袖ヶ浜鎮守府の作法
作者:佐伯美鈴

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ハゲワシ ID:8moUE8PM 2026年07月25日(土) 23:15

 ⑥-②への感想です。
 薄暗い船内の描写を興味深く読ませていただきました。二次創作でもあまり描かれる事がない艦船での移動-発艦ですが、格納庫の薄暗さと圧迫感がよく伝わってきます。実際フル装備だとあまり身動きもできないしレールの上で待機している情景は容易に想像でき、船が轟沈したらそもそも出撃する事なく一緒に死ぬしかない、当然の事ではありますがそれを再認識させられます。
 その一方で登場人物達の会話は軽妙で、船上の混乱と隔たりがあるのが面白い(神々廻すら大分浮いている)。砲弾が貫通しても誰も取り乱さず平然としています。雷やサミュエル、阿武隈の発言を見るに楽観は決していませんが、死ぬ事を考えても仕方ないという歴戦のメンタルを感じさせますね。もしかして船が沈んで誰も出撃しないまま全滅するのではないかと緊張しながら拝読していました。
 今までの登場人物達が勇躍するのが待ち遠しくはあるものの、次回は……(260文字省略されています)


 12話 報告

佐伯美鈴 2026年08月08日(土) 00:22

 読んでくださり、また丁寧な感想もいただきありがとうございます。
 母艦からの発進シーンは、当面の逃げ場のない圧迫感というようなものを表現したかったので、少しでも伝わったのであれば嬉しいです。映画「メンフィス・ベル」に、目標への最終コースに入った爆撃機の編隊が、正確に投弾するためにひたすら直進しなけれないけないというシーンがあります。機体の周囲で炸裂する対空砲火をくぐりながら、一切の回避運動も許されずただ爆弾投下の瞬間まで直進し続ける。その圧迫感、緊張感、そしてただ座席に座り続けるしかない、狂おしいほどのじれったさというのは、いったいどれほどのものだったのか。そこにも戦場という極限におけるひとつの心理の表象があると思っています。
 艦娘たる彼女たちは、艦としての時代に一度死の一線を越え、今また艦娘という形をとって顕現した、という風に私は解釈しています。彼女たちの快活さ、死への達観した言動、しかしそれと同時に湧く生への執着。それらはそういう背景で並立しているのだろう、と思います。
 サンフェルナンドにおける撤収の情景は、最初のうちは単なる背景として存在していて、あまり深く触れる予定ではなかったのですが、神々廻とれーかを結ぶ接点としてだんだんと前進してきてしまいました。これ以上触れる予定はない…たぶんない…ですが、神々廻の自分という存在に対する奇妙な集中力の無さ、のひとつの背景になるのではないかと考えています。
 いちおうラストシーンまでのプロットはできています。後のシーンのロケハン(というと大げさに過ぎますが)は済んでいます。あとはとにかく手を進めるのみですね。
 次話がお目に留まればこれにすぐる喜びはありません。


私は畦道になりたい ID:iRkHuEaU 2026年02月28日(土) 23:05

 ⑥への感想です。
 敵の姿は終始映らず湧出口も殆ど見えていない、そんな状況で作戦は進行する。神々廻は一体何と戦っているのだろうと思わされる話でした。仲間のために戦うと嘯きながら深海棲艦への憎悪は匂わず、寧ろ本人がそう呼ばれている。他の乗員は敵を倒すか自分が生き残る、あるいは仲間を生還させるために戦うのに神々廻は全く逆の思考、おそらく「仲間」を回収できなければ自分は死のうとさえしている。サミュエルが毒づいたのは同じ言葉を吐きながらも他の乗員への共同意識が薄いのが分かったからでしょうか。艦長や航海士と親し気に話してはいますが彼らに愛着を持っている風は特にありません。
 後詰にいる彼女らは敵を直接観測せずに合図で砲撃し、前線が落伍していく様子は伝わって来るが実際どうなっているかは分からない。困惑と不安の中でじわじわ緊迫感が増していき、とうとう隣の船があっという間に爆沈する。文章の温度の上げ方と……(342文字省略されています)


