ラインの娘
作者:ほいれんで・くー

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ほりぃー  2021年04月18日(日) 17:50 (Good:0Bad:0) 34話 報告

こんにちは。また、ピエールは一日を繰り返すを拝読しました。いつもの通りこの下は適当な私の感想というよりも主観をまじえた話になりますので。どうぞご容赦ください。

この話を読んでいる途中で笑ってしまいました。内容ではなくて、文章一つ一つに詳細な描写を施して、細かな世界観につながる描写があり、かといって失礼ながら大衆向けというほどにストーリーは平易ではない、というよりは最後まで読んだときに「どう感じるか」を読者に投げかけているように見えました。

なんで笑ったかというと、これを書いているときに勝手な想像ですがくーさんが苦悩して書いたんじゃないかなと思ったためです。細やかさがあるこの作品を描くのは流れるような執筆ではなかったのではないかと想像しました。上記に書いてある通り私の主観での解釈なので違ってもお許しください。
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ほりぃー  2021年02月27日(土) 21:48 (Good:1Bad:0) 33話 報告

こんばんは。最新話をさっそく拝見をしました。

前提としての今回の話を読んでいると思ったのは、ベルファストとかでるしイングランドっぽいなっていうことでした。最終的なあとがきを見るとアイルランドと書いてるので近いけど、惜しいって言ったらアイルランド人にぼこぼこにされるんじゃないかと思ったり。ほかの短編はドイツもしくはフランスを舞台にしていたような気がするので、ある意味新天地でしょうか

デュラハンという存在が出てきて、さらに主人公は魔法を使っているという中世としての物語化と思っていたら、妖精が軍服を着てでてくるということ銃をつかっていたり、ネズミとはいえ騎兵を運用していたりして、なるほど近代と中世の狭間なのだろうなと世界観を想像しました。そして、彼らの世界感がその「地名」の言い表し方から、視覚もしくはその他の5感を基にしたつけたかをしていることに妖精としての視点の面白みが感じられます。
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返信:ほいれんで・くー 2021年02月28日(日) 20:49

ご感想ありがとうございます!

ここ最近はドイツと日本をモチーフにした話を多く書いていたので、今回は思い切って話の舞台を変えてみました。後書きでも書きましたが、以前よりイエイツの本を読んで「アイルランドの妖精の話を書いてみたい」と思っていたので、ついに今回それに着手した形です。実はベルファストという地名は英語読みによるもので、アイルランドの言葉では「ベール・フェイルシュチ」というらしいのですが、それでは読者にそれとなくヒントを与えるという目的が果たせないので、あえて英語読みを採用した次第です。

妖精に関しては、そのデザインについてかなり色々と考えました。彼らを「いかにも妖精チックな妖精」として書くことも考えましたが、しかし、それだとあまり新しさがなく、意外性も薄いように思われたので、思い切って現代風な装いにしてみました。ファンタジーの存在である妖精に強い現実味を帯びた描写を加えることで、いわゆる「異化」という効果を与えることはできないか、という目論見です。それに適うようにするため、当初は、妖精たちが乗っているのもネズミやハリネズミといった小動物ではなく、オートバイや自動車にしようかと考えていましたが、それでは却って妖精らしさが消えてしまうのではないかと思い、描写を変えることに……ここら辺はかなり悩ましいところでした。ちなみに、エーファたち人間世界の技術・文明水準が15~16世紀位を想定しているのに対し、妖精たちのそれは20世紀初頭を念頭に置いています。

エーファの視点については、まさしくおっしゃる通り、死体から離れたところにあります。彼女は死んでおり、その意識は死体のそばに存在していますが、死体の目から世界を見ているわけではありません。いわば彼女は魂となって、自己の死体を第三者的な視点から見ていることになります。それなのに彼女は死体に加えられる様々な接触をおぼろげながら感じることができており、嫌悪感すら覚えています。一見矛盾しているようですが、このある種の落ち着きのなさ、説明のしようのない現象を描くことによって、彼女が体験している超現実的な現実を浮き彫りにさせようという意図が込められているのです。

