学生ちゃんを誘った先輩さんはもちろんゲーセンに行く訳で。
ゲーセンに着くと学生ちゃんが来ていて。
店に入ると常連の連中が居て。
学生ちゃんと常連の連中に何が起こるのか……、そんなお話。
第23話は1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目の8回に分けて公開します。
また本話『仲間ができた日(5日目)』は 第25話『友達ができた日(5日目)』と「並行」しています。
こちらもご一読いただければ幸い。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
先輩(主人公)・機械屋・学生、は女性、
店長、等々は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
5日目:休みの日
朝、いつもより早く目が覚めた。
今日は何かが起こる。もちろん良いこと。そんな気がする。
だから朝メシを食うことにした。
部屋の外から、ブイーンと何かを削る音。
機械屋ちゃん、もう仕事してるんだ。
部屋から出て声をかける。
「おはよー」
「ん?
ああ、おはよ」
挨拶が返ってくる。
「調子どう?
行けそう?」
私の質問に機械屋ちゃんの答え。
「もちろん、って言える。
今日ので十分なはずだ」
「そっか、あと少しだね」
機械屋ちゃんに笑顔で言って、笑顔が返ってきた。
食堂に入る。
普段は朝メシは食わない。
でも今日は「特別な日」になりそう。
だから食う。
メシ食って、後片付けして、まだ朝。
昼すぎまでの時間は十分すぎるくらい十分。
さて、どうしよ……。
……流行の方、1回しか読んでない。もう1回読もう。
食堂から出て私の部屋へ。
本棚に置いてた文庫本、人気のを手にして食堂に戻った。
読み始める。
この本は楽に読める。
ストーリーがシンプル。もちろん良い意味で。
でも、だから、単調だと思う。
……おもしろいのは確かなんだけどね。
読み終わったら昼前になってた。
よし、昼メシ作ろう。
冷蔵庫から食材を適当に出してメシを作った。
盛り付けてテーブルに置いて。
機械屋ちゃんが入ってきた。
「メシ作ってくれたのか、
すまねぇ」
「良いって良いって」
言葉を交わして2人テーブルに。
軽く話をしながらメシを食った。
メシを食い終えて。
「ラストスパートだ!」
そう言って機械屋ちゃんは食堂から出ていった。
私はメシの後片付けをして、文庫本を持って食堂を出た。
一旦部屋に戻って、本棚に文庫本を置いて、作業スペースに出る。
「んじゃ、行ってくるね」
仕事に取り掛かってる機械屋ちゃんに声をかける。
「了解!」
機械屋ちゃんの声には気合いが入ってた。
工房を後にしてゲーセンへ向かう。
今日も青空。絶対に良いことがある。
ゲーセンが見えてきて。
?
店の前に誰かがいて。
近づくと分かってきた。
学生ちゃんだ。
「こんちゃー」
気づいてくれた。
「あ、先輩さん、
こんにちは」
ちょっと困ってるような、そんな感じ。
「どったの?」
「その……、
盛り上がってるみたいなので入りにくい、と言うか……」
なるほど。
「じゃあ、一緒に入ろ」
「はいっ」
学生ちゃんから「困ってる」が抜けて嬉しさのある言葉が返ってきた。
ふたりで店に入る。
「こんちはー」
「こんにちは」
中には常連のが6人と、もちろんだけど店長がいた。
私たちに気づいてくれて、
「あ、先輩さん、
こんちは」
「こんちゃー」
「まいどっす」
「久しぶりっすね」
常連の連中からの挨拶。
次に学生ちゃんを見て常連のひとりの言葉。
「あれっ、きみ店の前にいた子だよね?」
学生ちゃんが答える。
「えと、
盛り上がってるみたいなので入りにくい感じがして……」
「ああ、そう言うことか」
納得してくれた。
学生ちゃんの声に店長も反応した。
「ったく、入りにくいって、
客が来ねぇのはやっぱりお前らが原因か。
最低ラインひとり1,000ダリル使え、ノルマだ」
「いやー、厳しいなー」
「店長、クールに行きましょう」
常連の言葉が店長に投げかけられる。
「あの、大丈夫ですか……?
