(X:@3110_na_Joker)
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「炎の向こうに」
https://syosetu.org/novel/374798/16.html
の続編で、他作品のユニバース戦士も登場するオールスター作品となります。
燦々と輝く太陽。雲一つない青空。その下にはこれまた蒼い海と白い砂浜。じりじりと人々は蒸し焼きにされているにも関わらず、笑顔に満ちている。三十ヶ浜は千客万来のサマーシーズンであった。
「赤い戦士?し、知らないっすねぇ……」
自家製マーマレードアイスを男女二人に手渡した
「俺たち、この人から頼まれていて……」
示されたスマホには「戦隊考古学者 往歳巡」と書かれている。二人は大学生らしく、男性の方が
「どんな些細な情報でもいいんです。あの人、何もなかったらあるまで永遠に探すので」
やれやれという雰囲気を漂わせ、二人はため息を吐いた。相当大変そうだ。お人好しマインドが飛び出そうになった時、スッと深月が割り込み、アイスコーヒーを差し出した。
「お疲れでしたら、裏の日陰で休みますか。ほら、アイスも溶けてしまいますし」
とても僅かな微笑みで、深月は大学生二人への話題を切り替えた。おそらくあれが今できる一番自然な笑みなのだろう。今現在、未来喫茶店は近くのビーチで出張営業中。簡易設営の屋台で自家製のアイスとキンキンに冷やしたアイスコーヒーを深月と二人で売っている。そのついでに、黒い指輪の情報を探していたのだが――
「あれが俺たち以外の指輪の戦士?」
「ええ。
涼む二人に視線を移す。座りながらエアドラムをする青年は、髪型や水着からして、どこか音楽に繋がっている人物に思えた。一方、銀色の金属フレームの丸眼鏡をかけた女子の方は容姿端麗であり、黒いパーカーと、ヘソの見えるホットパンツ型の水着を着ている。よく見ると耳にはピアスがついており、しなやかな肉体と長い髪が特徴的だ。浅見高校の黒姫たる深月三龍と負けず劣らずの可愛さである。
「……何じろじろ見て。いやらしい」
「ち、ちげーよ!どんな奴なのかなーって気になって!」
弁明虚しく、深月は強くにらみ続ける。何がいけなかったのか。思えば今日は最初から不機嫌極まりない。見惚れないように水着については深く見ないようにしていたのだが、それでも一男子の視線は不快だったのだろうか。
「もういい。一人でもできるから呼び込みしてきて!!」
屋台から蹴飛ばされ、追い出される。冷ややかに見つめる氷川の視線が胸に刺さり、慌てて波打ち際へと走るのであった。
「冷たいアイスとコーヒーはいかがですかー」
旗を掲げ、歩き回る。一向に興味はもたれない。それもそうだ。他の店舗より手間を掛けている分、未来喫茶店の屋台は値段が若干高い。繁盛とはなかなかいかなかった。炎天下に疲れ果て、大きなため息をついてしゃがんだ。旗は持ったままだ。
「大丈夫ですか?」
背後からかけられた声。立ち上がり振り返ると、白いワイヤレスヘッドホンを首にかけ、荒池ユウダイが立っていた。どこかぎこちないその表情から、人に話しかけるのに慣れてないのは明白だった。
「なんともないすよ。歩いても成果がないんで、座ってただけです」
「大変なんだなあ。もしかして高校生?」
「ええはい。だからタメ口でいいですよ」
「そ、そうか……」
少し俯き、彼はここではないどこかを見ていた。その目は仄暗く、幸せに溢れるビーチには似つかわしくない表情だった。
「君、好きなことってある?」
「ええっと……時計弄くるのと、あいつと二人でするこの仕事っすかね」
急に言われたのもあり、直感的に語ってしまった。だが、その返答に満足そうに彼は頷き、浜辺を見て語った。その目の向こうでは、楽しそうな笑い声と打ち寄せる波がセッションを奏でていた。
「俺、君くらいの頃に願いを諦めてね。最近ようやく前を向けたんだ。」
「……俺もおんなじようなもんすよ。あいつと出会ってようやく前に進めたというか」
「それならいいんだ。君にそんな好きなものがあるなら、決してそれを諦めないで欲しい」
穏やかな微笑みと視線。戦士というのだから、誰も彼もが血気盛んだと思っていた。こんな指輪の戦士もいるのかと感心しかけたその時、浜辺から悲鳴が聞こえた。
「すみません!これ持っててください!」
「あっ!ちょっと!」
旗をユウダイに押し付け走り出す。やはり厄災の雑兵たちが人々を襲っていた。女性を襲う銅色の機械兵に飛び蹴りを食らわす。女性を庇いながら逃がした後に、銀色のウェディングベル男が現れた。その薬指には黒い指輪がはめられていた。
「オマエ、ユビワノセンシカ」
「……だったらどうする。」
カタコトな言葉に、だらけた立ち姿。どこかゾンビらしく思えて不気味な敵に対し、こちらも黒い指輪を取り出す。
「ナラバ、ワレラハ、ハンコウスル」
『エンゲージ』。そう呟きながら力無く指輪を回せば、闇に包まれたその姿は黒と赤を基調とした禍々しい戦士へと変わる。放たれた電撃に回避行動は間に合わず、八人は吹き飛ばされてしまう。
『メガレンジャー』
「グッ……テガソードを使わないだと……」
「ホロビヨ。ユビワノセンシ」
どこからともなく現れる雑兵の数々。絶体絶命かと思われたその時、雄叫びと共に2つの影が八人の横を通り過ぎた。
「オラオラオラァ!」
「はぁぁぁぁ!!」
奪い取った兵の武器を意気揚々と振り回し、頭部に激突させるのは先ほどの氷川華蓮。大人しそうなイメージは何処へやら。戦う姿はまさに
もう一人は見慣れた剣捌きで竹刀を振り回し、雑兵に立ち向かう。揺れる黒い腰巻きとレースのアームカバーがよく似合う彼女は、深月三龍。見惚れるくらいに美しかったが、いつもより大胆に動く胸元は刺激的すぎて直視は出来なかった。
「大丈夫かい!」
「ユウダイさん!なんで……」
「それはこちらのセリフだよ。急に走り出してさ。まあ目の前を見れば納得だけど」
女性陣2人が後退し、4人が一箇所に集まる。テンションを落とした華蓮は、咳払いをして顔つきと声を戻した。
「深月、大丈夫なのか?この2人に明かして……」
「大丈夫。華蓮先輩から事情を聞いた」
「私達は決して指輪を奪いに来たわけではありません。物好きの教授に頼まれて、仕方なく調査してるだけです」
言葉から棘が溢れかけている。目の奥は未だに殺意を帯びている。どうやら彼女の本質はこちらのようだ。言葉を発さない黒い戦士は、稲妻でこちらを牽制する。
「どうやら敵は待ってくれないみたいだね」
「スゥーッ…いくぞてめぇらぁ!!」
「「「「エンゲージ!!」」」」
右手に現れる銀の手甲、テガソード。襲いかかる敵を斬り伏せ、蹴り上げ、殴り飛ばす。4人は手の平を叩き、今その姿を赤い戦士へと変える。
