銀魂の世界に蓬莱のお姫様が迷い込んだ話   作:芋けんび

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輝夜でバトルとか要らんっていう意見も少なからずあるし、輝夜様の戦闘描写は必要ないかなぁなんて思う今日この頃。

そもそも能力がチート過ぎるから戦いなんて須臾使えばどうとでもなy

おっと、誰か来たようだ…




罪題「不死転輪」

 

殺気を纏って襲い掛かって来る虚をあしらいながら、輝夜は彼に問い掛ける。難題を出せば諦めて帰ってくれるかと思ったが、どうやら彼は本気らしい。

 

虹色の残像を残しながら虚の体がスっと消える。次の瞬間、背後に回った虚が輝夜の首を斬らんと刃を振り下ろす。

 

「いたっ……」

 

間一髪で虚の攻撃を避ける。致命傷は避けたものの、右頬に傷が付き、血が流れ出す。

 

「今のを避けますか。流石ですね」

 

「出鱈目な移動方法ね。登場する作品を間違えてるんじゃない?」

 

お前が言うな!そんなツッコミが何処からか飛んできそうだが、この場にいるのは虚と輝夜のみの為、ツッコミ役は誰もいない。

 

「貴女が私に剣を教えてくださったお陰ですよ」

 

「皮肉かしら?それ」

 

「まさか。感謝の言葉ですよ。貴女が私を救ってくださってなければ、私の心は今もずっと死んだままでしたから」

 

親に構ってもらえて喜ぶ子供の無邪気さとは真逆の、狂気に満ちた笑みを浮かべる。虚は知らない。輝夜が熱心に自分に教えてくれた剣術が、実は輝夜が適当に考えたデタラメの技だということを。

 

流派や型なんてものは存在しない。ただ単に『これカッコイイんじゃない?』とか、『これ使えば強そうじゃね?』という感じのノリで決めただけのものだ。

 

輝夜の前では純真だった虚は、輝夜が言うことは何でも素直に信じてしまった。

 

とは言え、そんな存在しないなんちゃって流派と己の技量のみで他を寄せつけない強さを手に入れてしまうのだから、その才能は本物だった。

 

「その場のノリで先生の真似事なんてしたばっかりに貴方は今も私を師と扇いでいるのね…」

 

しみじみと呟く。虚の純粋な心は、今では見る影もない。いや、心そのものは昔と変わらないのかも知れない。ただ、純粋という名のメッキが剥がれ落ち、本質が露わになっただけだろう。

 

だが、輝夜は一つ大きな勘違いをしていた。確かに虚は、剣術や学を教えてくれた輝夜を『師』と扇いでいる。然し、それだけが理由ではない。自身と同じ不老不死という同種の存在でありながら、自分とは掛け離れた特別な存在。

 

蓬莱山輝夜は、地上の暮らしに興味を持ったからと、地上に行く為に不老不死になる禁忌の薬を飲むという大罪を犯した。虚が『何故そのような事をしたのか?』と問えば、『処刑されても死なないって分かれば、地上へ流刑されるって知ってたから』と輝夜は笑いながら答えた。

 

ーーその時に虚は知ったのだ。輝夜の精神()の強さを。

 

大人に成長しても輝夜に向ける笑顔はあの時のまま。自分を師と慕ってくれているその瞳は、百年前以上前と何も変わっていない。

 

「師よ。一つ訊かせてください」

 

「…? 何かしら?」

 

「どうして身を守るばかりで反撃して来ないのです?」

 

虚の疑問は尤もだった。幾ら輝夜が蓬莱人で不老不死だとは言え、虚の攻撃をまともに喰らえば怪我の一つぐらいする筈なのだ。

だが、輝夜は虚の猛攻を紙一重で避けるだけで、自ら攻撃しようとはしない。

 

何故、輝夜は自分から攻撃を仕掛けようとはせずに防戦一方の戦い方をしているのか?

 

「だって、私は別に貴方と戦いたい訳じゃないもの。折角久しぶりに会えたんだから、ゆっくり昔話でもしない?」

 

呑気なことを言いながら微笑む輝夜を見て、虚は苛立ちを覚える。が、何処までもマイペースな部分は昔から何一つ変わってはいないということに乾いた心が安らぐ。

 

「……そうでしたね。貴女は初めて出会った時からそういう人だった。一目見れば魅了して止まない容姿に、他を惹き付ける圧倒的なカリスマ性。なのに、当人はそんな周りの反応などお構いなしに自由気まま…。貴女がずっと変わらずに私の傍に居続けて下されば、私は無数の私を生み出す事はなかった。…いえ、違いますね。貴女の存在があったからこそ、私は今もこうして生きている」

 

「……虚?」

 

「私は貴女に憧れているんです。同時に、それ以上に感謝もしています。私という存在を形にしてくれたことを…」

 