神の不在という点にも関わりますが、今回書き始めるに当たって最初に留意したのが「この作品はホラー的なものにしよう」ということでした。私は普段、ヒューマンドラマ的なファンタジーは整合性と理由付けを重視し、ホラー的なファンタジーはあえて説明がされていない・明確に説明のつかないもの、として書いています。今回の話は別段ホラーとして書いたわけではありませんが、作劇的にはホラーなんですね。人は、それがどれだけ妥当性を欠いていたとしても、何らかの「説明」をされれば恐怖や不可思議を感じません。ならば、説明を省けばお手軽に、かつ効果的にホラー性を出せるのではないか。まあ、あまりにも突飛だとホラーよりも「なんだこれ」感が強まりますし、リアリティも消えてしまうので、そこらへんのさじ加減が難しいのですが……ちなみに説明はしていませんが、私の中ではいちおう妖精たちの世界についても設定があります。

キーアンについては、これもなかなか書く上で大変なキャラクターでした。因習的な村の中でも一応の「例外的」存在として描かれている彼ですが、その実、彼は例外ではないのです。少し言葉を知っており、少し善意を表出する術を知っているだけで、彼の本質は実のところは「愚昧」です。妖精たちは極悪人としてキーアンを捉えていますが、彼は悪意あっての極悪人ではなく、言うなれば単なるアホなんですね。妖精たちは新聞や雑誌やニュース映画という報道を通じて彼を見ているので、勝手にイメージを膨らませているようです。言葉に関してもそうで、彼は己の言動が己の本質にどうかかわるのかについて、あまりにも無頓着です。そういう点で、彼はかなり現代的な存在となっています。妖精たちとは別のベクトルでの現代的存在です。

エーファの最後の心の移り変わりについてですが、これもまた死体が村に到着し、キーアンが彼女の死体を目の当たりにすることによって、別の方向へ変容していきそうな予感があります。彼女は死んで妖精たちによって運ばれることで、初めて「変化する」という人間的な事態を経験したのです。妖精たちの死や戦いを見ても「悲惨だ」とか「もうやめてくれ」だとか真剣に考えなかったあたり、彼女もまた一筋縄ではいかない、ある種の「魔女的な」性格をしていたと見ることも可能でしょう。ここら辺は自由なご解釈にお任せします。

妖精と死体というモチーフはかなり気に入っているので、今後も何か書くかもしれません。

次回もどうぞお楽しみに!!


OVER52694  2021年02月12日(金) 00:30 (Good:1Bad:0) 32話 報告

魔族少女のリゼンプション読了。
贖罪というテーマと同時に武士道というか、状況のために、無骨で不器用に過ぎる情の交わし合いを魅せて頂きました。
まず父親の戦場に出る前と帰ってきてからの厳しさ、そして処刑される時の心情ですね。
主人公のリツは父がどんな気持ちだったのか全く分からず、それどころか自分が何故あれだけ冷静に事に当たれたのか悩み続けていました。
梨本を通じて、自分と向き合い、彼が言った「友人に斬られるならば惜しくは無い」という台詞と「贖罪の手助けをしてくれ」によって長年悩んでいた父の思いを知る事ができました。
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返信:ほいれんで・くー 2021年02月13日(土) 21:22

ご感想ありがとうございます!

今回は「リデンプション」(贖罪)というウォーキングの最中にふと脳裏をよぎった単語から話を組み立てるという、普段あまりやらないことをやったわけですが、ではその「贖罪」というテーマをどれだけ掘り下げることができるか? これが書き始めるに当たってやはり巨大な問題として浮上したわけです。そこで、書いている本人としても明確に「罪」の意識を覚える、身内殺し・親殺し(しかも意に染まぬ)をまず取り上げてみようと思いました。

実はリツの父親に関しては、当初はかなりの溺愛キャラとして考えていました。作中では「リツが幼い頃は優しかったが、リツが十四歳になった頃から急に厳しくなり、最期に至るまであまり愛情を表面に出さなかった」というキャラになりましたが、初稿の段階だと最後の最後までリツに対して甘い、愛情剥き出しな性格でした。道場が焼けても純粋に彼女と使用人たちの無事を喜び、戦地からは頻繁に便りを送ってくるような、そういう性格です。しかし読み直しているうちに「これではリツが『罪』の意識を抱いてくれない」という風に思い直しました。なにより、父親の言動や行動の裏に隠された本当の感情、意図を読者が作者と一緒になって読み解いていくという楽しみが生まれないんですね、父を優しくしてしまうと。リツ自身が大いに葛藤するためには、父の性格は厳しいものへと変えざるを得ませんでした。結果として、かなりの「コンプレックス」をリツに抱かせることができたのではないかと思います。