 11話 報告

佐伯美鈴 2026年03月04日(水) 01:11

 読んでくださり、また細かく丁寧なご感想もいただきありがとうございます。
 今回のお話の中での神々廻の行動は「このまま終わってたまるか」というような、「日本のいちばん長い日」の登場人物に近いように見えます。解決のために片付けるべきことのなかに自分すら含んでしまいかねないことにも無頓着とでも言いましょうか。相変わらずなのかもしれませんが、神々廻の、関心があるもの以外への奇妙な集中力の無さが、彼女をこういう状況にいざなっているのだろうとは思います。袖ヶ浜鎮守府の提督ではなく、艦長が「他人への関心が特別に高い」人物として登場したこと、そして神々廻にそれが全く響かないところは狙いがあったことなので、少しでも表現できて伝わったのだとしたら幸いです。
 ただ、「袖ヶ浜」シリーズの約束として、最後は「回復/再生」に向かう(最低でも向かおうとする)という原則は消えたわけではないので、神々廻の今後に少しでも目を向けていただければ幸いです。カレーは人を元気にしますから。

 袖ヶ浜の提督と「前夜」の組み込み方は、公開した後になってから「ああ、ああしてこうすればよかったのだ」と気づいて頭を抱えたのですが、今後がんばりますという形でお応えしていきたいと思います。

 戦闘の描写は、全体の状況は巨大すぎて個人の視点から見えず、大きな丸太をぶつけ合うような衝突の中で、太鼓をドンドン叩くリズムがどんどん速くなっていって…というイメージにしています。記録映像で見る米軍の艦砲射撃やソ連軍の弾幕射撃もそういう編集になっているように感じ、参考にしています。

 幕間にたびたびはさまれた、陸軍の砲員や巡視船の姿やタイとノルウェー艦の投入は、事態が「今更引けない」段階に踏み入っていることを表しています。その先にある「破断界」と最終的な「回復/再生」へのプロセスをがんばって加速させていきたいと思います。
 いろいろと考えるところもあり、このペースをできるだけ維持していきたいです。
 いただいたご感想、励みにも刺激にもなっております。
 またお目に留まれば幸いです。
 改めてお礼申し上げます。


カツラ ID:Z.3HJWnU 2026年01月17日(土) 11:28

⑥-④を拝読しました。

 軍関係者か、戦地経験者かどうかに関わらず登場人物は各々が懸命に生きている事を丁寧に書いていると感じました。役所の人は戦傷を抱えつつ家庭を持って静かに暮らしているし、ラジオのパーソナリティは花粉の話を暢気に交えつつおそらく戦争経験者が身内にいる。艦娘も残った時間を大事にし、れーかも自分のやるべき事にきちんと向き合っている(姉は前夜①の彼女ですね、読み直して顔が同じと書いてあるのに気づきました)。
 神々廻だけがトラウマと後悔に突き動かされて破滅的な道を突き進んでいる。周りが落ち着いているから尚更そう見える。精神的にも壊れ始めているようなところが散見されており段々心配になってきた。

(6行省略されています)


