伯爵令嬢レギーナ、十九歳で婚約。
婚約者の口癖は「君は後回しでいい」。
最初にすっぽかされた観劇の夜、彼女は決めた。
「待つなら、座って待ちません」
待ち時間には作法がある。
その場でいちばん忙しい人の隣に立ち、手を貸し、困りごとを一つ聞いて、次に来るとき答えを持ってくる。
三年後――二十二歳。
借財の完済が届いた晩の夜会で、婚約は破棄された。
「これで君を待たせる理由も、君に待ってもらう理由もなくなった」
ところが、翌朝から。
彼女の玄関に、招待状が積み上がっていく。
「一番にお知らせしたくて」「一番に袖を通してほしくて」
王都の目抜き通りに、彼女を「後回し」にする者は、一人もいなくなっていた。……当の元婚約者を除いて。
そして王都でただ一人、招待状を持って来ない男がいる。
若き公爵ジークヴァルトは、夕暮れの玄関で言った。
「招待状は、持って参りませんでした。あなたの空いた時間は、あなたのものです」
待たされる側から、選ぶ側へ。
三年かけて待ち時間を作法で埋め続けた彼女は、何の予定もない時間の過ごし方だけを、まだ知らない。
一般和風好き転生者VS曇らせと理不尽と絶望▼ファイ!▼カクヨムにも出します
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