「タイムファイヤァァァァ!!」
『アバレンジャー!』
『キョウリュウジャー!』
『『タイムレンジャー!』』
大きく雄叫びを上げ、早速暴れ出すのは、氷川華蓮、またの名をアバレッド。
「危ない!!」
そんな本能に任せた獣を、知恵あるスナイパーが狙わないはずもない。撃とうとする黒い帽子の雑兵3体をタイムレッドの大砲、ボルブラスターが吹き飛ばす。
「危ないですよ、先輩」
「あ゙ぁ?邪魔すんな」
忠告虚しく、アバレッドは突撃していく。その一方で黒い戦士に対し、戦う2人の戦士がいた。
「雷電衝撃波!」
『ザンダー!』
金色のオーラを身にまとう荒池ユウダイ、もといキョウリュウレッドが剣を地面に突き刺す。すると、稲妻が広範囲に広がり、黒い戦士が率いる兵はもれなく大ダメージを負う。
「DVチェンジ!バルカンモード!」
走り跳びあがるタイムファイヤーは、高威力の光弾を黒い戦士へと放つ。しかし、2体のこん棒持ちの青い怪人が肉壁となり、その攻撃は防がれる。怯んだ二体の敵に着地の代わりにと、拳と蹴りを同時に食らわせた。怯んだところにキョウリュウレッドが更なる攻撃を繰り出す。
「アンキドライビング!鉄砕拳・激烈突破!」
水と灰色のオーラを両の拳に纏わせ、ハンマーとチェーンアレイのエネルギー体が二体の怪人を圧殺。爆発四散。残る一体の黒の戦士に近づこうとしたそのとき、二人の第六感がとてつもない危険信号を知らせた。
「
だが間に合わない。放たれる禍々しい電光弾。2人の赤い戦士はその攻撃を諸に食らってしまい、変身が解除され、いくつかの指輪が転げてしまう。黒い戦士はユウダイの指輪と八人が落とした2つの黒い指輪を拾い上げた。奪わせはしないと、握り手に残ったタイムファイヤーの指輪を握る拳により力を入れた。
「ソレモ……ワタセ」
「――絶対に、嫌だね」
八人に残されたタイムファイヤーの指輪。返答の代わりに振り上げられた拳を受け止めたのは、八人ではなく、ユウダイの背中だった。
「がっ……痛、いな……」
「ユウダイさん!」
思わず走り出し、庇った理由がユウダイ自身にもわからなかった。ただ、夢を前に立ち上がることのできた若人が殺されそうな様を見ていたら、自然と身体が動いてしまっていたのだ。
「ベクターハーレー!!」
駆けつけたタイムレッドのビーム刃が黒い戦士を怯ませる。アバレッドはその隙を見逃さず襲いかかり、力任せに戦士を組み伏せた。
「コザカシイ」
「グ、グアアアアッッッッ」
赤熱した稲妻がアバレッドに走り、その身体を痙攣させる。変身が解除され、その場に倒れ伏せる華蓮を無慈悲に黒い戦士は葬ろうとその手を伸ばす。
「させ、ない!!」
ブンと投げつけられたのは両刃の長剣、ツインベクター。死角からの攻撃が腹部へと突き刺さる。剣を中心に展開された緑色の時計が、黒の戦士を拘束する。砂を踏みしめタイムレッドは跳び上がった。
「プレッシャー、ストライク!」
繰り出される赤いエネルギーを纏ったドロップキック。戦士は海へと吹っ飛ばされた。深月が倒れる氷川に歩み寄ると、歯を噛みしめ、立ち上がろうとする女傑が目の前にはいた。
「今のうちに、逃げましょう!」
「ソウハ、サセナイ」
ぞろぞろと現れる厄災の兵たち。海岸から離れようと走る四人の道をふさぎ、背後からはぐったりとしたゾンビのような、あの戦士が段々と近づいていた。ダメージは確かに効いている。しかし、腕が折れようと、腹部が削れようと彼自身がそれを気にもとめていなければ、攻撃は無駄というものだった。
「私より、
「こんなとき、教授がいてくれれば……!」
『誰がいれば、やて?』
遠くから聞こえた謎の声。高校生の背中に乗せられたボロボロな二人はその声の主に心底安堵すると共に、声の聞こえる場所に驚愕する。山の向こうからやってきたのは、五頭の獣の顔を有する巨大戦車、その名を――
『ダイノタンカー!!一斉射撃や!!』
砲撃が、電撃が、雑兵たちをなぎ倒していく。最も、戦場にいる四人の学生らはその攻撃をよけながら、彼のところへ向かうのに必死だ。
「みんな!こっちに乗るんや!!」
「無茶苦茶っすよ教授!」
「こんくらいの無茶苦茶で、スーパー戦隊が務まるかいな!!」
四人の学生を回収した教授は、ダイノタンカーに乗り、浜辺から走り去っていく。黒い戦士は一瞥すると、その身体を黒い靄と変えて、どこかへ消えるのだった。
「あいつはネジレンジャーのネジレッド。世にも珍しい、悪の戦隊や」
往歳がカウンター席をくるりと回し、ソファ席の方へ向き直す。そしてふんぞり返りながら、珈琲片手に語り出した。ユニバース戦士達は敗走の末、営業終了後の未来喫茶店へと逃げ込んだ。深月以外の3人はネジレッドから受けた傷に包帯を巻き、ソファにて身体を休めていた。一番傷の浅い深月が手当てを担当し、3番目の八人の身体をかれこれ十数分触っている。鼻の下を伸ばす真剣な表情はとても、学園の黒姫に相応しくない。幸い、時折こぼれる「おお」や「へぇ…」等の声は教授の話を熱心に聴く彼の耳には一切入っていない。
「どうやら黒の指輪は戦隊で赤けりゃどんな奴でもええらしいなあ」
「お言葉ですが教授。赤い戦士たちと戦隊は50だけではなかったのですか」
華蓮の質問に対し、往歳はチッチッチッと人差し指を振る。声付きのそのキザッたらしい仕草に、彼女の口は舌打ちをする寸前まで歪んでいた。
「赤い戦士も戦隊も50だけやない。リーダー格やった金の指輪に描かれた戦士の他にもライバル、後継者、仲間になった奴らがいたんや」
教授は懐から新たな指輪を取り出す。それは瀧盤の持つ指輪と同じ真っ黒な色をしているが、描かれているのは頭部にバルカンを備えた恐竜だけだった。
「それって、俺の指輪!?」
「おう、勘がええなユウダイ。こいつはキョウリュウジャーブレイブ、
禍々しいオーラが吹き出し、教授の指を侵し始める。「あっつ!」と離し、テーブルへと落とす。黒いオーラはそのなりを潜め、ただの指輪へと戻る。ふと八人が立ち上がり、その指輪を手に取るが、何も起きなかった。
「やはり、厄災に選ばれたもんは違うな」
「やめてください。俺があいつらの仲間みたいじゃないすか」
「ごめんな。うちの教授が……」
八人はふと残った指輪を取り出す。決死の想いでユウダイが守ったタイムファイヤーの指輪、ロッカーに忘れていたキングキョウリュウレッドの指輪、そして新たに手に入ったキョウリュウジャーブレイブの指輪。
「奇しくもキョウリュウジャーに関する指輪が今この地に集まっとるんやな」
「それで、どうするんですか。指輪奪われたままにも、いきませんし……何よりあのネジレッドっていう奴、何を企んでるんですか。指輪も……わぷ」