 10話 報告

佐伯美鈴 2026年01月21日(水) 01:40

 読んでいただき、また、丁寧な感想もいただきありがとうございます。
 今回は中心人物のはずの神々廻はほとんど登場せず、周囲の人からの視線・視点によって彼女の異質さが浮き上がって来るというところは、エピソード全体の狙いでもあったので、伝わったののであれば嬉しく思います。
 これは参考にしたというよりは「影響を受けた」…より正確に言えば「もっと正しく影響を受けたかった」部分になるのですが、むかしから複数の人物が一つの事柄や人物に対して様々な発言や証言・評価をして、そこから何かが浮かび上がったり、あるいは却って分からなくなったり、という手法に非常に興味があります。
 映画の世界では「羅生門スタイル」と言われたりし、村上春樹の「アンダーグラウンド」もそれに近い性質を持っていると感じます。
 今回人間的に異質な存在になっていく神々廻の観測者たる人々が、みな一様にお人よしというか心根の優しい、人間的な部分が前面に出ている造形なのは、その表現形式のせいかもしれません。彼らは単に親切であるというだけでなく、自分の立場ではやってはいけない、言ってはいけないことにあえて踏み込んで神々廻に関わろうとし、それを神々廻が素通りして、前回言えなかったさよならを最悪の形で告げていくのが今回のエピソードのオチでもあります。

 なぜこのような強引が作戦が…というのはひとえに私の表現不足、力不足ですね。今回一人削った登場人物があって、それがその部分の説明に多少関わるものでした。もうひとつ別の次回以降用のエピソードが、その説明になるはず…と思います。
 れーかの姉は前夜①の彼女です。平戸については「やったことにきちんと意味はあった」という、以前のエピソードへの「解答」でもありますが、本人は知らないのがせつない気もします。
 
 また、個人的な捉え方ですが、私は戦争というものを捉えるとき、そこにいる一人一人の「顔」を持つ人間たちに注目します。戦争という巨大な事象の下で、それでも彼らは顔と名前を持つ一個の人間であること、そういう視点は持ち続けたいと自分では思っています。

 さて、「前夜」はこれで終了となります。ラストまでのストーリーとプロットはできているので、あとは進めるだけです。体力との戦いにもなりますが、絶対にゴールはします。
 またの機会にお目に留まれば大変うれしいです。


八本脚 ID:HWkrHChI 2025年10月19日(日) 13:02

早めの更新助かります、拝読しました。

 過去作の登場人物と因縁が一通り出揃いいよいよ最終章という雰囲気です。
 神々廻が戦闘に赴くモチベーションはもう無いと考えていたのでこの方向で動かすか、という感想を抱きました。不安定さを抱えたままの主人公がどこに帰結するのか興味深いです。自暴自棄、自殺指向になっているようにも見えるのですが、帰るところも一応あるし記憶を留めるという約束もし、生きる理由はきちんとある。さよならを言っていない彼女がどちらに転んでいくのかが楽しみ。

 戦闘に積極的になった彼女がいる一方で袖ヶ浜の面々は終始陰鬱としており重苦しい。後詰も後詰なのは小規模・旧式だからかと思いましたがそうでもなく、そこまでの被害が想定されているから。取り乱すキャラクターもおらず粛々と作戦を説明する場面が逆に怖い。読んでいる側からすると現実感、戦死の実感を抱いていないように見えるのですが、その実登……(170文字省略されています)


 9話 報告

佐伯美鈴 2025年10月22日(水) 01:09

読んでいただいてありがとうございます。また、丁寧に読んでいただいてありがとうございます。
神々廻はとりあえず前進することは決めたものの、左右にぐらぐらして、そばで支えてくれる人に驚くほど無頓着です。選び取れる平穏な道もあるのに、それが見えているし理解してもいるけれど実感がない、そんな感じです。
側にいる人に気づいてくれればいいのですが、それはもうちょっと先になりそうです。

決戦が近づいた雰囲気というものは、見た目だけは意外と淡々としていたのかもしれないと考えています。怖いし、嫌だし、でもじたばたしてもどうにもならない。不安と恐怖がねっとりと重い空気のようにまとわりつきながら、でも日々の営みは続いていく、とでも言いましょうか。
袖ヶ浜の彼女たちの反応も、作戦が単純なものになるしかないということが示す現実の過酷さに一瞬ひるんでいるのだと思います。