ノルマって」
学生ちゃんが小さな声で私に尋ねた。
「大丈夫、大丈夫、
2,000ダリルとか3,000ダリルとか、さらっと使っちゃう連中だから」
私も小さな声で言葉を返した。
常連のひとりから私に、
「先輩さん、もしかしてその子が……」
「あ、もう知ってるんだ」
私の言葉に言葉が返ってくる。
「店長から聞きました」
「んー、そっか、
じゃあ紹介するね」
学生ちゃんを見る。
視線が合って、
うん、大丈夫。
「学生ちゃん、
『カグヤ』ノーダメージの子ね」
私の声に学生ちゃんの声が続く。
「『学生』です。
よろしくお願いします」
そう言ってぺこりとおじぎした。
「こっちこそよろしく」
「期待してるよ」
「これ、楽しみだな」
常連の言葉が学生ちゃんに向かう。
そんな言葉が落ち着いて、
「それじゃ、さっそく」
ひとりが言った。
「待って待って、
学生ちゃん、来たばっかだよ」
って言ったんだけど、
「先輩さん、大丈夫です。
じゃあ、お願いします」
学生ちゃんは大丈夫みたいで。
「んじゃ、行ってみよっか」
私の声が合図。
「お前の出番だ」
常連のひとりが隣にいるひとりに声をかけて、学生ちゃんの前に押し出した。
押し出されたのが言う。
「まいったな……、
俺、ゲーム苦手なんだよ」
常連プラス私はどっと笑う。
「なに言ってんだよ」
「それはなしだろ」
「うそはほどほどにしろ」
そんな言葉が飛ぶ。
場が落ち着いたところで、
「まっ、それは置いといて」
そいつは学生ちゃんに向かって立ち直した。
「『学生くん』で良いかな?」
「はいっ」
学生ちゃんの返事。
「『格闘野郎』で通ってる。
よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
学生ちゃんはぺこりとおじぎした。
「それじゃまずは……」
格闘野郎はズボンのポケットを探って100ダリル玉を取り出す。
「『カグヤ』、見せてもらって良いかな?」
100ダリル玉を学生ちゃんに渡した。
「ありがとうございます」
学生ちゃんは100ダリル玉を受け取ってお礼を言う。
「気にしないで大丈夫、
頼んだ方が金出すのがここのルール」
格闘野郎の言葉に店長が反応した。
「勝手なローカルルール作るな!
いいかげんにしろ」
店長の声に学生ちゃんは戸惑った感じになる。
「大丈夫大丈夫、
気にしなくて良いから」
常連のひとりが学生ちゃんに声をかけた。
「ありがとうございます」
お礼を言ってから『カグヤ』の前に移動。
私たちは学生ちゃんに続く。
学生ちゃんが『カグヤ』の前に座って、その後ろに私たちが陣取る。
呼吸を整えて、学生ちゃんは100ダリル玉を投入口に入れた。
キャラセレクト、学生ちゃんはもちろん『みーこ』。
「お、『みーこ』使いか、良いね」
格闘野郎が言う。
「何が良いんだよ」
「あ? 『みーこ』使いは間違いなく良いヤツだろ?」
常連のひとりからの声に格闘野郎が言葉を返す。
ファーストステージが始まる。
始まってすぐ、『みーこ』が相手の懐に入って攻撃を入れて後はコンボ。
ファーストステージ、すぐに終わった。
その後も『みーこ』ノーダメージでステージが進む。
いよいよファイナルステージ。
1戦目。
今度も学生ちゃんは『みーこ』を前に出す。
だけどタイミングがちょっと悪かった。
ラスボスの攻撃が一瞬早い。
学生ちゃんの『みーこ』はガードしてダメージは最小限で済んだ。
すぐに反撃。
『みーこ』がラスボスのすぐ前に入って、攻撃からコンボ。
ダメージを受けたけどWin。
2戦目。
心を落ち着かせた学生ちゃん、ラスボスに一気に突っ込んでやっぱり攻撃からコンボ。
もちろんWin。
『おーっ!』と歓声が上がる。
ゲームクリアした学生ちゃん、
「ふう」
と息をはいてからこっちを向いた。
「すいません、ノーダメージできませんでした」
しょんぼりした感じの声。
「いや、大したものだよ。
緊張した?」
格闘野郎が声をかける。
「はい、とっても緊張しました」
「だよね」
学生ちゃんに笑顔を見せて格闘野郎が言った。
「さて、次は……、
もちろん対戦、だよね?
