【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
CE0073.4.** (PHASE-5)
姫によれば、アマミキョ・ハーモニクスシステムには大きな課題があるそうだ。
それは、アマミキョクルーの統制。
起動時に収集したハーモニクスデータは非常に高い数値だったけど、レベルが最低だった上、ベクトルが全くバラバラだった。
つまり、アマミキョクルーの意思が一つになっていない。コアへのセッティングの為に、強制的にでもまとめる必要があった。
姫は、大嫌いなはずのアークエンジェルまで持ち上げてクルーの前で演説し、僕たちアマクサ組によるアマミキョの統制を宣言した。
全船監視システムで各人のデータを見るのは、主に僕の仕事だ。
統制の強化によりクルーの成長を促すのは勿論、敢えて不満と鬱屈を抱えさせることで、ハーモニクスの数値も高くなる。
クーデターまで行かれたら困るけど、予防策もあるし。
CE0073.4.**
ナオト君が、正式にティーダのパイロットになってしまった。
あのアスハ代表、直々のご命令らしい。
彼が無断出撃したことでさらに複雑化してしまった、ティーダのメインデータバンク。そいつとずっと格闘してたのに、僕の努力は一体何だったんだろう……
あと一度でも出動したら、もうキラ・ヤマトでも解除は不可能だよ。マユは随分喜んでるけど。
CE0073.5.** (PHASE-6)
コロニー・ミントンに到着し、社長がアマミキョを離れた。
そしてまたしても、ティーダとアマミキョの戦闘実験が行なわれることになった。御方様直々のご命令だ。
シナリオはパターン05、つまりアマミキョがテロリストに乗っ取られたということになっているそうだ。
ということは、僕たちアマクサ組がテロリスト役ってわけか。
今度の敵は、なんとあのミネルバ隊。
もっとも、今はまだミネルバには未搭乗だから、ミネルバJr隊か。
SEED保持者であるシン・アスカに、レイラの因縁であるレイ・ザ・バレルがいる。相手に不足はない。
予想通り、姫はシン・アスカと手合わせした。
──結果は、SEED未だ開花せず。
インパルスの受領直後だったようだし、仕方がない。まだ、捕まえて調べるほどの価値なし。
問題はティーダだ。戦闘ログを見てちょっと驚いた──マユの発言だ。
シン・アスカとルナマリア・ホークの件を匂わせるようなことを言うなんて。
勿論、相手は何も分からないだろうけど。ホーク姉妹がミネルバ隊に配属された本当の理由、議長とそのごく周辺しか知らない……ってことになってるんだから。
無事黙示録が起動して戦闘が終了したから良かったけど、マユの暴走には今後、少し気をつけなければいけない。
この戦闘中、サイの手引きでジュール隊が脱走してしまった。
どうやら戦闘が早期に終了したのは、ミントンから社長がミネルバJrに直接連絡したのも大きいけど、脱出に成功したジュール隊がザフト側の誤解を解いたことにもよるらしい。
CE0073.5.** (PHASE-7)
ジュール隊の件もあり、姫はサイと再び接触を試みた。
どうもサイは彼女のことで相当混乱して、向こうみずになりがちなようだ。
ハーモニクスシステムの要となるかも知れない彼に危険があれば、こちらも困る。
だから久々に姫は「フレイ」を降ろし、彼と話して混乱を解いた。
解いたといっても、勿論全てを打ち明けたわけじゃない。
強化されて二重人格になったとか、社長に研究所に叩きこまれたとか、よくもまぁここまでスラスラと嘘八百が出てくるもんだと感心するほどに嘘を並べただけだ。
これで少し、安定してくれるといいけど。
CE0073.5.**
アマミキョ統制のため、グループの編成し直しをすることになった。同時に連帯責任制を実施。
これでアマミキョ内はさらに一つになることになったけど、不満も倍増した。
サイについては、この間「フレイ」が話をしたのは逆効果だったのか、どうもさらに焦らせてしまったらしい。しょっちゅう姫にくってかかっている。
だけど、姫は冷たくあしらいつつも、彼の希望は出来る限り実現するよう努力している。
いじらしいまでに。
それは――
本当にハーモニクスシステムの為、その為だけだろうか?