次回は今回「さよならが言えなかった」ことと対になる話になる予定です。
なるべく早い更新を目指しています。またお目に留まれば幸いです。


Frog Man ID:6.Nql3VU 2025年09月06日(土) 22:34

おっと書き忘れた、冒頭の壊れた時計は神々廻が過去に縛り付けられている隠喩かしら


 8話 報告

佐伯美鈴 2025年09月07日(日) 14:58

 これについては、「袖ヶ浜鎮守府」の各話はそれぞれ(おおむね)冒頭で時計を見るシーンから始まっていますが、「決号作戦」と「撃沈した深海棲艦からの艦娘の再生」が示唆される『⑤阿武隈「阿武隈のためのロングアンドワインディングロード(後編)」』からは時計が壊れていたり、見えなかったりと、ふだん頼りにしている「基準」「秩序」が少しずつ崩れていきます。
 そして『⑥決号作戦「前夜② ラピスラズリは海より還る」』では、神々廻は実生活でも精神的な部分でもだんだんと「停止」していっています。過去と現在の間で行き先を見失った神々廻は、次話において自らの進むべき方法を見つけることになるのでしょう。
 それが幸福なものなのかどうかは、おそらく神々廻本人にも分かっていません。


Frog Man ID:RkM4EgIo 2025年09月06日(土) 13:59

 まず久しぶりの更新で一安心です、失踪も憂慮していたので。

 不穏な雰囲気を前回から引きずりつつも一応は平和なカレー店の2人から、一転してサミュエルの様子で緊張を煽りそのまま勃発した戦闘に入る、スムーズな流れでした。駆逐艦達の戦闘モードへのシームレスな切り替えが熟練を感じさせます。

 今までも何度か出ている6駆の初の戦闘描写になるのですね、個人・ペアの動きが細かいです。どういう動きをしているか分かりやすいところと分からないようにしている描写がスピードがありつつ緻密です。装備が古いのをコンビネーションで補ったり突っ込みがちなサミュエルを引っ張って防御・退避に徹するなど、ゲームで言えばレベルが高いとはこういう事なのだろうと思わされます。その上で敵を漸減させているけど。

 最後のはドロップ艦の描写かな、これ自体は艦これ二次創作ではよくある設定で、作中でも艦娘=深海生艦説は噂にはなっているよ……(294文字省略されています)


 8話 報告

佐伯美鈴 2025年09月07日(日) 21:41

 読んでいただいてありがとうございます。また、細かいところまで踏み込んだ感想も本当にありがとうございます。
 刺激にも参考にもバネにもなると感じて受け取っております。

 個人的には軽巡艦娘と駆逐艦娘の戦闘は言うなれば「海上機動歩兵」的な、とてもスピーディなイメージで書いています。ときには波の高低の差や、うねりの周期までも利用するような、一瞬一瞬の交錯の集合体、とでも言いましょうか。ベテランや手練れが、どっしりと存在感がある、というような描写もけっこう好きだったりします。あとシールドも好きです。電ちゃんは接近戦では盾すら武器にしそうですね。
 書いていて楽しい部分でもありますので、「スピードがある」と感じていただけたのなら、いささか喜びとするところです。

 春雨の正体、今後の各キャラクターの行動、舞台の背景、については「ここから話が動きます」としか申し上げられないところですが、次回は半年後にはなりません。以前よりはがんばって更新頻度を上げていこうと思っていますので、もし次回も目に留まれば幸せです。


チェロ弾きのゴース ID:0BnWloZs 2024年12月22日(日) 01:23

 ネタバレ及び同作者の前作の内容を含む感想です。

 『夕陽の底、さらに下』の続編ですね。百合が救いになりそうで結局ならなさそう。
 緩急の付いた構成で短いながらハラハラしながら読めました、これは意図的に組み立てているのか。雨中の泥道での撤退は前作でも触れていますが、今度は落伍者から荷物を奪い取っているなど(よく聞く話です)兵士1人1人の所業によりクローズアップしているようです。避難船の混乱や女性少尉の利己的な行動なども含め、異常な状況における個々の歪みの累積が作者の念頭にあるのかな。
 サンフェルナンドになんとか到着し、行進を止め一旦止まってしまうのが生々しくもちょっとユーモラス。多分こうなっちゃうんだろうな、とつい思ってしまいます。でも避難船や輸送機の描写はいつも通りというかなんと言うか。ただただ読んでいて辛い。
(6行省略されています)