梨本については、途中何度も「このまま能天気なパイロットのまま死なせたい」という気持ちが湧き起りました。死を告げられても従容としてそれを受け入れ、リツに斬られる。それはそれで一つの「人間が本来的に持つ不可解な心情の働き」を表現できるかとも思いましたが、しかしそれではやはり話のメッセージ性(このメッセージ性という言葉はどうにも苦手なのですが)が浅薄なものになってしまう。冒険活劇ならばそれもありだったのかもしれませんが、もともと梨本はリツの心を映し出す鏡として考えていたので、それならばリツと(その方向性は違えど)同じくらいに大いに悩んでもらわなければならない。彼には彼なりの生の苦しみがあり、葛藤を抱えていて、それから解き放たれたいと願っている。リツとの違いと言えば、彼女がそういった望みを生来の生真面目さから内に閉じ込めてしまったのに対し、梨本は(リツというきっかけもあり、状況も状況だったとは言え)自分自身で分析し、自分で自分を解放するまでの道筋を見出すことができた点です。そういった意味では、梨本は明らかにリツよりも「大人」だったのでしょう。

守備隊参謀である叔母ですが、彼女も書いているうちに大いにキャラ付けが変化していった存在です。というより、当初は単にリツの親戚であるというだけの位置づけでした。参謀がリツを呼び出し、処刑についての話を始めるシーンを書いているうちに、作者である私自身が参謀の魅力を見出して、「これはもっと書き加えなければ」と再認識したような形ですね。決して優しい人ではありませんが、しかし彼女なりの「愛」がある。この作品の裏テーマの一つが「想いの形」である以上、参謀の愛という想いの形を書かねばならないのは必然でした。

私自身がリツと共に思い悩みながら書いていったので、最後に彼女が彼女なりの答えを見出して迷いを斬り捨てることができたのを嬉しく思っています。書き上げてから三日間くらいは最後のシーンのリツの心情の流れについて加筆を続けました。最終的に二、三文ほど書き加え、ようやく理想形になったと満足しています。戦時、敵=味方という異常な状況と関係における想い(友情)の形について書くことができたとも思います。まあ、苦労して書いた甲斐があったなぁ……と、今では(次に書くべき短編のことも忘れて)ほっとしている次第です。

私としても今回の作品は大いに得るところがありました。毎回このような感じで作者自身としても成長を実感できる作品ばかり書きたいのですが、まあそういうわけにもなかなかいきませんので、その時々で書きたいものを精一杯書いていくだけですね! その成果を今後も引き続きお披露目したく思います。

次回もどうぞお楽しみに!


ほりぃー  2021年02月07日(日) 23:02 (Good:2Bad:0) 32話 報告

こんばんは、最新話を拝見させていただきました。

今回は「贖罪」をテーマにされた短編ですね。勝手に主人公の少女(17歳が少女かどうかは人に依るでしょうが) を赤い髪で想像してたら、全然そんなことはなかったとかいう変なことをしてました。まあ、目は赤いからセーフでしょう。

今回の珍しさとしては他の短編とは違い、別の文化圏同士の争いではなくておそらくは同じ歴史を共有する国と国の戦争物語ということでしょうか。確かにそのような舞台設定はあまり考えたことはなかったで思考の隙間を疲れた気がしました。
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返信:ほいれんで・くー 2021年02月08日(月) 21:10

ご感想ありがとうございます!

今回の話を書く前に、例によって「さて次はどのような話にしよう」とかなり悩みました。ネタ出しを兼ねて散歩をしている最中に、まず「魔族少女」というキーワードが浮かびました。そもそも「次は女の子を主人公にしたい」という気持ちがあり、では「武士娘」というのはどうだろうと連想し、最終的に「あ、武士娘×魔族少女って良いじゃん」となりました。そして、「魔族少女」という言葉を頭の中で繰り返しているうちに、どういう脳髄の閃きの結果か、なぜか「リデンプション」という言葉が浮かんできました。おそらく直前に読んだ本で「リデンプション(贖罪)という言葉はもともとラテン語で『奴隷が自分自身を買い戻す』という意味であり~」という記述を読んでいたせいだと思われます。こういうわけで「魔族少女のリデンプション」というタイトルが決まりました。

いつもは本文を書き終えた後にタイトルを考えるのですが、今回は逆で、思いついたタイトルに沿うようなストーリーを書いていったわけです。32本目にして初めての試みでした。

では、どういった「贖罪」を描こうか? これに関しても最近読んだ本が影響しておりまして、ちょうど数日前に吉村昭の『遠い日の戦争』を読み終えたところでした。終戦の日にB-29搭乗員を処刑した陸軍中尉が、混乱している戦後社会で占領軍からの追及から逃れようと苦闘する話でして、吉村昭一流の文体と濃密な心理描写に魅了されました。そこでまず初めに、「では敵の搭乗員を処刑する話を考えてみよう」となったわけです。

