、飢えでそのまま死んでしまった可能性もあるのだろう。

 

もしかしたら…その後、誰かに出会い、もう一度あの葡萄の木の下へ行き、葡萄を取って貰った。そんな可能性の話があっても良いのかもしれない。

 

「…悪いな、面倒かけて」

 

「ううん、いいよ」

 

それで、狐がその葡萄を食べてどう思うかは、また別の話になるのだろうが、そもそも物事の好き嫌いはやってみないとわからないのだろう。

 

「私…その、八幡君が戦車道楽しくないのは…嫌だから」

 

「まぁ一緒にやる奴がやる気ないと普通にムカつくし、仕事の効率とかも落ちるし、お前もう船降りろとか言いたくなるよな」

 

「え?その、別に学園艦から降りなくても良いんだけど…」

 

あぁ…そういや学園艦も船でしたか、うちの生徒会ならマジで言い出しそうなんだよなぁ…。

 

「だって、せっかく初めて八幡君と一緒に試合するのに…私達だけ楽しいの、嫌だもん…」

 

「…そういや、なんだかんだ一緒に試合すんのは初めてになんのか」

 

わりと校内の模擬戦こそちょくちょく参加させて貰ってはいるが、自然と西住と同じチームで戦う機会はなかった。

 

いや、自然とって…おかしいでしょ?明らかに人為的な雰囲気しか感じないんだけど、主に生徒会的な何かの力しか感じないんだよなぁ。

 

「そうだね、えっへへ…改めて言うとなんか恥ずかしいな」

 

いじいじと両手を絡めながら呟いた西住に…なんかもう、いろいろとあれこれ考えてたのが吹っ飛んでしまった。なにこの破壊力!何㎜砲なの!?

 

「あー…まぁ、その、なんだ西住」

 

「うん?」

 

「…エキシビション、勝ちに行くぞ」

 

「…うん!!」

 

人は変わる、と西住は身をもって教えてくれた。

 

ならば、捻くれで、拗らせてて、間違い続けの俺でも、何かきっかけがあれば変わる日はくるのだろう。

 

ーきっと変わる。

 

ーーやっと変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

ーー

 

 

「それじゃあ、二人共、中に入っている紙を取ってね」

 

会長がいかにも生徒会が前もって用意していたかのような手作り感満載の抽選箱を抱えて二人の前に立つ。

 

一人は大洗、知波単チームの隊長となる西住、そしてもう一人は聖グロリアーナ、プラウダチームの隊長となるダージリンさんだ。

 

西住とダージリンさんは静かに、二人で同時に抽選箱に手を入れ、やがて中に入っているであろう紙を掴んだ。

 

「二人共取った?なら、それを同時に掲げてね」

 

「はい」

 

「えぇ」

 

…なにこの緊張感?こういうのって戦車道全国大会の開会式のトーナメント決めする時にやるやつじゃないの?俺出てないから知らないけど。

 

「いい?んじゃ、せーのっ!!」

 

会長の掛け声と同時に、西住とダージリンさんが手にした紙を高々と上に掲げた。

 

西住の紙は『白紙』、一方、ダージリンさんの紙には『×』の印が付いていた。

 

「って事で、比企谷ちゃんは聖グロリアーナとプラウダ側のチームだね、よろしくぅ!!」

 

気安くバンバンと肩を叩くと会長はニコニコと微笑んだ。うっわー、マジかこの人ー…。

 

まぁ今回の出来事を要約するとこうである。

 

このエキシビションマッチ、てっきり大洗チームに入る前提で居た俺だが…、てか、普通そうじゃないの?大洗の生徒だよね俺?

 

だがそこで待ったをかけたのはダージリンさんであり、カチューシャさんだった。ダージリンさんは例の格言構文で武装し、カチューシャさんはね…うん。

 

さすがに高校三年生にもなる彼女の駄々っ子姿を事細かに説明するのは気が引けるので割愛させて貰うがあえて一言付けるなら超可愛い、思わず『カチューシャ』歌っちゃいそう。

 

そんな訳で俺がどっちのチームに入るのか、で大洗と聖グロリアーナ、プラウダがバチバチだったのだ、ふぇぇ…怖いよぉ。

 

なお、知波単の連中はひたすらうんうんと頷いていた。いや、俺もこの人達よく知らないから助けも求められないんだけどね。

 

最終的に生徒会がこの抽選箱を持ってきたのである。…ちょっと用意良すぎません?事前に作ってたのそれ?そもそも俺が入るチームの紙に『×』の印は悪意しか感じられないんだが…。