 7話 報告

佐伯美鈴 2024年12月22日(日) 13:05

拙作をお読みいただき、また丁寧な感想をいただいて恐縮です、ありがとうございます。

どうしてもストーリーがシリアスに振れてしまう癖のようなものがあるのですが、人間が極限の状態に置かれたとき、あるいは根源的な欲求のみが求められる状況になった時には、生物としての幼児的な単純さが表に出てくるのではないか、とも思っています。そこが生々しくもユーモラスな人間模様になってくるのかな、と自分なりに分析してみたりしました。

人選の場面は、「大空のサムライ」は確かに読んだことがあるのですが、今回元にしたのは古代ローマの軍隊における「十分の一刑」の方と、小林源文氏の独ソ戦の漫画で軍紀を正すために兵士のうち十人に一人を処刑するシーンがあって、そっちの方が影響しています。
もっと自分自身のオリジナリティーも持ちたいな、とも考えました。

次回は作戦準備に入っていく予定です。
いつかまたお目に留まれば幸せです。


イブプロフェン配合 ID:FNTz5ROM 2023年02月12日(日) 13:22

 ネタバレ及び同作者の他作品の内容を含む感想です。

 拝読しました。前編とは対称的に全体的にハイテンポで緊張感が纏わり付く中、所々で登場する個性的な一般人や駆逐艦達の軽妙な描写が清涼剤として作用している、という印象です。暑い中を移動する・走る描写が多く主題の長く曲がりくねった道と合致しており、その上で前編の一場面で触れなかった「水を飲めない」を布石として上手く使っています。作品演出として面白いと感じました。

 主人公の人間不信気味な性格が明確に描かれており、その上で人を助けるために走り回り飛び出せる性格が好印象です。前編で来歴が説明されているので一人称の煩悶もすっと頭に入り共感しやすかったです。また同シリーズに登場しているサミュエルの明るさと少しの不気味さ、鬼怒と由良の直情さ、初登場ですが明晰さと熟練を感じさせる卯月など登場人物の性格描写が短い中でも的確でした。陸軍の兵隊達も出番は少しですがほっとする人達で安心できます。
(7行省略されています)


 6話 報告

佐伯美鈴 2023年02月17日(金) 00:33

 読んでいただきありがとうございます。また、本当にご丁寧で詳しいご感想もいただきありがとうございます。
 近頃は何かを一歩進めるたびに自らの何らかの不足と至らなさを感じるという具合ですが、それでもご感想のような反応があることで、少しは歩みを進めていけます。

 キャラクターたちの配置と役回りについては、ほぼ意図したとおりに伝わったのではないか、と少しばかり安堵しています。
 卯月はとても好きな艦娘です。たぶん根はかなり生真面目なのではないかと思っています。

