合意の射程 I
作者:

オリジナル現代/ノンジャンル
タグ:
大正11年制定、百年以上変わらない法律『二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律』。

令和の民法改正により婚姻年齢は18歳に統一されたが、飲酒可能年齢は20歳のまま据え置かれた。法律上の成人として婚姻契約(合意)を締結しながら、その婚姻儀礼の核心(三々九度)を刑事罰の脅威のもとで禁じられる。
これは、新橋の底で泥水をすすってきたしがない町弁・太田慎吾と、物事の動線設計にのみ熱中する偏執的な化学物質管理者・津本慎二が、国家という巨大なシステムの致命的な脆弱性(バグ)を突き、最高裁大法廷を完全ハッキングするまでの、徹底的にルールを遵守した「国家システムのデバッグ作業」の記録である。

【あらすじ】
「思考実験、付き合ってくれるか。お前、法律の人間だろ。ちょうどいい」
新橋の底で泥水をすすってきたしがない町弁・太田慎吾のもとに現れた、旧友・津本。
大学卒業以来、十年ぶりに再会した旧友は、化学メーカーで機能性薄膜や表面処理の研究開発をやる傍ら、信じられない「設計図」をカウンターに滑らせてきた。

理念(憲法)と実装(実定法)のあいだに放置された矛盾。
緩めるときは緩め、締めるときは頑なに規制する、国家のダブルスタンダード。
国側が「健康保護」を根拠に持ち出した瞬間に刺さる、医学的有害性の立証不能構造。

財政的公益を立証できた『どぶろく裁判』の判例を逆手に取り、国側の逃げ道をミリ秒単位で完全に潰した、前代未聞の憲法訴訟戦略。

憲法訴訟の壁(確認の利益、門前払い、不受理リスク)を全て見据えた上で、津本はニヤリと、最高に不敵で狂気じみた知性の目を細める。
「かけてもいい。お前はブチ切れ、爆笑し、最高に、やりたくなる、と。

──日本の四方システムがひっくり返るような、最高のちゃぶ台返しが、まさに始まろうとしていた」
  序章 思考実験の夜()
  第2話
X(Twitter)  ▲ページの一番上に飛ぶ