CE0073.6.**
アマミキョ就航から、1ヵ月半。
サイは相変わらず、姫や僕たちにつっかかっている。
一体、彼をそうさせるものは何なのだろう。普通の人間の感情というものは、僕たちには分かりかねるところが多いのだけど、それでもサイの様子は変だ。
CE0073.8.**
御方様から情報が入る。
カガリ・ユラ・アスハが近々、アレックス・ディノと連れ立ってプラントへ交渉へ向かうらしい。場所はあの、ミネルバ就航予定のアーモリーワンだ。
そこにはシン・アスカも来るはずだ。
ティーダの戦闘実験が出来るような場所じゃないのが残念だけど、どういう結果が出るか楽しみだね。連合が不穏な動きをしているのは把握してる。
アスラン。貴方はどうする?
CE0073.9.28
ユニウスセブン周辺に、正体不明のモビルスーツ群が集結中との情報が入る。
サイからティーダのトランスフェイズシステム改良の提案があったので、姫はこれも了承した。
CE0073.10.1
ナオト君の戦闘シミュレーションを観察してみると、明らかに腕が急速に上がっていた。
かつてのキラ・ヤマトにはとても及ばないのは当然としても、ハーフにしては無視出来ない数字を叩きだしている。
もしかして僕たちは、偶然にもまた一人、SEED保持者を見つけ出してしまったのか?
SEED保持者は別の保持者を引き寄せる。ナオト君も、姫のSEEDに引かれたということなのか。御方様へとりあえず報告はしておく。
ティーダのパイロット登録は、代替パーツがない限りもう解除不可能だけど、それが新たなSEED保持者の発見につながるなら、これほど嬉しいことはないね。
CE0073.10.3
プラント軍事工廠・アーモリーワンがテロリストの襲撃を受けたとの連絡が入る。
あそこはカガリ・ユラ・アスハにアレックス・ディノ──つまりアスラン・ザラがいるはずの場所だ。
案の定、彼らは出航したミネルバに助けられ、無事にコロニーを脱出したらしい。いずれ、彼らとあいまみえる戦闘実験もあるんだろうか。
それよりも重大なのは、ユニウスセブンの軌道だ。何日か前から注意はしていたけれど、やっぱりそうか。
安定軌道をはずれ、降下を開始している。
CE73.10.4 (PHASE-8)
落下するユニウスセブンを、アマミキョが破砕することになった。
既にミネルバ隊が破砕作業に入っているそうだけど、どうやら色々妨害があるらしく、うまくいっていない。
砕ききれていない残骸を僕らで何とかするというのが、姫の作戦だ。せめて、チュウザンに落ちる分ぐらいは。
正直、あんまり地球への愛着とか、国への忠誠心とかには縁のない僕だけど、さすがにこんなことは困る。姫なんか、可哀相になるくらい必死だ。
入ってきた情報によると、ザラ派残党によるテロによるものだということだけど……
勿論このことは、船内におおっぴらにするわけにはいかない。
それにしても、シン・アスカとアスラン・ザラ、カガリ・ユラ・アスハが同じ船にいるとはね。やっぱりSEEDは引かれあうようだ。
ところがこの作戦の間、ティーダが損傷してしまった。
トランスフェイズシステムが壊れてしまったのだ。大気圏突入中だった為戻ることが出来ず、ナオト君もマユも大怪我をしてしまった。
サイがトランスフェイズシステムの改良にあたっていたはずなのに、どうしてだろう?