 ディティールについてですが、いくつかの、いちおうの狙いはありました。作品中で伝えきれずにここに書いてしまうのは私自身の力不足のゆえと自覚はしつつ、言い訳じみた駄文ではございますが、恥を承知でいかに書き連ねますと……。
 まず兵隊たちが耳慣れない方言を喋っているのは、物語の対立軸に関係します。
 私はストーリーを考えるときに「対立軸」を中心にしていきます。「袖ヶ浜鎮守府」については、全体では物語の前半後半で「喪失⇔再生」「圧迫⇔解放」の対立軸を配置してストーリーが進展していきます。
 そして部分においても、前回のサミュエルの「見る⇔見ない」のように、「水がある場所ではうまくいく⇔水が無い場所では悪いことが起こる」に加え「言葉は通じるのに心が通わない大本営の幕僚たち⇔言葉は通じないのに心が通うトラックの兵隊たち」という対立軸が配置されています。艦娘たちが若い子たちに不似合いに文学に関心が向いているのも、本質的に人間とは異質な存在であり、距離感があることのメタファーとして配置されています。艦娘と人間との間にも、同じ言語を話して意思を疎通しているように見えながらも、双方の背後に控える文化的・生物的背景に埋めがたい隔絶があるのでしょう。しーちゃんがかつて時津風に感じたような断絶が。
 ただ、完成して再度振り返ってみると、「満つ」と「三つ」はストーリー上最初に思いついた部分なのに作中では全く触れていないことも合わせ、読み手に伝わりにくいのであればやはり他にもっとうまいやりようがあったのではないかと自分なりに思います。あるいは何か不必要に複雑すぎることをやろうとしているのか…いろいろと考えるべき部分がありそうです。
 好きな映画かと言われると自分でも自信がありませんが、シャマラン監督の「サイン」に影響を受けた自覚はあります。前半と後半での「下降⇔上昇」「閉塞⇔解放」の対立に加え、主人公が棄教した牧師であることとタイトルによってのみ示唆される主題、など。

 原作台詞の引用は…やりたいけどうまくいかなかったですね。もうちょっと頑張るか無理しない出し方を考えたいですね。

 以下、少々この先に話になりますが、今回は「壊れて読めない時計」「提督と加賀の『作法』の初めての失敗」「決号作戦」など行く手の不穏さが示唆されています。
 もし海軍に復帰した『しーちゃん』が、倒した深海棲艦から過去の艦娘が再生する可能性を知ったとき、彼女はどう行動するのでしょうか。今話で『しーちゃん』の「引き止め」にすでに2回も失敗している『れーかちゃん』は何を思うのでしょうか。
 私自身少々興味を持って見ていきたい気持ちです。
 次話作感性の折にまた目に留まれば、これに勝る喜びはございません。
 いつも励みになっております。改めて厚くお礼申し上げます。


イブクイック頭痛薬 ID:SMnywsRs 2022年12月31日(土) 16:55

ネタバレと同作者の過去作品を含む感想です。


拝読しました。久しぶりのしーちゃん視点、「夕陽の底、さらに下」の直接的な続編ですね。前作が慌ただしくも賑やか、最後は陰惨なまま締められ非常に後味が悪かっのに対し、今回は平和なカレー屋で主人公が淡々と振り返るという構成が面白い。主観と客観を過去と現在で同一人物が司るのは中々見ない気がします。
話の軸となる言った言わない論の描写が濃密で説得力があります。単なる報連相の食い違いではなく組織がそれぞれ見栄を張り時には嫌がらせ紛いの事もする。無感情な文章で処理されているそれら1つ1つに、現場で何があったかをしーちゃんは身を以て知っている。報告書寄りの文体で主人公の内心を伺わせる書き方は地味ながらも巧みだと思います。

話は導入と概略だけで動きはなく、後編で何が描かれるのかは今のところ不明。2度目のお使いがどういった経緯で出されるのか、しーちゃんがどう絡……(75文字省略されています)


 5話 報告

佐伯美鈴 2023年01月03日(火) 01:09

読んでいただきありがとうございます。また、ご感想もいただきありがとうございます。
このように反応があると拙い出来であってもなんとか形にして世に出してがんばっていこうじゃないかという気持ちになります。
2023年はもう少し前進していきたいです。

今回はかわいらしいカレー屋さんが新たに登場しました。彼女もある目的を持って物語の中に配置されています。
そして、このカレー屋さんはしーちゃんに強い関心を持っています。百合なのか、また別の何かなのか。
それが明らかになるのもうちょっと先になりそうです。

阿武隈を精神的に傷つけたドタバタ劇は史実をもとに、まではいきませんが史実のエキスを取り出して振りまいた感じで意識して作られています。その不条理さ、効率の悪さ、不誠実さに対する怒りが、しーちゃんにも(多少は)あり、かつての当事者として、書き手として、告発者として、様々な立場が混在した形で語っていきます。そして袖ヶ浜鎮守府の司令官は現在の当事者としてこの不条理に行動していくつもりなのでしょう。

