合成繊維ではないからオーパーツにはならないはず……、いや染料があれだな。
オーパーツはOut-Of-Place ARTifactS、すなわち「場違いな遺物」を意味するアイヴァン・テレンス・サンダーソンの造語。
1856年にウィリアム・ヘンリー・パーキンがモーヴを合成して以降合成染料の役割は拡大し続けており、今日の染料のほとんどは合成されたものである。
まあそれが分析できるようになる頃には合成もできるようになっているからいいいか。
少量の有機物質を抽出し、分析するための手法は長い時間をかけて確立されていったが、1920年代のフリードリヒ・エーミヒによる系統化や1940年ごろからの赤外分光、1946年ごろから始まった有機物質を対象としたNMR分析などの時代背景を考えると合成された染料の構造がわかっていなかった時期はそれなりにあったのだ。
「嫌なこと、思い出したりしませんでしたか?」
裏話であるが、ここでケトはキイが「乱暴」された可能性を思いついてこういったフォローをしている。
$\sigma$ とかでもいいですけどさ。
ここでの $\sigma$ は標準偏差のこと。WAIS-IVなどの知能検査を参考に知的障害を判断する目安はおよそIQが70を下回った時であるが、これは $2\sigma$ に相当する。知能が標準分布に従うなら全体のおよそ2.3 %にあたる。
この世界の社会的レジリエンスの高さを感じる。
ここでの社会的レジリエンスは William Neil Adger. Social and Ecological Resilience: Are They Related?. Progress in Human Geography. 2000, vol. 24, no. 3, p. 347-364. で定義されているものを参考にしている。
えっ工学用語を雑に使うなって?
キイの想定しているレジリエンスは材料工学における用語で、歪みとか弾性とでも訳すのが良さそうな語。
ピルスナーとガラス加工技術の話とか
チェコ共和国東部、当時はオーストリア帝国にあったプルゼニという都市で生まれたピルスナーと呼ばれる軟水を用いた下面発酵ビールの世界的な拡大の背景には、その独特の黄金色がチェコで作られたガラスのコップに入れた時に引き立つことが理由としてあるなんて話がある。一応時代と技術的には矛盾はあまりない。キイがちょっと怪しいと言っているのは信頼できる文献を知らないため。
切子に近い細工入りのものだ。
カットグラスがモデル。ヨーロッパではかなり古くから作られていた。
妊娠可能な年齢にある女性は妊娠している可能性を排除するな、という話を昔読んだことを思い出す。
妊婦に使用禁忌の薬であったり、産婦人科の検診であったり、あるいは放射線を扱う分野で言われるようなこと。もちろんプライベートでセンシティブな領域ではあるので、難しいところではある。
一人称はさすがに「僕」から変えたけれども。
忘れている人が多いかもしれないが、実はキイはこの世界に来てしばらくケトを真似て「僕」を使っていた。
ジャミングに対する周波数ホッピングまで到達するのにそう時間はかからないだろう。
周波数を定期的に変えることでノイズや妨害の影響を下げる技術の基礎となる特許の一つは1942年にヘディ・キースラー・マーキー名義の女優のヘディ・ラマーと、前衛音楽などでも知られる作曲家のジョージ・アンタイルによって取られた。
「……情報のやり取りができる速度は、支配権を決定します。古帝国の崩壊理由の一つが、馬の消失であることはご存知ですか?」
拡大した帝国の崩壊理由として、通信速度の限界がしばしば持ち出される。
蚕みたいだな。
カイコガは家畜化されており、退化した翅や移動能力の欠如のせいで自然環境での生存は事実上不可能となっている。そのためヒトが絶滅した場合、カイコガもおそらくその後を追うだろう。
そもそもランダム化比較試験が困難な事象なのだ。
実験科学の分野において複数の条件が混在する中で特定の要因の寄与を調べる方法としてランダム化比較試験は高く評価されているが、一度しか事象が起こらず、かつ介入することができない歴史学の分野への適用は簡単ではない。「準実験」と呼ばれるような研究についての手法はここしばらくで色々と開発されてきており、実験デザインの質も上がってはいるもののまだ問題は多い。