アマクサ組の努力とナオト君の機転で、どうにかティーダの大破は免れたけれど、サイは一気にクルーから叩かれることになってしまった。
可哀相だけど、ミスしたんだから仕方ないよね。
……と思ったけど、姫からこの状況の詳しい調査を命じられた。
CE73.10.** (PHASE-9)
なるほど、そういうことか。
サイではなく、犯人は彼女だったんだ。誤解は早めに解いておくにこしたことはない。
……と思って姫に報告したら、しばらく様子を見るとのことだった。
サイがこの状況に対し、どう判断するか。姫はそれを見たいそうだ。
その間にも、地上の大混乱もあいまって、彼を取り巻く状況はどんどん悪化していく。
そしてクルーの前にしての尋問が始まり──
サイは、あまりにも最悪の選択をしてしまった。
トランスフェイズシステムを狂わせたのは全て自分だと、認めてしまったんだ。
正直、信じられない。いくらサイの側では真犯人をつきとめるには手間がかかるとはいえ、こうも簡単に罪を認めてしまうなんて。
犯人はアムル・ホウナだ、サイじゃない。なのに──
この事態に姫は当然、激昂した。そしてサイをどうしたか。
船内の不穏な空気は、そろそろ危険域まで達していた。そこで、船内に満ちている不満を、全てサイに肩代わりさせる。
つまり、サイをこのまま放置することにしたんだ。
「特定のターゲットをつくり、敵意を一方的に集中させ、現体制への不満やストレスを減少させる」
──要は、クーデター対策だ。
だけど、彼の精神がもつか。
物理的な危険は、限界を超えたら救助に入ることにしているけど……
もたなければ、それまでだね。
また別の、ハーモニクスシステムの要を探すだけだ。幸い、要になりうる人物を探すのは、SEED保持者を探すよりはずっと簡単だし。
ティーダの代替パーツが揃ったので、ナオト君はパイロットから外れることになった。
もっとも、ナンザン港戦でまたしても無断出動してティーダを傷つけた、それによるところが大きいけど。
せっかくSEED保持者ってのが分かったのに、勿体無いなぁ……
CE73.11.** (PHASE-10 part1~)
連合がプラントに、宣戦布告を行なった。
原因は勿論、ユニウスセブンの落下。近いうちまた戦端は開かれるだろうと思ってたけど、こんな形とはね。
同時に、連合の山神隊によるアマミキョへの干渉が始まった。
とはいえ、それほど心配すべきものではない。
こちらには連合の外務次官の愛娘であり、父の仇討ちに軍へ志願した勇気ある少女であり、ヤキンで行方不明になったはずが奇跡的に蘇った伝説の戦乙女「フレイ・アルスター」がいるのだから。
そして久しぶりに、ミーア・キャンベルの映像を見た。勿論、ラクス・クラインとしての彼女だけど。
彼女は僕たちや姫、マユとはまた違って、遺伝子レベルで操作を受けたわけではない。記憶も弄られていない。単純に、よく似た声紋の持ち主をそっくりに整形しただけだ。
でも、彼女はなりきってる。
それはやはり、彼女なりにラクス・クラインを研究し、彼女自身のラクス像を完成させているから。単純に模倣するだけでは、彼女は絶対にラクスにはなれなかったはずだ。
でもこのままいけば、多分彼女はラクスになれる。
「平和の歌を歌いたい」――その魂を、彼女は降ろしているから。
ただ一つ問題があるとすれば、まだラクス・クライン本人は生存しているということだ。
議長はやきもきしていることだろう。そろそろ暗殺部隊の一つや二つ、派遣される頃だろうか。
もし本当にやられたらこっちが困るけど、多分それはない。彼女はキラ・ヤマトと共に生活しており、フリーダムを地下施設に隠匿しているんだから。
それに、暗殺部隊ごときにやられる程度なら、そもそも僕たちが動く価値もない存在ということだ。
僕はミーアとは違う。
ニコル・アマルフィは僕だから。僕でしかないから。
嘘のつきようがないし、追いつめられようがないんだ。
CE73.11.** (PHASE-10 part5~)
姫は再び、「フレイ」としてサイへの接触を行なった。
但し今度は、記憶の一部が復活した状態という設定だ。キラ・ヤマトの記憶の一部が。
そして最大限に彼を突き放す。
姫の中のフレイという、最後の味方まで失ったサイはどう出るか。ハーモニクスの数字はいい感じに振り切れている。
──そうしたら案の定、騒ぎが発生した。
整備士たちと大喧嘩した末に、サイは重傷を負ってしまったのだ。
姫が救助に入ったから良かったけど、下手をすれば死んでいた。
いや。下手をすれば死んでいたのは、整備士たちの方か。
それぐらい、姫の暴れ方は凄まじかった──どう見ても、過剰防衛だ。
それに、周囲で見ているだけだった人間にまで手をかけるなんて。確かにアムル・ホウナは真犯人ではあるんだけど。
どうしたんだろう。もしかして姫は……
いや、まさか。