しかし単に搭乗員を処刑し、その罪について考えるだけでは吉村昭の劣化コピーに過ぎません。それに、魔族の少女(十七歳は立派な少女です! 少女!)が軍隊にいて敵を処刑するというのもいかにも唐突な感があります。最初は山の村にいた少女が、復讐の念に駆られて脱出した敵爆撃機の搭乗員を斬り殺してしまい、戦後になっても山の洞窟の中を彷徨うという話を考えたりもしましたが、これではまったく救いのない話になってしまう! 私の信条として、贖罪とは単に自由人として社会へ復帰するためにするものではなく、魂の安息のためになされるべきものだ、というものがありますから、話の最後に「救い」を描くことは絶対条件でした。

ご感想の中で、リツの時間が止まっていたと言っていただきました。まさにその通りです。彼女の時間は父親を斬った時から止まっており、彼女の魂は囚われの身となっていたのです。それを解き放ってあげたい。それは作者としての願いでした。そのために対照的な存在となる梨本を描いたのです。上手く対比させることができていたのか不安でしたが、どうやら上手に書くことができていたようでホッとしています。

リツの魂を解き放ちたいとは思いましたが、最終的には、彼女の魂が解放されるところまで書くのはやめようと考えを改めました。リツがこれからどう生きて行くのか、それは私自身にも分からないところですが、おそらく彼女は力強く生きて行けるのではないでしょうか。私にはそう思えます。

次回もどうぞお楽しみに!


ほりぃー  2021年01月31日(日) 22:17 (Good:2Bad:0) 31話 報告

フォルモサ島への飛行を拝読しました。ありがとうございます。

まず思ったのは敦賀県という過去に実在した県をだされているところから、大「坂」とかいうやはり過去の文字の使い方にくすりとしました。世界観的には我々の世界のとは同じではなく、似た世界で魔力という概念のある世界ということですね。これもほかの作品とつながっていそうな気がします。

さて、内容としてはまずは兄の話から始まり、その後世間からの迫害があったということですが、意外に思ったのは武門の家として誇り高い父が憔悴していたとは主人公に軍人になることを止めて、むしろ世間の風が凪ぐことをおさまるまで待つように諭したことですね。
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返信:ほいれんで・くー 2021年02月08日(月) 20:51

ご感想ありがとうございます!

今回の「フォルモサ島への飛行」ですが、これまでに書いてきた「和風」(といって良いのか作者自身でも分からないところがありますが)ファンタジーの世界観と設定を一部で受け継いでいます。「キヨのメタモルフォシス」や、「父が遺したマドンナ」などですね。今私たちがいる日本とは、言うなれば「一枚だけ異なっている」日本を自分なりに表現してみたい、という創作欲の表れです。どうやら豊臣家が幕府を開き天下を取ったのか、それとも徳川家が敗退したのか、そういう歴史を辿ったようです。

さて内容についてですが、主人公の父親の性格をどのように描くかについては、かなり気を遣いました。劇中で語られることはありませんでしたが、実は父親は戦場にて重傷を負っており、その後遺症のせいで軍務を継続することができず、今は退役軍人として敦賀の家にいたという設定を考えていました。そこら辺を書くと複雑になり過ぎるので、今となっては書かなくて良かったと思うのですが、とにかくそのような過去から、どうやら父親は口では「国家への忠誠と奉公」と言っておきながら、その実、国家というものは全身全霊で忠義を尽くすに値するものでもない、と思っていたようです。子どもの教育や躾においてとかく建前を優先するというのが生真面目な性格の親にはありがちなもので、しかし一方で主人公とその兄は親の言う建前を真剣に信じ込んでしまったようです。以上のことは裏設定のようなものなので、スルーしていただいて一向にかまわないのですが……

主人公の家族関係者以外をアルファベットで表現したのは、当初は「もういちいち名前考えるの面倒だな」という創作者にあるまじき怠慢のなせるものでしたが、書いているうちに「これは却って記憶というものを相対化する上で重要な表現技法になるかもしれない」と思いました。アルファベットでの表記は、一見正確そのものな表現に見えますが、その実なにも表してはいません。単なる記号に過ぎないからです。W軍曹は主人公にとって非常に重要な人物であり、彼を今でもある意味で苦しめている張本人なのですが、その名前すら記号で表現するしかない。そういう矛盾じみた記憶の曖昧さを、アルファベットによって少しでも表現することができていたなら……というのは私の願望でしょうか。

最後に兄についてですが、彼も彼なりに敵国での捕虜生活で色々と考えが変わったのでしょう。捕虜第一号として敵国の尋問に耐え、捕虜の恥辱を甘んじて受け、その後増え続ける同国人捕虜に対してまるで精神的上位者のように振舞う……そんな生活の中で、兄は兄なりのリアリスティックな考え方を身につけたのかもしれません。それは主人公とはまた違った、兄なりの罪と罰の意識にも関わっているでしょう。

次回もどうぞお楽しみに!