はい、これ」
「おねがいします」
格闘野郎に返事をして100ダリル玉を受け取った。
学生ちゃんの向かいの筐体に格闘野郎が陣取る。
常連の3人が格闘野郎の後ろに移動。
あとの2人と私は学生ちゃんの後ろ。
投入口に100ダリル玉を入れて学生ちゃんは『みーこ』をセレクト。
格闘野郎は『カクー』、『カグヤ』いちばんのネタキャラ、を選んだ。
「お前、本っ当に『カクー』好きだな」
格闘野郎の後ろから声が上がる。
「分かってないねー、
『カグヤ』の真髄は『カクー』だろ?」
声の主に格闘野郎がさらっと返した。
1戦目スタート。
まずはお互いに様子を見る。
距離を測って……、学生ちゃんが先に動いた。
一気に距離をつめて『カクー』に攻撃を入れる。
コンボにつなげて学生ちゃんの勝ち。
2戦目。
バトルスタート。
速攻で『みーこ』が『カクー』に迫った。
今度もコンボに入って……、1撃、2撃、3撃、攻撃が続く。
4撃目が入る、そう思ったけど入らなかった。
『カクー』はガードをしてそこからカウンターを入れた。
反撃が始まって『みーこ』の負け。
3戦目。
開始早々、格闘野郎が動いた。
学生ちゃんが動くよりも早く攻撃が入って、学生ちゃんは何もできずに終わった。
「はう」
息をはいて、学生ちゃんの体から力が抜けた。
「どうかな?」
格闘野郎がこっちに来て学生ちゃんに笑顔で話しかけた。
「すごい……、です」
学生ちゃんは驚いてるような感動してるような、そんな感じ。
「たね明かし、しよっか?」
格闘野郎の申し出に常連の言葉。
「お前、今日はえらく優しいな」
「だよな」
その声に反論。
「俺はいつも優しいだろ」
言ってから改めて学生ちゃんに、
「対人戦、したことないよね?」
学生ちゃんは驚いてから言った。
「はい、
……でも、どうして分かるんですか?」
「うん、簡単なこと」
格闘野郎が説明を始めた。
学生ちゃんのコンボは最強クラスのひとつでCPU戦だったら間違いなく最強。
でも4つ目の強攻撃、CPUはどうしてかガードしないけどガードできる。
だからガードからカウンター入れられる。
対人戦の経験がないと分からないところ。
最後に、弱攻撃3回に替えたら本当の最強になる、と加えた。
学生ちゃんは唖然とした感じ。
「……なるほど、
すごい、……です」
「ありがと、
学生くんならもっと強くなれるよ」
格闘野郎は笑顔で言った。
そのあとはそれぞれが好みのゲーム。
格闘野郎はもちろん格ゲーを続ける。
ほかの連中はシューティングだったりパズルだったりアクションだったり。
学生ちゃんはいろんなゲームの攻略法を教えてもらってた。
私は『カウボーイ・ショット』したかったんだけど、店長に止められた。
夕方が始まる時間。
今日はそろそろ解散。
何となくそんな雰囲気になった。
「また今度」
「店長、ありがと」
「次は負けねーからな」
言葉を交わして常連が出ていく。
最後に学生ちゃんと私が残った。
「どうだった?」
学生ちゃんに尋ねる。
「楽しかったです!
とーっても楽しかったです!」
私を向いて言ってくれた学生ちゃんは最高の笑顔だった。
店長にお礼を言って私と学生ちゃんも店を出た。
ここでお別れ。
「ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げてくれた。
「うん、またね」
学生ちゃんに言った。私はきっと笑顔だ。
家に帰る学生ちゃん。
私は工房へと歩き始めた。
工房。
何の音もなくて静か。
中に入る。
作業スペースに機械屋ちゃん……、いない。
食堂に入る。
機械屋ちゃんがいた。
椅子に座って、くたーん、としてる。
「ただいま」
「ん? おかえり……」
答えてくれたけど声に力がない。
もしかして……。
「仕事、全部終わった?」
「ああ、終わった。
……明日の入金でいける」
そっか、良いね、うん。
「メシ、作るね」
「……頼む」
機械屋ちゃん、やっぱり力が入ってない。
仕事、がんばりすぎてたからね。
メシ作って、ふたりで食って。
「もう寝る」
そう言って機械屋ちゃんは自分の部屋に向かった。
私は今日のできごとを思い出して、嬉しいことがいっぱいだった。
ひとり笑顔で良い時間までテレビを見た。
続
学生ちゃんがゲームが得意だったら他にも得意なのがいても良いよね。
と言うことで、ゲーセンの常連の連中、です。
常連の連中も「良いヤツ」がそろってて、学生ちゃんなら大歓迎かと。
次回は『仲間ができた日 (6日目)』です。
休み明けに何が起こるのか?
では、次回もご一読のほどよろしくお願い致します。