「あまり暗くならないでください、三龍ちゃん。奪われたのは貴女の責任ではないです。」
キュッと指輪を握りしめて、しなびた黒百合のように弱々しく項垂れる深月。華蓮はその頬を横へと引き伸ばす。普段はスリムなその頬がもちもちと伸び、眉をハの字にしている。「やめひぇください」と困る姿は、とても微笑ましい。
「わざわざ人を襲っておいて、指輪の戦士を見た瞬間、こっちに注意が向きすぎていました。教授、彼の目的は?」
そう語る様は冷静そのものだが、まるでスクイーズかのように深月をいじくり、相当のストレスがあるのだろうと見える。困り果ててる彼女を助けたくもあったが、歳上に頼る良い機会だと思い、放置した。
「何を企んどるんかは、正直わからん。厄災のボスを復活させるんやったら、夜な夜な人を襲えばいいしな」
「八人くん、なんか感じなかった?」
ユウダイに聞かれ、戦いの記憶を思い返す。そして、一つの違和感に辿り着く。
「
「……それだけかいな」
「いや、なんか聞いたことあるような。でも、どこでも聞いたことのないようなって声で……」
これ以降大した情報は出ず、敵が動き始めるまで一旦解散するということになった。
「早速明日から調査開始や、ユウダイ!華蓮!」
「怪我した学生を休ませようとは思わないんですか」
「何言うとんのや。未だフィールドワーク中や!怪我でもレポートくらいは書けるやろ!」
高らかに笑う教授とソファでぐったりとする大学生二人を放置し、八人は自宅へと帰ろうとする。店から出た。気づけばいつのまにか店の外はすっかり真っ暗である。
「げ。ばあちゃんがまた深読みしてくるよ……」
ここ最近はバイトも忙しいお陰か、深月と行動することも多い。そんな中で夜遅くに帰ると毎回生暖かい目で見られ、翌日の夕飯が赤飯になっているのだ。
「俺と深月はそういう関係じゃないっつーの!」
じゃあどんな仲だ?扉の前でしゃがみこんで考えても、何も出てこない。しばらくすると、扉に押し出されて前転してしまった。逆転する視界には目を見開いた件の彼女がいた。
「何してるの?」
「深月、俺たちってどういう関係なのかな?」
彼女は一息置いた後、うーんと言葉を濁らせた。そして、少し頬を赤く染めながら一言言った。
「……なりたい関係ならあるよ」
「ん、なんだ?」
八人はなんとなしに聞いてみた。三龍が何かが望むのも珍しかったからだ。だが、きょとんとした彼の顔を見て、顔は険しくなり、頬の色はスッと冷める。夏の夜空にドーベルマンのような咆哮が響いた。
「お・し・え・な・い!!!」
「助けて瀧盤くん」
翌日、深月から来たメッセージを見て、眠り眼は一瞬にして覚醒した。ベッドから跳ね起き、すぐさま白の半袖に首を通し、お気に入りのバーガンディのシャツを羽織る。
「やあちゃん、おはよう」
「おはよ!ばあちゃん!いただきます!」
黒のズボンを階段を降りながら履き、祖母が用意していた朝食を爆速で食べる。あまりの勢いに圧倒される中、朝食を終えた八人は玄関前に直行した。
「ご馳走様行ってきます!」
「や、やあちゃん!?」
「行くぞエリック!」
遺品の一つ、相棒のカブにまたがり、エンジンをかける。何代目かは忘れたが、祖父が愛用していたものを受け継いだものだ。高校一年の頃、何も気力がなかった時期に免許を取った自分を、これほど褒めてやりたいと思ったことは無い。
「待ってろよ……深月!」
今日は休業日のはず。急な襲撃に遭ったのだろうか。それとも両親、もしくはユウダイや華蓮に異変があったのか。田舎道を猛スピードで走り抜け、ついに未来喫茶店へと着いた。息つく暇もなく、扉を激しく開ける。
「大丈夫かっ!!」
扉を開けると、きょとんとした顔をした深月が目に入った。次に、血相を変えて突入してきた謎の男に客の冷たい視線が刺さった。しまったと思ったのも束の間、どんと机を叩き、気の強そうな女性が声を荒げる。
「あーたねぇ!店に怒鳴り込んで入るたぁどういうことよ!お陰で優雅なティータイムが台無しよ!」
「あ、天宮さん。落ち着いて……」
向かい合わせの二人用テーブルに座るカップルのうち、ふわっとしたショートヘアの少女がツンツンゼンカイで甲高い声を響かせる。相方の気弱そうな青年が止めようと試みるが、耳をふさいでも聞こえる声は止まない。そこに割り込んだのは打って変わって元気に溢れた青年だった。
「そうですよ!俺達は同じ戦隊!同じユニバース戦士なんですから!」
「そや。元気なのはいいことやけど、大人のレディには落ち着きが必要どすえ」
続いてスタイリッシュな服装に身を包む舞子風の女性がカウンターから声をかける。バチバチと二人の瞳の間が火花を散らす。何がなんやらとカウンターの深月に近づこうと歩く中、銀色のトレイが二人の間に刺さった。
「――当店では――お静かに」
かつてないほど怒っている。赤いオーラが変身してないのに吹き出している。「助けて」の真意がこの厄介な来訪者のことなのか、聞くこともはばかられる中、八人は恐る恐る4人に聞いた。
「あのぉ……あんた、じゃなくて。あなた達って――」
答える代わりに全員が右手の甲を見せた。金色の指輪を全員が付けている。背後の扉が鈴を鳴らした。振り向くとそこには、隈を付けた往歳教授が立っていた。
「どうや……この短時間で見つけた追加戦力……吠にも連絡取っといて正解やったな……」
そう言うと前のめりに彼は倒れた。四肢を吊り上げ、ソファにおろす。気持ちよさそうに寝る教授をよそに各々が自己紹介をし始める。
「わたしは
「
「あーたねえ、もっとはっきり言えないの!?」
青蘭と九月の間で痴話喧嘩――というには青蘭が圧倒的優勢だが――が始まる。にこやかな笑顔を絶やさない大和美人は二人を気にすることなく、自己紹介を続けた。
「
「俺は
やたら熱血な男に圧倒されていると、ぎゅっと手を掴まれる。キラキラと輝くその目は少年のようで、擦れた時期を経た八人は正面から見ることが出来なかった。
「あなたが、深月さんのパートナー!もう一人の赤い戦士にて、厄災に選ばれし者!タイムファイヤー、瀧磐八人さんですねぇぇぇ!!会えて光栄です!!」
「あ、アリガトゴザマス」
あとはひたすらに褒められる。深月も同じようにあっていたのか、むずがゆそうに彼のことを見る。しかし時々、うんうんと共感して頷くのを、美月は静かに微笑みながら見守っていた。
「ここにいるんは、ウチ以外みんな厄災と関わった人物なんよ」
話を戻すように、エンドレスな星育の一方的な語りを遮る。はっとなったのは彼だけではないようで、青蘭が会話に割り込んでくる。
「戦ったことあるわよ!こいつがね!」
「まあ、負けたけど……ごめんなさい」
「あーたねぇ!いい加減謝る癖直しなさい!」