OVER52694  2021年01月25日(月) 21:57 (Good:2Bad:0) 31話 報告

フォルモサ島への飛行読了
淡々とした語り口調ながら、世間や直ぐに手の平返しする人々への怒り、そしてそれに翻弄されてしまった自分への自省も感じますね。
彼の家族は色々ありましたが、なんだかんだで兄弟二人生き残り、その後の家族関係も悪くはないだろうと思える所は救いです。
父親も世間の冷たい風に参っていたにせよ、敵に捕まった長男を責めることもなく、主人公にも危険の無い道を選ぶように諭す所を見ると親らしい情のある人だったと思います。

W軍曹はとても格好良く、青空のサムライや永遠のゼロなどを思い出しました。
主人公が見たW軍曹の最後は彼を失った大きな哀しみを慰める為に、無意識に作り上げたものだったのかなと思います。
また三人とも違う証言をしている所を思い返すと、主人公から見たW軍曹は自分の理想像を投影していて、他の人から見た彼の人物像は大分違うものかもしれません。
この話はどちらかというと美談でしたが、戦争というものも色んな角度から見るとそれぞれ違った見え方をする気がします。
生き残った人達が危惧しているのは、その悲惨さより、自分たちが哀しみを乗り越える為に作った武勇や美談が伝わってしまうことだろうとも思いました。

返信:ほいれんで・くー 2021年01月25日(月) 22:50

ご感想ありがとうございます!

この作品を書くきっかけとなったのは、最近のkindkeセールでなんとなく買った某戦記漫画でした。その漫画は非常に良く描かれており、細かな取材に創作的な妙味のある「嘘」が織り交ぜられていて、読んでいて素直に「面白い」と感じました。しかし反面、「どこか物足りない」とも思ったのです。それはおそらく、戦争をモチーフにした話を読んでおきながら「面白い」と感じてしまった自分自身への疑問が、大いに関係しているでしょう。

話を組み立てるに当たって念頭にあったのは、「語りとその虚偽性」、それから「美談が構築される過程」でした。後書きでも書きましたが、チャブリス、シモンズの『錯覚の科学』において、人間はより楽に、より効率的に生きて行くために、独自の認知システムを作り上げていきました。いわゆる認知バイアスというものは、Twitterなどではとかく悪く言われがちですが、その反面「人間が楽に生きて行くために」必要不可欠なものでもあるのです。

私たちが面白いと感じる「美談」は、それを語る当人にとっても美談であるはずです。ではなぜ、その当人は自分の経験を美談として再構築したのか……? その裏には、到底美談にはできないはずの、隠しておきたい、あるいは忘れてしまいたい、別の経験が潜んでいるのではないか? その当人にとって「生きやすく」なるために、美談は作られていくのではないか? そして、そういったことは、戦争や自然災害といった、過度にストレスをかけてくる状況にこそ多く見受けられるはずです。まあ私は心理学者ではないですし、一介の創作者ですので、その仮説を科学的に検証するのではなく、いわば足掛かりとして、この話を構築したわけでございます。

書いている最中、「このままこの話を『W軍曹の自己犠牲という美談のままで』終わらせたいなぁ」という欲望に何回か襲われました。しかし最終的にはその誘惑になんとか打ち克つことができました。単なるW軍曹の美談で終わらせてしまっては、私が面白いと感じたあの戦記漫画となんら変わることがありませんし、それに語り手である主人公の辛さや悩みを無視することになってしまいます。それは創作者として真摯な態度であるとはいえません。

まあW軍曹のカッコよさとか、空戦の話とか、輸送機内の話とか、書いていてかなり楽しかったですけどね、正直なところを申し上げれば! おそらく、美談が作られる過程においては、前述の「生きやすさ」の他に、「語っているうちに楽しくなってきてしまった」というのもあると思います。今回書き終えてそのことを実感しました。次に似たようなテーマで書く時は、この「楽しさ」というものに焦点を当ててみても良いかもしれませんね。

重い話となってしまいましたが、個人的には大いに示唆を得るところのある創作となりました。自分で自分の作品から学ぶというのもおかしな話ですが……お付き合いくださりまことに感謝申し上げます。

次回もどうぞお楽しみに! そろそろ女の子書きたいです!


