【副題】ー魔術の始祖となった不死にして最古の魔術師、騒動上等(トラブルメイカー)な弟子と共に幻想世界を往くー



その世界には、遠い昔より伝わりしある一人の〝賢者〟の伝説があった―――

『見上げる程に大きな躰に、獣の貌を持った白い者。
 神の御業と見紛うべき力を振るい、数多の人民を苦しめり乱世を終わらせた、二つと並ぶ者のいない偉大なる導師あり。

 彼の者は後に多くの弟子を取り、自らの御業を〝技〟として授けり。
 賢者の教えは広く伝わり、やがてその技は〝魔術〟と呼ばれ、人々の生活の支えとなりけり。

 しかし、一人の弟子が禁術を使いしに端を発し、人々はやがて〝力〟を誤った方向を育てり。
 他者の命を軽んじ、海と大地を穢れさせ、再び世を乱す火種となりけり。

 賢者は裏切り者の弟子を屠りこれを止めんとするも、狂い始めた世は最早戻す事能わず、滅びの道を着々と進み始めり。

 故に賢者は姿を消せり。
 自ら滅びを迎える人々を救わず、事態の根源たる自身を封じ人の世より去れり。

 人の世は一度滅び、また初めから始まれり。
 されど〝魔術〟と賢者の存在は残り、人々は神の御業を広めし者として彼の者を末代まで伝え、彼の者は〝創世の賢者〟と呼ばれけり』―――と。

 今でこそ、空想上の偉人として名を知られるその者の事を、人々はよく知らない。
 彼がかつて、異なる世界から紛れ込んできた〝漂流者〟であった事も。
 自分一人が生き延びる為に魔術を編み出した事も。
 禁術を使ったかつての弟子の所為で不老不死となり、今も尚その世界に存在させられ続けている事も。

 今の時代に生きる者は誰も、知らない。
 彼の最後の弟子である、黒猫の少女を除いて―――。


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