 

「えぇ…八幡君?」

 

あぁ…西住がなんか捨てられた子犬みたいな目でこっちを見てくんだけど、どちらかといえば捨てられたのは俺なのでは?誰か拾ってくんねぇかなぁ…。

 

「…ご不満かしら?」

 

とか考えていると、ダージリンさんがちょっと拗ねたように声をかけてくる。いや…不満というか、あの流れでこの結果はちょっと西住達にも申し訳ないといいますかね…。

 

「まぁ、予想外だったのは事実ですけど」

 

「あら?私はあなたとは共に戦いたい、とも言ったはずよ」

 

「あれ、本気だったんですね」

 

「幸運の女神には、前髪しかない。こういう機会だもの、狙わない手はないわ」

 

「レオナルド・ダヴィンチですね」

 

「わざわざ後ろ髪剃ってんですかね…女神様」

 

ちょっと女神様の髪型としてどうなんですかね…?てか、そもそも数少ない髪の毛掴んでもいいんですかね?また髪の話してる…。

 

「何?このカチューシャと一緒に戦えるのよ?もっと喜びなさい」

 

「そうですよ、もっとカチューシャのように喜ぶべきです」

 

「わ、私は別にどっちでも良かったわよ!ハチューシャが敵になるなら叩き潰すだけよ!!」

 

「でも、比企谷さんの紙を引いた時にガッツポーズしてましたよ?」

 

なにこの人超可愛い、俺もノンナさんとクラーラのカチューシャさんを見守る会に入っちゃいそう。

 

「それではマックス、この後は作戦会議も兼ねてお茶会はどうかしら?」

 

「聖グロリアーナの紅茶も良いけど、プラウダのロシアンティーだって負けてないんだから!!」

 

「あら、ペコもよほど気合いを入れて準備してくれるそうよ?マックスが来てくれて嬉しいのね」

 

「だ、ダージリン様!!」

 

うーっとペコが恥ずかしそうに唸っている、なにこの空間、可愛いしかないの?

 

「………」

 

…あえてあんまり見ないようにしてたんだけどね?いや、本当は見たくないんだけどね。

 

オーラがね、…もうヤバいのよ、大洗側の。

 

「ブルータス、お前もか…」

 

「我が藩から脱藩者が出てしまうとは…悲しい事ぜよ」

 

「まるで小早川秀秋のような見事な寝返りだな」

 

「「「「それだ!!」」」」

 

どれだよ。いや、歴女グループはこれが平常運転だからほっといてもいいんだけどね?

 

いや、他の大洗チームも大概言いたい事すげぇ言ってますし、特にウサギチームの連中は後でシめるとして。

 

「ふーむ…比企谷さんは相手側になるのか」

 

「だ、男性の方が相手とは!!」

 

「西隊長!我々はどうすれば!?」

 

「西隊長!!」

 

「みな臆するな!例え誰が相手でも我々知波単の誇りは変わらない、そうだろう?」

 

「我々の誇り…つまりは突撃ですね!!」

 

「さすがは西隊長!」

 

「知波単名物、総突撃をあの方にも見せてあげましょうぞ!!」

 

そもそもあまりよく知らない知波単の連中も別に…え?今こいつら、俺に突撃宣言しませんでした?しかも総って付けて。

 

ま、まぁ…嫌な予感はするけど、それはあくまで予感だし、未来だから。問題はね、現在進行形で進んでいるんだよ。

 

「比企谷…」

 

「比企谷さん?」

 

「比企谷殿…」

 

「比企谷さん」

 

「…八幡君?」

 

ふぇぇ…あんこう怖い。そらリアルあんこうが怖いのだが、それ以上にあのデフォルメされたあんこうのイラストの方が今は恐ろしい。

 

「まぁ…その、お手柔らかに?」

 

「うん、お互い全力で戦おうね」

 

…お手柔らかにって言ったじゃん!全力出す気満々じゃん!!

 

なんだったらあんこうチームの背景からオーラが見えるんだよなぁ、ラスボスとかが出してくるやつ。

 

やっぱり、ラスボス枠なんだよなぁ…この子達。




ちなみに劇場版からは別小説を立ち上げると思います、八幡が戦車乗ったり、いろいろ変更点があるので。

しかし、最後に戦車戦書いたの2019年とか、果たしてちゃんと書けるのだろうか…?
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