深月が華蓮とユウダイから聞いた話によると、最高戦力のゴジュウジャーは何故か手が離せないらしい。そこで教授はダイノタンカーで日本中を回り、厄災に対抗しうる指輪の戦士を集めてきたようだ。
「私も、知り合いの指輪の契約者に連絡とってる。来てくれるかは……わからないけど」
「お前、そんな人いたのかよ!なんで今まで黙ってたんだ?」
「――どうせきみ、信じないから」
一体全体その人物は誰だと考えを巡らす。そんなこんなで話は弾む。話の中心は星育の語る元の戦隊の話に移る。
「俺の指輪の人って、そんな運が良かったんだ……」
「このタツヤって人、瀧磐くんに似てる」
「そうか?俺こんなイケメンじゃないよ」
不満げに深月は頬を膨らませる。可愛いと思ってしまったのは自然な感情だと自分を納得させるが、ほんのりと色づいた頬は治らない。店内に流れる軽快なジャズが気持ちを焦らせる中、一つの電話が鳴り響いた。
「何このバンバラバンバンバンって音……」
「おおっ!これは!ゴレンジャーの――」
音源は教授のポケットにあり、星育が何かを語る前に、八人は鳴り響く電話を取った。液晶越しの声は息が切れ切れで相当焦っているようにも聞こえる。
「もしもし……!教授!」
「ユウダイさん、何かあったんすか」
「八人くんか!教授に伝えてくれ、突如ネジレッドが現れて、華蓮ちゃんに指輪をはめたと思ったら――」
扉をガンガンと叩く音が聞こえる。電話口からも八人の背後からもだ。教授は身体を起こし、八人にスマホをスピーカーにするよう指示した。
「黒い靄が華蓮ちゃんを包んで、理性のないアバレッドに――」
バリーンと音を立てたのは電話の向こうもこちらも一緒だった。電話が切れたのも束の間、扉が蹴破られ、数か月前の悪夢の再現へと至る。ひきつる深月の表情を見過ごさなかった八人はスマホを投げ捨て、右の拳を固めながら走る。
「オウラァ!」
一番槍を務めた青い足軽の顎を殴り飛ばし、敵の侵入を防ぐ。続けて後ろに並ぶ雑兵を店外へと追い出す美月と星育。戦いのフィールドが店前へと移ると、上空から赤い戦士が降り立った。
「あ、あれはぁ!デカレッドバトライザー!でも、頭がSWATモードのまんまだ」
「ってことは、黒い指輪の!」
深月がそう言い放つと、ネオデカレッドバトライザーの各部のランプがサイレンと共に点滅する。黒いエネルギーを纏った横一文字一閃がユニバース戦士たちを襲う。六人は自らの指輪をテガソードに入れ、高々に声を上げた。
「「「「「「エンゲージ!!」」」」」」
「「タイムレンジャー」」
「ファイブマン」
「ライブマン」
「ゴセイジャー」
「キュウレンジャー」
一斉に赤いスーツが彼らを包み、攻撃から身を守る。剣撃は地面をえぐり取り、痛々しい跡を残す。強化の凄まじさは目に見えて明らかだった。それに、こちらを囲う雑兵の量も多い。
「どうやらネジレッドは指輪の戦士を強化召喚できるみたいですね!いやぁ、バトライザーが生で見られるなんて……」
「ということは、ユウダイさん達が、危ない」
深月が心配そうに語る中、ゴセイレッドは早速その白い翼を出し、後輩二人に命令した。
「事情はよく分かんないけど、あーた達、わたしに捕まりなさい!
「いいんすか。この人数の敵を任せるわけには…」
「ウチらも一応指輪の戦士どす。舐めてもらったら困るわぁ」
「パパっとやっつけちゃうんで、二人は教授の教え子さんを!」
ファイブレッドとレッドファルコンはそれぞれの得物を取り出すと、果敢に雑兵の元へと突っ込んでいった。不審な動きを警戒し、轟音響くジェット噴射で強襲するネオデカレッド。
『タテキュータマ!セイ・ザ・アタック!』
シシレッドのセイザブラスターが盾状のエネルギーを放ち、高速の突進を防ぐ。怯んだ敵を見据えた後、シシレッドは一度ゴセイレッドの方を向いた。
「天宮さんを、頼みます」
左腕に構えたキュウブラスターを連射し、一騎当千の戦いを繰り広げる二人をサポートする。そんな彼の姿を見て、ゴセイレッドは静かに微笑んだような気がした。扉を開け、寝起きの教授が出てくる。その表情はかつてないほどに重々しい。
「あいつらがいる場所は、一駅先のビル街や!……頼む」
「準備はいーい?二人とも?!」
白い羽が彼女自身と、手を繋ぐ二人の時の戦士を包む。羽が消え、その向こうから見えてきた光景は、悪しき三人の赤い戦士が街を壊し尽くす様であった。
「逃げて、ください…私の理性が、あるうちに……!」
目の前で華蓮は黒い靄に包まれ、雄叫びをあげる理性のない怪物となった。障害を越えるためではなく、ただただ野生に身を任せ暴れる彼女に、もう面影は残っていなかった。
「街の人々はみんな逃げたか。俺もそろそろ行こう」
ユウダイは瓦礫で隠された安全スペースの中でうずくまる身体をゆっくりと伸ばす。薄暗い視界は、暑くジメジメとした天候も相まって、不安の影を心に落としていた。
「——さぁん。——か——さん」
声が聞こえた。今にも消えそうな少女の声が助けを求めている。ここは危険地帯だ。命を失いたくなければ、今すぐにも安全な地下か隣町へと逃げなければならない。
(でも、俺は)
目の前を迷いなく走る
「大丈夫!?今助けるからね」
瓦礫から飛び出し、幻覚を追いかけた。音が出ようと構わず、必死に瓦礫をどかし、声の主を探した。今朝調査に出かける前、瀧磐八人について聞いた時に深月が放った言葉を思い出す。
『彼、誰かが泣いたら、迷いなく走り出しちゃうから。ほっとけなくて。思わず追いかけてしまうんです』
タイムレッド、深月三龍のことは事前に教授から聞いていた。そのため、遠くから見ても分かる彼女の変わりようには2人で困惑したものだ。しかし、傍にある暖かな灯に気がつけば何が起きたかは察せられた。
「……っ!見つけた!」
身動きの取れなかった中学生程度の少女は瓦礫の間に閉じ込められていたようで、重大な怪我はなかった。慎重に崩壊した建物の壁をどかし、泣きじゃくる彼女を救出する。
「ここは危ない。この近くに地下への通路がある。そこにお母さんも逃げてるはずだよ」
「……なんで、助けてくれたんですか。逃げても良かったのに」
礼よりも先に出た疑問。数秒の思考の末、あの豪快で暴れん坊な教授の背中が浮かんだ。口を通り過ぎていった。
「俺、戦隊だから。牙の勇者!キョウリュウレッド!……なんだって」
大げさにポーズを取り、名乗りをあげる。ポカーンと口を開け、呆気に取られる少女。少し気恥ずかしくなって後頭部を掻いていると、突如銃声とフルートの音色が耳に入った。
「早く逃げて!」
怯える少女を奮い立たせて背中を押す。敵へと向き合うと、そこにはヌルヌルとしたゾウリムシのような雑兵と、ネジレッドが生んだ悪しき自らの影、デスキョウリュウレッドが近寄っていた。瓦礫を踏み砕きながら来るその様に、ユウダイも一抹の恐怖を覚えずには居られなかった。
