「くっ! 何処だ、どこに消えた!?
 私のタミヤモデラーズニッパーッ!!」

 風鳴翼が叫ぶ。
 歌女として数々の大舞台を経験し、また防人として幾つも死線を潜り抜けてきた不動の乙女が、
 この夜、珍しくも動揺を露としていた。
 常在戦場を旨とする現代の修羅にとって、ガンプラ製作もまた、一つの大いくさである。
 だが今、その未知なる戦場(いくさば)を切り開くべき剣(つるぎ)
 タミヤモデラーズニッパーがどうしても見つからない。
 南無三。
 かくなる上は、とるべき道はただ一つ。
 偶然ゴミの山から拾い上げた爪切りを刃と成して、モデラー・風鳴翼の狼煙を上げるのみ――!

「やめてください翼さん! 部屋のお片付けが先です!?」

 エルフナインが泣き叫ぶ。
 彼女もまた夜勤明け、テンションが少々おかしな事になっていた。
 ガンプラは自由。
 三代目メイジン・カワグチの残した金言である。
 だがならばとて、普段、足の爪を切っている代物でゲート処理を施すなどと言う横暴が許されようものか?

 地獄。
 進むも地獄、退くも地獄の地獄絵図。
 ただ刻々と、貴重な時間のみが空しく過ぎ去っていく。

 苛烈なガンプラバトル選手権・世界大会も、決勝戦の開始まで残り一週間。
 静岡の会場では居並ぶファイターたちがオアシスを求め、世界的アーティスト・風鳴翼と和気藹々とした時間を過ごせるその時を、今か今かと心待ちにしているのだ。

 全国のビルダーと音楽ファンたちに夢を届けるその為に。

 急げ防人! 絶唱せよ、現代の歌女・風鳴翼!!


(ベキッ)



「「 あ 」」







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