刀を握る手に力が篭る。そして、刀身を鞘に納めた。

 

「?どういうつもりかしら?」

 

「ふふっ、気が変わりました。それに…今の私が貴女と本気で戦った所で、赤子同然でしょうしね」

 

「…なんの事かしらね」

 

「隠さなくてもいいですよ。尤も、何の能力なのかは私には見当もつきませんが」

 

輝夜に斬り掛かる度に辺り一帯の空間に妙な違和感を感じた。人間の脳は視覚で見た情報を処理し、それを電気信号に変換して全身に送る。

 

それが人体の仕組みであり、当然、目で見て得られる情報以外のものは認識出来ない。だが、幾千の時を戦って来た虚には、空間と認識に僅かなズレが生じているのが分かった。

 

「能力なんて大層な物じゃないわ。永遠と須臾は、云わば食べ物を永遠に腐らないようにしたり、生き物や植物の成長を止まらせる位しか使い道がない。そんな戦闘向きではない能力だもの」

 

「十分に…いえ、過剰が過ぎるぐらいには強力な力だとは思いますがね…」

 

銀時には「お前、登場する作品間違えてるだろ」だの「早くジ〇ジョか呪〇廻戦の世界に帰れ」だのと散々言われたものだが、実際の所、輝夜はこの世界ではイレギュラーな存在だった。

 

ギャグと下ネタと放送ギリギリのパクリとメタ発言しかないような世界で、一人シリアスなキャラが紛れ込んでいるようなものだ。

輝夜の存在がこの世界を歪めているのは、また事実である。

 

「今回は潔く立ち去りますが、貴女を諦めた訳では有りませんので、そのつもりで…。それでは師よ、何れまた何処かでお会いしましょう」

 

「私を諦めるつもりはないのね」

 

「お互い死ぬ事のない身なのですから、別れの挨拶は不要でしょう?」

 

「……ええ。それもそうね。互いに死の理から外れた化け物だもの。再会を喜ぶことはあっても、別れを悲しむ必要はない。次会う時は、もう少しゆっくり貴方とお喋りしたいわ」

 

踵を返し、虚は去っていく。昔は素直で可愛い子供だったのに、今となってはすっかり捻くれてしまった。

 

まぁ、輝夜が余計なお節介をしたせいでもあるのだが、それでもやはり、自分の弟子をこんな風にしてしまった責任は感じている。

 

過去の自分が引き起こした気まぐれが、まさかこんなにも大きな影響を及ぼすとは思わなかったのだ。それだけ幼少期の虚にとって輝夜は存在が大きかったのだろう。

 

「私が幻想郷に帰るなんて言い出したら、意地でも付いてきそうな迫力だったわね。私の何がそんなにあの子は気に入っているのかしら…。永琳の方がずっと魅力的な女性だと思うけど」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

警察組織と幕府を巻き込んだ国盗り合戦から数日。万事屋一行は吉原へと訪れていた。団子屋で沖田から幕府の様子を聞かされる。

 

「これも因果応報ってヤツですかね。暗殺で全てを築いた男が暗殺で生涯の幕を閉じるなんざ。上はあの騒ぎの後に事件を公にするのは拙いってんで、世間にゃ病死って事にするらしいでさァ」

 

「……爺さんは?」

 

「ピンピンしてますよ。まぁ、城内が厳戒態勢を敷いてるんで、江戸の外には出られないと思いますが。旦那達と一緒にいたっていう女に感謝してましたぜ」

 

「ぐーやん…」

 

暗い表情のまま俯く神楽を見兼ねてか、新八が「あの…」と話を切り出した。

 

「輝夜さんの遺体が消えたってのは本当なんですか?沖田さん」

 

「ああ。まるで狐にでも化かされたみてぇに、血溜まりごと忽然と消えやがった。証拠隠滅の為に下手人が持ち去ったって線も考えられるが…あれが幻覚だったのかもよくは分からねぇ。」

 

沖田は女の死体が血溜まりに倒れていた光景を目にしていた。その時の事を鮮明に覚えている。

 

手足があらぬ方向に折れ曲がり、骨が肉から飛び出た無惨な死体だった。あんな状態で生きていられる筈が無い。

 

「じゃ何か?輝夜が実は不老不死でしたーとか言いてぇのかテメーは。アホか。ジャンプの読み過ぎだっつーの」

 

「万事屋の旦那、俺はコロコロ派でさァ」

 

「んなこと聞いてねーんだよ!何でわざわざボケで返したぁ!?」

 

「ぐーやんはきっと生きてるアル。いつもみたいに、のほほん顔で『あら、みんな揃ってどうしたの?』って現れるネ」

 

「……」

 

無理矢理な笑顔を作って言う。そんな神楽を見て、銀時は何も言わずに頭を撫でてやった。

 