「ハンコウセヨ、ドウシタチ」
「それしか言えないのか。俺の偽物だったらドラムロールくらい見せてほしいけどな」
反応もせず、フルートを口に構える悪しき赫。音色が鳴り響くその瞬間、脳を切り刻むような不快な痛みが彼を襲う。一介の大学生である彼は、その痛みに耐えきれない。コロセコワセという叫びが内側から身体を引き裂こうとしたその時、意味不明な大声と共に背中が叩かれた。
「い゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛だぁあ゛ぁぁっ!!!!」
先日ネジレッドから喰らった打撲痕が火を噴き、よい気付け薬となる。鳴り響く歌が止まり、視覚と脳のパスが回復する。そこでようやく痛みに悶える自分の肩を、タイムファイヤーが掴んでいることに気づいた。
「すみません、これしか思いつかなくて……」
「い、いいんだよ。……結構荒っぽいんだね、八人くん」
「爺さんの教えっす。"暴れる酒狂いには一番痛そうなとこを狙え"って」
「俺は酔っぱらい扱いかよ。」と内心思ったのも束の間、刺々しいアバレッドが爪を立て跳び掛かる。野獣のようなその攻撃は非常に単純で、隙がいくらでもある。狙いすましたタイムファイヤーの突き蹴りが腹部へと直撃し、その爪は紅いスーツにかすりもせず、後方へ飛ばされた。
「「きゃあああっ!」」
叫び声と共に、深月と青蘭の変身が解除され、八人の足元に転がる。デスリュウレッドは巨大なフルートをブーメランへと変形させており、余裕そうに首を鳴らしていた。
「音のせいで、上手く力が、出せない……」
「耳障りにもほどがあんでしょ!ふざけんなってのぉ!」
悔しそうに地面を叩く青蘭。深月も悔しさと痛みが顔からにじみ出ている。タイムファイヤーは抱える彼を二人に無言で託した。
「ユウダイさんを頼む!」
「瀧磐くん!」
「大丈夫。あの時よりかは、未来も見えるだろ!」
単身悪しき赫の軍団へ戦いを挑む。腰に備えたDVディフェンダーの刃を展開し、立ち塞がる雑魚を薙ぎ払う。その様はまさに鬼神であり、放つ雄叫びは暴走状態の華蓮にも負けないほどだった。
『Grrrrrr……』
とても声帯から鳴らしているとは思えない唸り声。その主は、よろよろと立ち上がるアバレッドのものであり、未だ理性が戻っていないことを示していた。深月は傷ついた足に力を込めながら、必死に声をかける。
「華蓮さん!目を覚ましてください!あなたは、そんな乱暴な人じゃ——」
「ちょ、ちょっとあーた!私庇ったくせに、何無防備に前に出てんのよ!大人しくしなさいよ!」
「でも、でも……!!」
困惑しつつも、前に歩み出そうとする彼女を青蘭は無我夢中で止める。言葉は届かず、にじり寄るアバレッド。その時前に出たのは、未だ痛みの残るユウダイであった。
「華蓮さん、君のアバレってそれでいいのか」
アバレッドは何も答えない。ただ目の前の獲物の喉元に狙いを定めている。
「逆境や理不尽に抗って!立ち塞がる壁をぶち壊す!それが、そんなカッコいいのが!君の"アバレ"なんじゃないのか!!」
ついに走り出すアバレッド。ユウダイは目を背けない。その唇は震えている。が、逃げられない理由があった。
「このままじゃ教授に舐められたままだ!!目を覚ませよ!!花蓮さぁん!」
ついに喉元に牙がかかる。血飛沫を覚悟し、深月と青蘭が目を閉じたその時。
『チガ……ウ……』
動きが止まった。黒い煙が身体から噴き出し、頭を抑えて後退する。その理性のない無機質な声色は段々と凛々しい女性の声へと変わり始めていた。
『ワタシの……コノ荒ブル感情ハ……』
「私だけの!ものだ!!!」
光と共に変身が解除され、息を切らした丸メガネの美女が今にも倒れそうに、そこに立っていた。普段は見えない鋭い犬歯が剝き出しになっている。パンクな恰好も相まって、彼女の本能を表現していた。
「大丈夫ですか……!」
「ええ。……ありがとうございます、三龍ちゃん。身体は動きませんでしたが、しっかり聞こえてましたよ」
華蓮の小さな微笑みに、思わず笑う深月。その笑顔は普段のギギギと音を立てる笑みではなく、心の底から見せた安堵の表情だった。だが、未だ脅威は残る。無慈悲な赫き狂戦士は
「させるかぁ!DVリフレイザァァァァ!!」
妨害するタイムファイヤー。青く発光した刃と黒い怨念を纏ったブーメランが激突する。ぶつかり合う二つの厄災。全ての力を込め、背後の仲間を守ろうとしたその瞬間、デスリュウレッドがガブリボルバーをもう一つの手で突き出した。
「しまった!」
『バモラムーチョ!ガッブーン!バッスーン!』
その仮面の奥には何もいないはずなのに、嘲笑うように弾丸は撃ち出された。二体の恐竜の頭部が螺旋を描きながら、生身の戦士たちを襲う。
「やら……せるかあ!!」
『アンドロメダ!キュータマ!セイ・ザ・アタック!』
放たれるエネルギー弾を無数の鎖の壁が受け止める。しかし、勢いは潰えず、飛び込んできた赤い戦士が肉壁となり、その攻撃を受け止める。
「うおおおおおおおお!!!」
『ヘラクレス!キュータマ!セイ・ザ・アタック!』
鎖の全てが焼き切れ、ようやくデスリュウレッドが敵の姿を捕らえた時、何倍にも膨らんだ上腕二頭筋が頭部に直撃する。吹き飛ばされた悪しき赫は壁に大きなクレーターを伴って貼り付いた。
「九月!」
赤いスーツは粒子となり、四葉九月は膝をつく。同じく傷を負っているはずの青蘭は一目散に走り寄り、血を流す彼を抱きしめる。
「えへへ……心配だから、走って来ちゃった」
「バァカ!!助けてなんて一言も言ってないわよ!」
今にも殴り掛かりそうなのを深月と華蓮が止める。八人もその変身を解き、傷ついた皆の元へ来た。その時、右ポケットに燃えるような熱い感覚を覚える。取り出すと、それはキョウリュウジャーブレイブの黒い指輪であり、
「ユウダイさん、これを」
「……俺が、選ばれたのかい?」
「多分。ですけど、耐えられるのは多くとも5分。その間に決めないと——」
「十分。一曲分だ。全力を込めるさ」
八人が掌に置いたその指輪をユウダイは掴んだ。その天面に描かれたガンティラが一瞬笑ったように見え、思わず笑みがこぼれる。まだ、戦える。負けられない。六人は力強く立ち上がり、敵を見据えた。
「皆さん、行きますよ!」
「うん!」「ああ!」「応!」「わーってるわよ!」「は、はい!」
「「「「「「エンゲージ!!」」」」」」
各々が各々の所作で指輪を手甲へとはめ、リズムに合わせ、音を鳴らす。めりこんだ壁から這い出したデスリュウレッドは目撃する。その誰一人として、目から希望を失わず、傷だらけの身体で戦おうとしているところを。
「タイムファイヤァァァァァァァァァァァ!!!!」
『『タイムレンジャー』』