ほりぃー  2021年01月09日(土) 12:49 (Good:3Bad:0) 28話 報告

こんにちは。南冥のカッサンドラ―を拝読させていただきました。

最初、別の世界の我が国のように思える導入から、そこに魔法をミックスさせた世界観というのはやはりワクワクしますよね。男の子は魔法とか戦車とか好きだから。なんとなく今までの短編の中では同じ世界での出来事としていいものもあるのかな、と感じました。

足柄県などの細かい単語が出てきますが、この単語を入れることによって後ろにある背景を読者に想定と想像をさせる効果がある気がします。要するにこの世界のあの国はどのような歴史を歩んでいるのだろうかということですね。こういう想像をさせる文字を挿入させることは1000字にも勝る効果があると勝手に思っていますね・

中盤は大岡正平の野火を思い起こすような感じでした。個人的に思うのですが、イヨ姉さんと主人公の都のやり取りや、その他の文章を見ていて感じることは、くーさんは「文章から読者がどのような疑問」をもつかを想定して組み立てているような気がします。完全な憶測ですが、そのため物語の中でそれぞれの疑問が完結していくような感覚を持ちました。あと巫女で「イヨ」は卑弥呼の後継者の名前だなぁ、と思っていたらあとがきにありましたねw

最終的に主人公は国に帰ることができたのかもしれませんが、置いてきたもののためにもう一度あそこに行こうとしているということと、戦場において現実から逃げることのできない寂しさというものを感じました。

返信:ほいれんで・くー 2021年01月10日(日) 23:05

ご感想ありがとうございます!

今回の「カッサンドラー」ですが、お察しの通り、これまで私が書いてきた作品と共通の世界観のもとに書かれております。具体的には「キヨのメタモルフォシス」がそれです。他には「涙雨のスコール」も舞台を同じくしています。細部は多少異なりますが……30本近く書いてきた中で、自分の中である程度「書きやすい世界」が固まってきたこともありまして、「カッサンドラー」はそれを思うさま発揮するために書いたという面もございます。個人的にはかなり満足です。

短編という制約がありますので、常に「短い表現で、分かりやすく、しかし奥行きのある表現」をするように心がけています。それはまさに言うは易く行うは難しの典型例なのですが、とにかく「足柄県」などもその苦闘の表れです。読者が持っているであろうイメージに沿いつつも、それを面白い形で「裏切る」ような表現……おそらくそれができるようになれば私が神作家を名乗れるのでしょうが……

ご賢察のとおり、大岡昇平の『野火』は今作のイメージの源泉の一つとなっています。他にイメージの元となったのは吉村昭の短編「珊瑚礁」ですね。むしろ「珊瑚礁」のほうが直接的な影響が大きいかもしれません。吉村昭は死体の描き方が抜群に上手い作家でして、密林の中に散らばる死体の描写は大いに参考にさせてもらいました。

おっしゃる通り、私は「読者がどのような疑問を持つか」考えて文章を組み立てています。端的に言えば「どのようなツッコミが来るかを予想して、それに何らかの形で答えること」を旨としているんですね。個人的に、ありとあらゆるお話を読むことの楽しさは一種の「謎解き」だと考えています。作中世界の「謎」に付き合い、それを解き明かしていく。作者と共に謎を追っていくというのは、映像作品ではなかなか体験できない面白さです。

私の短編が果たしてそのような面白さを内包しているのか、それは少し自信がありませんが、とにかくお話の楽しさ面白さの一部が「謎解き」にある以上、その作中でできる限り謎について「種明かし」をしておかねばならないと常々気を付けています。種明かしとはいかないまでも、謎の正体をなんとなく予想できるような筋道は用意しておく。難しいことですが、今後も追求していきたいと思っていることです。

次回もどうぞお楽しみに!