「最後に評価を入れるのは大切ね。それで?」
トヨタ自動車で採用されて有名となったPDCAサイクルや、アメリカ合衆国空軍のジョン・ボイドの提唱したOODAループを参考にした考え方。
ノリは政策研究大学院大学だ。
政策研究大学院大学は埼玉大学大学院政策科学研究科を母体とする国立の大学院大学であり、民主的統治を担う指導者、政策プロフェッショナルの養成を目的としている。また多くの留学生を迎えている。
よし、チャトランガの系譜はこの世界に見当たらなかったが似たような考えはあるか。
チャトランガは古代インドで生まれた盤上遊戯であり、将棋、チェス、中国・タイの
賽戯なら出た目に従えばいいけど、
「賽戯」は作者の独自用語……とはいえ、涅槃経に「波羅賽戯」とあるので一応単語としてはあるらしい。
モデルは総力戦研究所の机上演習。
総力戦研究所は1940年に内閣総理大臣の管理下に設置された調査・研究・教育・訓練機関。ここで行われた若手たちによる20日弱の演習では「数年戦うだけで青国(日本)は国力不足から敗北する」という結果が出たが、別にこんなことはある程度予想されていたし「数年間暴れてとっとと講和もぎ取ろうぜ」という方向で動いていたはず。なお当然数年我慢すれば潰せるのに講和するなんてことはなかったのであるが。
市川新. 日本における社会システム・ゲーミングの創始:総力戦研究所の演練. シミュレーション&ゲーミング. 2020, 30 巻, 1 号, p. 11-22. によれば33名からなる仮想政府に対し39名の審判部と15名の総監部によって机上演習が行われたというから、アイデアを思いつくよりもそれを処理するほうが大変であることがわかる。
例えば地方出身者だったら自分のいた場所に戻って何か助けになるものを作るとかそういうのでも構わない。
アフリカの工学部かどこかで実習として地元でなにかの活動をするといったようなことをニコラス・ネグロポンテが言っていた気がするが、探しても出典が出てこない。誰か知っているヒトがいたら教えてください。
鼻を近づけるとシンナムアルデヒドを中心とした芳香族化合物の香り。
シンナムアルデヒドはシナモンの香りの主成分。
木っぽい味わいもあるし、漬けられていたのかも。
モデルはウイスキーなどの熟成に用いられる木片。
入退出管理のセキュリティコードだって電話番号の……いや、これ以上は流石に秘密保持とかのあれこれに引っかかるし、もうちょっと記憶が怪しくなってきている。
この物語はフィクションであり、実在の警備体制とかとは関係ないです。いやほんとですって。事務室の付箋にadminパスワードが貼ってあったりとかしませんって。
後でパッチテストやらせてくれ。
パッチテストの始まりは1800年代後半にチャールズ・ハリソン・ブラックリーが行った花粉に対するもの。おそらく最初の被験者は自分。
あとプレファブ工法とかを導入すれば建築は楽になるのかもしれないが
「プレハブ」ではなく「プレファブ」としているのは学術用語集に則っているため。
ヴィタミンでも売るか……
理研栄養薬品株式会社が販売していた理研ヴィタミンを踏まえたもの。理化学研究所は予算をこういったところからも手に入れていたので研究者が予算をあまり気にせず結構好き勝手に研究ができた時期があった。
ヨシップ・ブローズはあれ延命に近いけどさ。
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国第二代大統領ヨシップ・ブローズ・ティトーのこと。もともと民族問題でバラバラになりそうだったところをカリスマと本人の民族的背景と秘密結社を使った民族主義弾圧でどうにか先延ばしにしていたが、彼の死後紛争が勃発した。
というか学振が私につぎ込んだ分を私が払う税金で回収するというプランは崩壊しているわけで。
学振は日本学術振興会の略。ここのやっている大学院博士課程在学者を対象とした特別研究員制度があり、キイはDC1を取っていた。