『キョウリュウジャー』
『アバレンジャー』
『キュウレンジャー』
『ゴセイジャー』
並び立つ赤き六人の戦士。戦いを後方から監視していたネジレッドはこぼす様に呟いた。その勇気溢れる若者たちに指輪が反応しているようだった。
「アレガ、戦隊カ」
巨大化した雑兵と戦うため、大獣神が海にて多くを相手取る。だが、状況は劣勢であり、今赤い鬼武者に組み倒された。
「くっ……この量を一人は……!」
「来い!ブイレックス!ガンティラ!」
その時、二体の恐竜の咆哮が響き渡る。ガトリングとビームが乱射され、ダイナミックにエントリーした恐竜が数多の敵の首をねじ切る。
「ガンティラとブイレックス!?そうか!こいつらは自律型!アイツ、俺のために救援を……!」
往歳が感動する、その足元で剣のつばぜり合いが起きていた。
「ファルコンブレイク!」
「Vソードアタック!」
二対の剣撃がネオデカレッドを襲う。しかし、その攻撃はいとも簡単に受け止められ、巨剣のカウンターが二人を襲う。
「ぐっ……やっぱり九月さんがこっちにいた方が——」
「んなわけないやろ!惚れた女一人助けに行けんくて、何が男や!——うちらで、なんとかするしかあらへんよ」
九月も離れるまでに多くの兵を蹴散らした。しかし、雑兵は未だ無数に存在し、二人の体力も限界に近づいていた。
「このままじゃ……」
ネオデカレッドは剣先についた銃口を二人へと向ける。雑兵がわらわらとにじり寄ってくる様子から、味方ごとこちらを葬るつもりなのだと分かる。防御の手段を諦めかけたその時、高らかな笑い声が空から響いた。
「はーっはっはっはっ!」
「そ、その声……まさか!?」
「そのまさかだ!多くの国民の命、指輪の同志の願い。そして!一人の少女を助けるために今!私は立ち上がろうじゃないか!」
ヘリコプターから顔を出すその男の笑い声は、地上にまで響き渡り、まるで曇天の隙間から指す日光のようだった。合図を受けたのか、男は飛び降りながら高らかに金色の指輪を示す。全ての注意が上へと向いた。
「エンゲージ!」
『センタイリング!ドンブラザーズ!』
短略しながら変身した男の名は、熱海常夏。最高支持率5000%を誇る熱き総理大臣である。
「も、もしかして深月さんが呼んだ増援って……」
「私のことだ!指輪を預けられた際、連絡先を交換していて良かった!」
「あら。総理大臣ともあろう御方が女子高生と交流なんてええの?」
「大人として、泣き腫らした目で指輪を差し出す若者を、見逃すわけにはいかなかったのだよ!」
ここまでの会話で常夏は片手間に襲い来る雑兵をなぎ倒し、数をドンドンと減らしていく。美月もファルコンセイバーとソードの二刀流で戦い始めることで、戦況を変えようと動く。
「ドッカン大噴火!」
「うおおおお!これが本家(?)のドッカン大噴火かぁ!」
一方、生のドンモモタロウに興奮するファイブレッドへ、再びネオデカレッドが銃口を向ける。その視界を輝く妖精のようなもんが過ぎていく。鬱陶しく振り払う視界の先に、現れたのは頭部のライトを光らせるレッドターボであった。
「GTクラッシュ!」
不意に食らった二刀流での攻撃に、ネオデカレッドも怯まざるを得ない。
「やったぁ!やりましたよ紅葉さん!」
彼女が声をかけた方では雄叫びと共に幾百の敵が切り伏せられていく。倒れた雑兵たちの爆発の中から出てきたのはもう一人のデカレッド。その右手に握られたディーソードベガは鈍く光り、次の獲物を写していた。
「ったく。退院してばっかのおっさんにやらせる仕事がこれか、雲雀ちゃん?」
「そう言いながら倒しまくるの、やっぱ流石です!」
彼女が付き出したサムズアップに、デカレッドは優しくグータッチする。この地でも赤い戦士が並び立つ。狙うはただ一人、この場の敵の首魁であるネオデカレッドのみである。
「えーと、あなた達は……」
「俺は
「その弟子の
「紅葉くんは吠くんの家族!往歳教授から吠くんを繋がり、ともに助けに来てくれたのだよ!」
うんうんと頷く数音文に対し、なんのこっちゃと首をかしげる美月。ネオデカレッドは立ち上がり、その鎧を白い大砲、ディーバズーカに戻した。そして敵を一掃しようと、ディーリボルバーを共に携え、エネルギーを溜め始める。
「相手ももう後がないようやなぁ」
「それならば!ここで我らが全力を出し!」
「うおおおおお!合体必殺技で迎え撃つってわけですね!」
「熱いですね!!よーし!いっきますよ~!!」
その時、紅葉の影からイルカのような銃が姿を現す。紅葉がそれを掴むと、全員にそのパワーを分け与えた。
「吠から借りてきた!念には念を入れるぞ!」
自らを
「ディーソードベガァ!!」
「力が!!みるみる湧いてくるぞ!!まさにゴールデンウルトラハッピー……」
「サンシャーイン!!ですね!俺のファイブテクターも火を噴きますよ!!」
ファイブテクターを装着したファイブレッドは自らを光球へと変え、それにゴールドンモモタロウが銃口を向け、打ち出す構えを取る。
「うちらはこれや!バイモーションバスター!」
「私も行きます!Vターボエンジン・オン!」
残る二人にはバズーカが与えられた。本来一人では支えきれない大砲も、オルカの強化により扱えるようになっている。五人一斉に打ち出す必殺技。名前は特に決めていなかったが、熱海常夏がこう決めた。
「超必殺!サンシャインユニバースブラスト!」
バズーカ達から繰り出される双方のエネルギー弾。その威力は互角。ゆえに、残る三人の必殺技がクリーンヒットする。デカレッドのベガスラッシュ。装甲を両断し、防御の要を砕く。そして、ゴールドンモモタロウのオミコシフェスティバルが光球に炸裂し、かつてないほどのエネルギー量を伴う。必殺ファイブテクターがネオデカレッドの身体に風穴を開ける。肉体へと戻るファイブレッド。耐え切れないダメージ量に、赤き厄災は爆発四散。それと同時に彼の率いる雑兵の姿も消えた。
「お、終わりかいな?ふ、ふぃ~疲れたわ~」
勝ち誇る大獣神の中で、往歳が安堵のため息を吐く。もう変身を解除し、手を握り合ってやったやったと喜び合うのは数音文と雲雀。周囲を確認し、残りがその赤いスーツを解いた。
「やりましたよ!俺たち勝ったんです!」
「イエーイ!紅葉さん、すごいでしょ!」
「まあな。だが、まだリーダーは倒してない。そうだろ、教授」
大獣神が膝をつき、中から教授が降りてくる。その表情はなんとも言い難く、口をとがらせ、眉間にしわを寄せていた。
「あらあ。どうしたの、往歳はん」
「いや、なんもないわ。兎にも角にも黒の指輪、一個回収。ネジレッドの方へ向かうで」
ハンカチに包み、大爆発の後に遺された指輪を拾う。未だ往歳は一抹の不安を抱えていた。強大な力を持つ黒い指輪。それを制御する謎の高校生。