OVER52694  2020年12月20日(日) 23:07 (Good:1Bad:0) 26話 報告

ウォルフの掃除は終わった、読ませて頂きました。
戦争で奪われ続ける一人の少年の話でしたね……
最初に友達を奪われ、次に父親、経済的余裕、教育を受ける機会、母と弟、軍に入って捕虜になり感情すら取られて、体の一部まで失ってしまいました。
しかし読み終わったあと、私は何故か晴れ晴れとした読了感を感じました。
自分でも分からなかったのでもう一度読んでみると、彼が延々と続く友人であったウサギの形をした物を殺す作業から解放された安心があったのだと思います。
もう一つは、見方によっては友達であるウサギがウォルフに押し留めていた感情を返し、家に帰る理由を思い出せてくれたことだったのかもしれないです。
ウォルフは優しい性格でウサギを埋めた時もないていましたし、もしかしたらウサギ地雷が爆発する怪我という罰によって罪悪感から赦しを得た可能性もあります。
恐ろしく確率の低い時限信管を引いて生き残れたのは、運がいいのか悪いのか…
願わくば彼が故郷に帰り、後の人生を穏やかに暮らして欲しいと思います

返信:ほいれんで・くー 2020年12月20日(日) 23:39

ご感想ありがとうございます!

私自身、今作は書いていてかなり辛い思いがしました。おっしゃるとおり、ウォルフは常に奪われ続ける人生でした。生物の教師は教師でありながら生徒の「心を育てる」ことを蔑ろにしてウォルフの友達を奪い、戦争は父と母と弟を奪い、軍隊では悲しむという感情すら彼からは失われました。

ウォルフは地雷ウサギを除去し続けている間、罪悪感を抱いていたのでしょうが、彼自身それを意識していなかったのですね。でなければ生き残れなかったでしょう。そこに現れたアデーレとカールそっくりの地雷ウサギ。

それは一つの契機でもありました。ウォルフが人間的な感情を取り戻し、人として当たり前の「悲しむ」という心を取り戻す機会です。彼はアデーレとカールを殺すことによってようやく軍隊に行く前の普通の少年に戻れたのでしょう。ですが、その代償はあまりにも大きく、彼の肉体は深く傷ついてしまいました。

私としてもウォルフにはその先も生き抜いてもらって、辛い戦後時代の祖国で人生を組み立てて行って欲しいのですが、果たして彼に「生きよう」という強い意志があるかどうか、それが作者としても判然としません。ようやく取り戻した悲しみが彼を押しつぶしてしまう可能性もありますし、それを乗り越えてまた歩み始めることもできるかもしれません。

また、他の方にいただいた感想を読んで感じたのは、軍曹のことです。軍曹もまた、ウォルフとは違った苦しみを抱えた人です。彼は、作中でも仄めかされていましたが、基本的には良い人間です。根っからの軍人ですが、子どもが死んでいく状況に心を痛めています。ウォルフの掃除は終わりましたが、軍曹が国から命じられた「ゲルマニア人の子どもの掃除」という任務は、まだまだ続きます。それこそ、無数のウォルフを殺し続けて……

戦争の狂気、とは簡単に言われますが、ではその戦争の狂気が去った後に何が待っているかといえば、それは決して癒えぬ悲しみとの永劫の戦いなのです。

どうかウォルフと軍曹が悲しみを乗り越えて(あるいは悲しみを受け入れて)その後の世界を生きていけますように……と、書いた私自身が願わざるを得ません。それほど書いていて辛い気持ちでした。やはり戦争を書くのは辛いものですね。

お楽しみくださり、ありがとうございました。次回もどうぞお楽しみに!


みずたま有華  2020年12月19日(土) 18:15 (Good:1Bad:0) 27話 報告

大人が読む童話という印象で、切なく、哀しく、やるせない。でも、それ以上にあたたかく、ハッピーエンドとは何かということを考えさせられた気がします。
素敵なお話でした。ありがとうございます。

返信:ほいれんで・くー 2020年12月19日(土) 18:32

ご感想ありがとうございます!

今回の「シュメッターリング」ですが、前々から温めていた「人語を話す芋虫」というモチーフを形にするために書いたという意味合いが強いです。以前、妄想コンテスト「この仕事を選んだ理由」のための短編を書く時に、別案として「謎の人物に依頼され、奇妙な芋虫を育てる仕事を始めることに。芋虫は次第に植物ではなく肉類を食べるようになり、人間の顔が浮かび上がり、人語を話すようになって……」というプロットを考えていたのですが、どうにもオチをつけづらかったので、とりあえず放置されていました。今作で活かすことができて作者としても安心(?)しております。

「私からあなたへ」というテーマだったので、さてどうやって料理したものかと最初は悩みました。結局、父と子、王と反逆者という関係性を話の根幹に据えてして、傷ついた王子を誰かが癒す話にしよう、と考えました。その誰かをどうするか、となった時に、「じゃあ言葉を話す芋虫にしよう」ということに……芋虫の卵を父王からの贈り物ということにすれば、コンテストの趣旨にも適うかなと。後は会話劇風に書いていけば良かったので、そこら辺での苦労はあまりありませんでした。