せっかく頂いたご感想を糧に後編も仕上げていきたいと思います。
その節はまたお目に留まれば幸いです。
改めてありがとうございます。


カタリコトリ ID:DQG9U9X. 2022年05月06日(金) 19:00

ネタバレ及び同作者の他作品の内容を含む感想です。

新体詩抄や聖書の引用については検索しながら読むこととなりました。
主人公であるサミュエルの内面を掘り下げるために書いた、というのが初読の感想です。一人称である事も含め、このような性格のサミュエルを描写したいという作者の拘りを強く受けました。後書きを読む限りまだまだ描写不足、もっとサミュエルを魅力的に書きたいという気持ちもあるようです。終始キャラクタ造形に重きを置いており、過去作がストーリーを追う事を重視していたように見えるのもあって大分雰囲気が変わったと感じます。

(9行省略されています)


 4話 報告

佐伯美鈴 2022年05月10日(火) 01:26

 読んでいただけてありがとうございます。また丁寧なご感想もいただき大変うれしく思っています。
ここまで深く読んで、またいろいろ感じるところを書いていただけるのは大変に刺激になり又、糧になることだと感じ、力不足を感じつつもまだがんばってみようかなという原動力になっております。

 常々作品は作品の中で完結するべきであって、欄外での解説、説明は書き手の態度として好ましくないと考えているのではありますが、元来の語りたがりの性分もあり、多分に言い訳めいてはいますが、以下少しだけ書き連ねます。

 今回のお話はサミュエルという艦娘の造形をいったん自分の中で整理しようとして出来上がったという部分は元々私も感じておりました。文章も一人称にして口語に近づけ、なるべく軽やかな語り口を目指してみたので、そこがうまくいったかどうかはともかく、変化を感じ取っていただけたのはちょっと嬉しくまた救われる気持ちもあります。ただ、頭の中でサミュエルの元気な声を想像して、ついつい「!」も「?」も多くなってしまったのかもしれません。戦闘描写をほめていただけたのは意外です。自分では苦手と思っていたので。

 ストーリーの流れでは、前々作と前作では、最終的なストーリーが「主人公が艦娘との断絶を認識し、厳かな悲しみに着地する」という図式だったので、「袖ヶ浜~」では前半での艦娘にとっての「喪失/破壊」が後半の「回復/再生」に向かい、そこでは提督と加賀が彼らのやり方(作法)によってトリガーの役割を果たす、という図式があります。
 後半で「見る」描写が増えたこと、前半で「天を仰ぐな」と言っていたサミュエルが後半で丘を見上げることも、前半後半の変化、比較として意図的に入れた部分なので、汲み取っていただけたのは嬉しいです。ただ、もっとうまいやりようがあった気もして…なんとかもうちょっとうまくなりたいものです。

 中盤、後半は、もうひとつふたつエピソードを加えてふくらませればよかったと、毎回の課題です。うーん、次こそは何とかせねば、プロットにもっと手間暇をかけねばですね。冒頭のサムエル前書はサミュエルの冒頭の勇猛さに関係させようと引用したのですが、後から主のストーリーにからめられるエピソード(サミュエルが日本に行くことになった理由)を思いついたりして、やっぱり勢いで書いてはいけませんね。「こっちを向いて」は登場人物ほぼ全員の心の声と思っていただければ。
 引用の仕方も課題ですね、聖書の引用は実はもうひとつストーリーに関するからみがあったのですが、うまく消化できたかなあという感じです。

 なんだか反省部分の話が多くなってしまいましたが、拝見して「ああ、こういうところが伝わるのか」「ここは変えていかねば」など大変参考にもなり刺激にもなるご感想で、大変うれしく思っています。

 また、次回作がお目に触れることがあれば幸いです。
 重ねてお礼申し上げます。



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