「何考えとんねん、俺は教育者。今考えるべきは学生の命や」
悪い発想を頭からかき消す。救援へと向かう一行。遠いもう一つの戦場では——
「道を切り開く……!」
「くらえっつーの!コンプレッサンダーカード!!天装!」
『スパーク スカイックパワー』
『イテ!キュータマ!セイ・ザ・アタック!』
無数の矢が、雲から放たれた雷を吸収する。豪雨のごとき攻撃が雑兵をなぎ倒し、デスリュウレッドまでの道を作った。
「チャンスだ!」
「ヒャハハハハァ!!」
トゲを生やし、前傾姿勢で走る
「ハンコウセヨ……ハンコウセヨォ!」
「今この場に響き合う勇気のメロディーが俺に力をくれる!」
「御礼参りだ。いつもより暴れていくゼェ!」
ブレイブキョウリュウレッドの繰り出す拳がその力を増していく。まるで彼が刻むビートに、力が呼応するかのように。アバレッドも同様だ。その棘は拳を、脚を振るうたびに大きさを増していき、ついに彼女を飲み込もうとしていた。
「「うおおおおおおおっっっっ!!!!」」
六人が鳴らす勇気のメロディーが、その両腕に金色の装甲と二対の恐竜の頭部を装着させる。その光を浴びた棘は、胸にて鎧をなし、暴走を超えた先の姿を作り出す。これこそ、ブレイブキョウリュウレッドの指輪能力「
「アンナ形態ヲ……見過ゴセナイナ……」
「それは俺たちの!」
「セリフ、だ!」
後方のビルにて戦況を監視していたネジレッドを、赤き時の2戦士が強襲する。アサルトベクターとDVディフェンダーが火を噴く。突然の強襲に敵は握っていたウルザードファイヤーの指輪を落とす。
「返してもらったぞ。これでユウダイさんの偽物も弱るはずだ!」
「ムダダ。アレハ、ワタシガ直接厄災ノ力ヲ注イダ。支配ニハ抗エナイ」
「さっきから、支配支配うるさい」
ネジレッドは禍々しき剣、ネジソードを取り出し、タイムファイヤーとぶつかり合う。タイムレッドはその背後を守り、雑兵たちをその双剣で舞うように斬っていく。
一方、強化された二体の赤き竜の戦士はその拳をひたすらデスリュウレッドに喰らわせた。最初は余裕そうに防御していたデスリュウレッドもその猛攻に防戦一方である。
「ってとこでダメ押しよ!ドラゴンバレット!」
「力を合わせて……レグルスクラァッシュ!」
『ギャラクシー!』
獅子と龍のエネルギー体が螺旋を描き、デスリュウレッドに炸裂する。強大なダメージ。しかし、最後に力を振り絞り、ブーメランを握る。
「んなもん必要ねえよなぁ」
狂化アバレマックスが刃先を掴んでおり、怪力の一握りで粉みじんに砕かれる。呆気にとられる敵を上空へと殴り飛ばすと、三人は手を合わせ、ブレイブキョウリュウレッドを空へと打ち上げる。
「俺は、俺を超える!ブレイブイン!」
『ガブガブリンチョ!ガンティーラ!スピードルス!ガンガン!スピスピーン!』
銃から放たれたエネルギーが赤き勇者を加速させる。
「ダブルガンティラ!岩裂パンチ!」
貫きそのまま大爆散。丁度そこで変身が切れ、真っ逆さまに落ちていくところをアバレッド達に救われる。
「これでお前も終わりだ!ネジレッド!」
「舐メルナ!器風情ガァ……何故我ラノ復讐ヲ邪魔スル」
「復讐?聞いてあきれる。こっちは、明日の未来がかかってるの」
「お前らにいいようにされてる未来なんて御免だ。こちとら、いつか叶えたい願いが、山ほどあんだよ!」
強い思いのぶつかり合いに答えるように、仮面をつけた応援団員達が現れる。そして空間はプロレスリングへと塗り替えられた。
「いざ掴め!ナンバーワァァァァン!!」
現れる観衆。両者を応援する大音量の歓声。二組は強い意志を持って名乗りを上げる。
「虐ゲラレシ者、支配サレシ者。ハラサデオクベキカ、我ラが復讐。厄災騎士ネジレッド。ネジフセル、ナニモカモォ!!」
「一人でダメなら!」
「二人で掴む!」
「「世界と未来!」」
「タイムレッド!深月三龍!」
「タイムファイヤー!瀧磐八人!」
「今度は私も言えた」「気にしてたのかよ」
行司のように手を振りぬく応援団員。今決戦の火蓋が切られた。荒れるネジレッドに二人の連撃が続く。指輪を失いながらも、その力は絶大。黒きオーラで彼らを吹き飛ばすと、稲妻を球状に固め始めた。
「邪電エネルギーアタックゥ!」
「そう二度も通用するかっての!エンゲージ!」
『マジレンジャー!』
現れるウルザードファイヤーの盾と剣。それが巨大なエネルギーを受け止めるが、段々と押され始める。もう無理かと思ったその時、背中を押す感覚を覚える。ふと顔を向ければ、タイムレッドが力を振り絞り、支えてくれていた。
「いつまでも、守られてばっかじゃ、ないよ」
「……ありがとな。お陰で勇気満タンだぜ!ルーマ・ゴル・ゴジカ!」
取り出されたファイヤーウーザフォンから唱えられた呪文が、盾を強化する。耐久力が上がったとて、この攻撃は重い。それでも二人なら——
「「うおおおおおおお!!!」」
支え合う力が、悪しき力を超える。一歩ずつ足を進め、敵に近づいていく。ネジレッドは鼻で笑い、その指に電撃を溜め、貫通力を与えた一撃を溜める。
「今だァ!」
「わかってる!」
予想よりも早く、根性を持って邪電の光球が弾き飛ばされる。それに驚愕するネジレッドをアサルトベクターが狙い撃つ。指輪能力「
「コ、小癪ナァ……!」
「ここで、決める!」
「これ使え深月!」
投げ渡されるのはDVディフェンダー。左手に持ち換えた長剣ツインベクターを舞うように両刃で切り伏せる。その動きには無駄がなく、刃が切らない時間は一秒さえなかった。
「ビートアップ!&DVチェンジ!ファイナルモード!」
双剣に光が灯る。他でもない八人を傷つけ、ついさっきは"器風情"などと侮辱した仇敵に容赦など一切ない。その仮面の向こうには絶対零度の表情が広がっていた。
「ベクター……リフレイザー!!」
ツインベクターから放たれた超高密度のエネルギー刃が横一文字にネジレッドの身体を裂く。そこにVの字にDVディフェンダーが振られ、深月は背を向けた。
「タイムアップ」
猶予などはいらなかった。叫び声をあげるまでもなく、ネジレッドは急速で圧縮冷凍され、そこにからんと黒い指輪だけが残った。二人の変身が解ける。大きくハイタッチし、笑顔を見せあう。
「おーい!八人くん!」
「三龍ちゃーん!」
同じく変身を解いたユウダイと華蓮が傷だらけで走ってくる。後ろにはニヤニヤと笑う青蘭と、少しだけ表情の和らいだ九月がいた。八人は深月の目を見つめる。あんまりにも綺麗なので、目を逸らしてしまう。これはきっと恋などではない。ただ、美しいものに見惚れているだけなのだと、思いは胸に押し込めた。
「?行こうか。瀧磐くん」
「——ああ」
平和な日常は戻った。赤き戦士たちの大いなる勇気によって!