「まぁ、女についてはこっちでも色々調べてみます。名前なんでしたっけ?」

 

「蓬莱山輝夜。職業は月のお姫様な」

 

「銀さん、月のお姫様は職業に入れていいんですか?」

 

「知らね」

 

「蓬莱山なんざ珍しい名字ですね。どっかの金持ちの娘かもしれませんねィ」

 

「ブルジョワ様なのは間違いねーと思うぞ。見て分かるお高い着物を着てたからな。あとそれ、俺の団子だからな。なにシレッと盗み食いしてんだお前」

 

「じゃ俺はこの辺で。何か分かったら連絡しやす」

 

「人の話聞いてるぅぅぅぅぅぅ!?」

 

沖田は銀時の制止を振り切って、その場を去った。

 

「輝夜さん……」

 

「ま、アイツの事は心配すんな。その内ひょっこり帰って来るだろうさ」

 

「……はい」

 

輝夜が死んだと神楽達から聞かされた時、銀時の心臓は大きく跳ね上がった。一瞬、冗談を言っているのかと思ったが、二人が泣きながら話す様子を見て、それが嘘ではないと分かった。

 

そして、次に込み上げて来た感情は後悔だった。

 

輝夜は現実からは掛け離れた特別な力がある。その力が具体的に何なのかは、銀時には分からない。

 

生き物の成長を止める。

 

落とした割れ物が割れなくなる。

 

怪我をしない体質。

 

永遠と須臾が何を指していて、どれ程の効果があるのかも不明だ。

だが、一つだけハッキリしている事がある。

 

銀時は心のどこかで輝夜に甘え過ぎていたのかも知れない、と。どんなにピンチな状況になっても、輝夜ならきっと何とかしてくれるんじゃないか?絶体絶命の危機に必ず助けに現れるヒーロー(・・・・)みたいな存在として、無意識に捉えてしまっていた。

 

だが、考えてみれば当然の事だった。いくら強いと言っても、輝夜は人間である。戦場では一つの失敗が死に繋がる。いつまでも無敵の存在である訳がないのだ。

 

摩訶不思議な力の数々を目の前で目撃した事で、銀時の中でその認識が大きく変わってしまった。

 

「……ちっ。くそ…」

 

拳を強く握り締める。爪が掌に突き刺さり、血が流れた。輝夜を守れなかった事に対する自身への怒り。

 

「俺は認めねー。だから…早く帰って来やがれ。かぐy「私がどうかしたの?」……え?」

 

「……は?」

 

「……え?」

 

「?」

 

重苦しい空間に空気も読まずに割って入って来たのは、死んだ筈の蓬莱山輝夜だった。

 

「輝…夜…?」

 

「そうよ?なーに?そんな幽霊でも見た顔をして」

 

「いや、だっておま……」

 

「信女ちゃんに万事屋さんが何処にいるか聞いたら、吉原だって云うから来ちゃった。御丁寧に部下の人に吉原に案内を頼んでくれるなんて…。あの子、無表情で冷たそうに見えるけど、案外優しいのね」

 

「いやいやいやいや!?ちょっと待て!状況が一切整理出来ねぇんだけどぉ!?」

 

「あれ?言ってなかったかしら?私、怪我をしない(・・・・・・)体質なのよ」

 

「だ、だってぐーやん。血溜まりの中で倒れてたアル……」

 

「あぁ、あれ?ただのトマトジュースよ」

 

「その言い訳は無理ありますよね!?」

 

「美味しそうなお団子ね。私も一つ貰ってもいいかしら?」

 

「いや、呑気か。実家並の落ち着きっぷりじゃねーか!どんだけマイペースなんだ…。人の心配を返せコノヤロー!」

 

「そうアル!心配したんだゾ!コノヤロー!」

 

「僕もずっと心配してたんです。輝夜さんが無事で本当に良かった」

 

万事屋一行に詰め寄られ、マイペースな輝夜も流石に居心地が悪くなったのか、少しだけバツが悪そうな表情を浮かべた。

 

「ごめんなさい。そこまで大事になるとは思ってなくて…」

 

「思ってなかったって…お前なァ…。人に心配させておいて、暢気に団子なんか食ってんじゃねーよ」

 

「あ、このみたらしも結構美味しいわね」

 

「それ俺のみたらしなんだけどォ!?てか、俺の話は無視かゴラァァァァァァァ!」





輝夜は人間味が薄いというか、死に対する感覚が常人とはズレています。

作中で語っていた『そこまで大事になるとは思ってなくて』というのも、自分の命を軽んじているからこその発言です。

不老不死で死なないとは言えど、死ぬ瞬間の痛みや苦しみは怖いですし、トラウマにもなる筈なのに、「そんなの関係ねー!」とばかりに自分の命を軽んじている姫様って一体…
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