モチーフは神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世と、その息子のローマ王ハインリヒです。史実のハインリヒという人は非常に不運な人でして、強烈すぎる個性を持った父皇帝によって運命を狂わされたといっても過言ではありません。彼も結局父親によって殺されたも同然な最期を迎えてしまいました。今回の作品でラストをあのように書いたのは、史実のハインリヒの魂を慰めたいから……というのは少し大仰ですが、個人的に気持ちに整理をつけたいというのはありました。

かなり大急ぎで書いた作品でしたが、お楽しみいただけたようで何より&ホッとしております。これからも精進して参りたいと思います。

次回もどうぞお楽しみに!


ほりぃー  2020年12月16日(水) 21:54 (Good:1Bad:0) 26話 報告

昨日から続けてこんばんはウォルフの掃除は終わったを読了しました。

少年がうさぎとの他愛のないやり取りをする場面から始まり、その後にだんだんとこの世界の「価値観」のようなものが大人の登場によって広がっていく構成ですね。題材については私たちの世界での歴史に近いような運命をたどっていく世界。

彼の家族とのやり取りは物かなしいものでありつつも、彼自身がそれを感じることができないほど追い詰められているように感じました。見落としかもしれませんが、最後まで彼は家族について悲しむことが「できなかった」ように見えました。

偉くかわいい兵器を作ったもんだな。マッドサイエンティストが作ったに違いない、というかこの情景を心の中から生み出すことができたクーさんがすげぇなという気持ちはあります。フランク人の軍曹とか一方的にやられる主人公サイドの物語を見てて思ったのですが、たぶんこの物語の「向こう側」要するに描写されていない、戦争の向こう側では主人公のような境遇のフランクじにゃルーシ人もいたんだろうなぁ、と想像してみたりしました。

子供だけでの地雷処理は残酷でありつつも、この物語はなにを掃除としているのだろうと思っていたところに「これが掃除」と比喩する「仕事」がでてきたのは戦争が狂わせた世界にあっては仕方ない事象なのかもしれません。

それではまた、ありがとうございました

返信:ほいれんで・くー 2020年12月19日(土) 22:08

ご感想ありがとうございます!

今回の「ウォルフの掃除は終わった」ですが、最初は「地雷か、それとも機雷かを掃除する話」としてしか考えていませんでした。前々から終戦後の機雷掃海任務について興味があり(B-29が日本近海を封鎖するために大量に投下した機雷群を、日本は終戦後に日本人の手で掃海しなければなりませんでした。その際大きな犠牲を払っています)、それをファンタジー小説として表現したいと思っていたので、今回のテーマ「お掃除」にかこつけて書いてみようとした次第です。

最初はオチが自分でも思いつかず、「とりあえず主人公の生い立ちだけでも書いてしまおう」と、とにかく書き始めました。すると途中で「ウサギを愛する少年兵が、ウサギ型の地雷を処理しなければならない」という筋が浮かび上がりました。ウサギというか弱い生き物と地雷という無慈悲な殺傷兵器とのギャップが美しい情感を生み出すのではないかという……

実際のところ、ウォルフのいた状況下では、ウォルフのような境遇の少年兵は少なくなかったと思います。度重なる不幸によって、もはや不幸そのものにすら何らの感情も動かなくなってしまった少年たち。ですから、物語の最後はウォルフにとっては不幸そのものではあったのですが、彼がアデーレとカールを通じて「哀しみ」という人間的な感情を取り戻すことができたのは、それはある意味では幸運だったのではないか……とまあそんなことを書いた本人が考えていたりします。

ちなみに最初は「ウサギ型地雷を操るウサ耳美少女と主人公が森で会い、交流を深めて、最後はすべての地雷の動作を止めてもらう」なんてことを考えたりしましたが、最初の500字を書いた段階で天啓が下り、「これはないな」ということになりました。私として、そういう風に話に組み立てなくて良かったと思っています。

私としては戦争そのものを描くよりも、戦争の爪痕を描くことに興味があります。勝った、負けたと騒ぐごく少数の連中の蔭で、無数の声なき人々が悲しみに暮れている。そういう状況をエンタメとして書くのは非常に難しいことですが、それと同じくらいやりがいのある仕事だと感じてもいます。

次回もどうぞお楽しみに!



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