「そんじゃあ!勝利を祝してぇ!かんぱいやー!!」
猛暑が続く都内某所。そこに位置するカレー屋「パンゲアー」で、店を貸し切っての打ち上げパーティが行われていた。なのだが……
「しかし、どうして男子会?」
「女子会らしいっすよ。
お代わり無制限のカレーを一口で頬張る。ごろっとしたトマトが口の中で芳醇な香りを放つ。ドリンクのコーヒーは正直まずいが、これを食べられるのならおつりが出る。それでも、この素晴らしいスパイスを味わうには、隣に座るユウダイのラッシーがとても羨ましかった。
「はーっはっはっはっ!どうだい!楽しんでいるかな!」
大きな声を上げ、現総理大臣が隣の席へどかっと座ってくる。一瞬で身が固まる。日本のトップが今傍にいるので当然ではあるのだが。
「……んでこんな会開いたんすか。お忙しいでしょう」
「君と話したかったんだ!瀧磐八人くん!安心したまえ。緊急時には連絡を取るように言ってはいる。今頃藤鷹くん達は苦労しているだろうがね」
また高らかに笑う。深月が指輪を託し、頼れる救援としてよこした人物が彼なのは納得できるが、いまいち心のどこかが飲み込んでくれていなかった。そんなよどんだ感情をくみ取ったのか、どこか真剣な顔持ちで常夏は話し始めた。
「……初めて会った時、彼女は孤独に満ちていた」
「指輪を託された時、すか」
「ああ。テレビで私を知ったようでね。涙を流しながら、全てを話してくれたよ」
『全部、あげます。願いなんて、いらないので、助けてください』
常夏は語った。彼女がどんな顔持ちで、どんなに怯えて指輪を託していたかを鮮明な記憶を持って話した。まるで昨日あったことかのように。
「……ありがとうございます。多分、深月もあなたに指輪を託せたから——」
「いや。お礼を言うのは私の方だよ。同じ理解されない苦しみを抱えながら、私は彼女を救いきれなかった。"友達"にも"お供"にもなれなかった」
テレビでも見た事のない総理の影を帯びた表情。無敵の桃太郎にも人間らしいところがあるのだなと静かに驚く。
「だから、SNSで彼女を見た時は大変嬉しかった!そして、会いたかった!救世主たる君に!」
「や、やめてくださいよ大げさな……!」
「——これからも、彼女を頼むよ」
頷く。これからも、彼女に残された傷の責任を取るためにも、深月とは関わり続けるつもりだ。託された願いを胸に自分の指輪をぎゅっと握りしめた。
「おうおう、八人ぉ。先日は世話になったなあ」
「う、うっす。そんな助けになることはしてないっすよ、教授」
少しアルコールが入り、上機嫌な往歳。困惑する八人にドデカイ一撃を放った。
「で、いつ三龍には告るつもりなんや?俺的には今度の夏祭りが——モガガ」
「ごめんね八人くん!教授が失礼なことを!」
肝の冷えたユウダイがその口を無理やり塞ぐ。が、その後八人が放つ言葉は、周りの予想をはるかに超えていた。
「なーに言ってんすか。アイツが俺に恋愛感情なんてアリエナイすよー」
場が凍り付く。一部は呆れかえり、一部は笑う。どういうことだと気になった店主が事情を事細かに説明され、「はあ!?」と一言のたまった。一方その頃、女子会中の喫茶店「未来」では——
「瀧磐くんがぁ!浮気したんですぅ!」
おいおいと嘆く姿にとても姫の面影はない。やれやれという顔を示す正面の華蓮に対し、その隣の青蘭は心底うんざりしている。隣の美月はうら若き恋心に小さくニマニマしているし、うぶな雲雀は終始ドキドキしながら、話を聞いている。
「Meekoさんのライブ、でしたっけ」
「ど、どうしてそれを」
「ユウダイさんが楽し気に語ってくれました。なんでも推しのドラマーが出演するそうで」
パンクピンクな服に身を包む華蓮が、チューとミルク入りのアイスコーヒーを飲む。もっぱらブラック派の深月はコーヒーで作られた氷をカラカラと回しながら、心配事を続けた。
「歌手にはハマらない、と思うんですけど。ファンの女子と仲良くなって、恋仲に——」
「あーたねぇ、ならドカンと一発告白すればいい話でしょ」
「そういう訳でもないんよ、天宮はん。この子の中では今、うら若き桃色の感情が渦巻いとるんや~それと、向こうが唐変木やからってのもある」
「そ、そうなんですね!皆さん、強い上にお詳しいですね……」
やいのやいのと盛り上がる中、代理でカウンターに立つ謎の女性、一色せつなが一言。
「あるわよ」
「へ?」
「正直な気持ちとそれが籠った料理。それが彼の気を引く、効果的な方法さ」
そう言った瞬間、プリクラ入りのスマホに"瀧磐くん"から電話がかかる。女性陣はみな矢継ぎ早に言葉を放つ。
「まずはスピーカーをオンに。朴念仁なことを言った瞬間、次会った時私がボコします」
「店主のいう通り、料理振る舞うんや!浜辺デートとか!」
「いっそのこと、今言っちゃいなさいよ、好きだーって」
「ええっ!いいんですかそれ!」
目がぐるぐると回る深月。微笑みながら、せつなが緑色のボタンを押した。
『もしもし』
「た、瀧磐くん?何か用?」
ドキドキがこの場の女性陣全員に伝わる。「あー」と言葉を濁したのち、八人は誘いの文を紡いだ。
『今度の休み、海でも遊びに行かないか』
「ど、どうして急に」
『ほら、最初にネジレッドが出てきた時。ずーっとなんで怒ってるか考えてたんだけど、あれ水着のことだろ』
指輪も使っていないのに、かーっと誰がどう見ても分かるくらいに顔が赤くなる。電話先ではそんなことも知らず、八人がスラスラと話を続ける。
『折角綺麗で可愛かったの、あれっきりだともったいないだろ。また行こうぜ』
「き、きれいで、くぁいい!?」
『あれ?言ってなかったっけ?俺前から——』
会場のボルテージがマックスまで跳ね上がる。朴念仁が遂に花開くかと全員が思った。
「Hi!せつな!お望みのもの買ってきましたヨ!」
グラマラスなボディを揺らして、マリア・ミッキー・マーチンが店内へとエントリー。凍りつく空気。流石の彼女も空気を察したのか、せつなの元へそそくさと近づく。
「ワタシ、まずいことシマシタ?」
「うん。これは……荒れるわね」
『その声!マリアさんか!こないだの少年タックのグラビア最高でした——って、なんで聞こえんだ?』
「瀧磐くん……まだあの本捨ててないんだ」
『へ?いや、これはコンビニで見ただけっていうか。漫画目的のところちょいと見えたというか』
その目に影が籠る。あちゃーと周りの女性陣はそそくさと席を離れる。息を満タンまで溜めた深月の叫びが八人の耳を襲う。
「瀧磐くんなんて!!だいっきらい!!」
怒りにも愛にも似た説教が始まる。「それほぼ好きって言ってない?」なんて一言も混じっていたが、当の本人が気づくにはかなりの時間がかかるだろう。
いつか貴方が黒い指輪を見つけた時には、浜辺にたたずむ小さな喫茶店を頼って欲しい。そこにいる二人の指輪の契約者があなたを助けてくれるはずだから。
「じゃあ俺も助けてくれよ!」
「スケベな瀧磐くんはお説教!」
……きっと。
〇ゲスト出演作品
氷川華蓮(アバレッド)
https://syosetu.org/novel/374798/1.html
荒池ユウダイ(キョウリュウレッド)
https://syosetu.org/novel/374798/18.html
四葉九月(シシレッド)、天宮青蘭(ゴセイレッド)
https://syosetu.org/novel/374798/23.html
星育数音文(ファイブレッド)
https://syosetu.org/novel/374798/6.html
若宮美月(レッドファルコン)
https://syosetu.org/novel/374798/9.html
日昇雲雀(レッドターボ)
https://syosetu.org/novel/374798/40.html
一色せつな、マリア・ミッキー・マーチン
https://syosetu.org/novel/374798/30.html