そういう感情が危険だということぐらい、姫だって分かっているはずだ。
サイ・アーガイルはあくまでキラ・ヤマトの友人。そしてアマミキョシステムの要、その候補にすぎない。
御方様がいる限り、それが覆されるはずがない。
一応、御方様へ事実の報告はしておく……これも、僕の義務だから。
CE73.11.** (PHASE-11)
ナオト君が下船した。これでティーダのパイロットは再び、マユ一人となる。
マユについても不安材料が増えた。彼女が「痛み」を感じるようになるなんて……
ティーダとナオト君の影響なのか。
ティーダにはマユと一緒に一時的にラスティが乗ることになるけど、多分ナオト君の時のような強力なセレブレイト・ウェイブは発振できない。SEEDの有無もそうだし、素質の問題もある。
そして、アスラン・ザラがオーブを離れ、ザフトに復隊したという情報が入った。
しかも、あのミネルバ隊に。
どういう経緯でオーブを離れたのかは不明だけど、これで彼は二度も自軍を裏切ったことになる。オーブと連合が手を結んだ以上、ザフトはオーブの敵になってしまったのだから。
僕、「ニコル・アマルフィ」の立場としてはきっと、怒るべきところなんだろうな。
――ニコル。僕として、僕は聞くよ。
君は今、アスランのことをどう思っている? アスランを守って散っていった、君としては。
お願いだから黙らないでくれ。
僕は、君なんだから。君であること以外、僕には何もないんだから。
CE73.11.** (PHASE-12)
遂にザフトが、北チュウザンまで攻めてきた。
残念ながらミネルバ隊は来ない。アスランと会えるのは、まだ先のことになりそうだ。
アマクサ組と山神隊で応戦したけれど、ザフトはアマミキョのすぐそばまで迫ってきた。
──地下への特殊潜行型モビルスーツ、そいつでいきなり僕たちの目の前に現れたんだ。
ティーダの警告があったから助かったけれど、それがなければ僕らは殺されていた。
実はこの時、下船したはずのナオト君がもう一度戻ってくるのを、マユは感じていた。
地下のモビルスーツを感じ取った件といい、やはりマユの感じ方はティーダによって強化されてきている。
しかも……
サイの身に迫った死まで、彼女は予測した。
この時サイは、アマミキョを飛び出し、作業用アストレイでザフトと戦っていた。
こんな危険な行動は誰も想像出来なかったけど、結果的にこの時サイは──
キラ・ヤマトが感じた苦痛を、少しでも追体験することが出来た。
これは実は、姫の目的の一つでもあった。こういう形で実現するとは、さすがに予測出来なかったけどね。
船の中で孤立する苦しさがどんなものか。
孤独の中、モビルスーツで命を賭して戦うという状況がどんなものか――
姫はサイに、少しでも分かってほしかったんだ。
それは、サイが普通に生活している限り、絶対に味わうことは出来ない。
これは恐らく、かつてのアークエンジェルでもそうだったろう。
モビルスーツに乗せられるコーディネイターの孤独と、乗れないナチュラルの劣等感。
その溝についてはアークエンジェルにおいてでさえ語られることはほぼなく、遂に埋まることはなかったのだから。
キラを少しでも分かることが出来ない限り、サイは前に進めない──
そう、姫は言っていた。
意味がよく分からないけれど、そうしない限りサイをアマミキョの要として使うことが出来ないということだった。
……違う。
姫がそこまでサイのことを考えるのは、アマミキョの為じゃない。
確かにハーモニクスの数値は凄まじい結果を出したけれど、姫の目的はそうじゃない。
サイ自身の為だ。
なんで、そんなことが分かるかって?
サイを助ける為の姫の行動が、全てを語っているじゃないか。
あんなに必死に行動するくらいなら、その前にこんなことはやめれば良かったのに。サイにキラの孤独を疑似体験させるなんて……
姫。いや、フレイ・アルスター。
貴方の気持ちは、僕はもう分かっているつもりです。
キラの為、アマミキョの為と言い張っていても、貴方は気持ちを隠せていない。
だって貴方は、初めてなんでしょう。こんな気持ちを感じるのは。
多分、サイから全てを告げられたあの日から、貴方は彼に心を奪われていた。
僕たちは、それを否定するつもりはありません。
だって貴方は、ずっとそんな感情を許されていなかったのだから。
御方様の言われるままに、通常の人間が感じるはずの恋や愛といった強い感情ですらも、制御されてしまっていたのだから。
生殖機能を最初から奪われている僕には分かりようのない感情だけど、その感情を制御することがどれだけつらいかは、理解しているつもりです。
なのに、ミゲルに命じて自分を殴らせるなんて。
そこまで、自分を制御しなければいけないんですか。
貴方がそこまで心を縛るのは――
御方様の為ですか、陛下の為ですか。レイラ・クルーの為ですか。