特異災害対策機動二課にSCP財団が協力するみたいな話。
No神拳
No絶唱
SCP-710-JP-J 財団神拳 by Kwana
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SCP-014-JP-J 『奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン』by tokage-otoko
http://ja.scp-wiki.net/scp-014-jp-j
「よく来てもらったね、エージェント・立花。突然だが君はクビだ」
「……はい?」
SCP財団日本支部、サイト-81██の一室。そこに、瞬時に繰り出された重みのある言葉に打ちひしがれ、呆然と立ち尽くすことしかできない女性がいた。
「君の処遇は既に決定している。ついてはメールに添付してある書類を参照したまえ。以上」
エージェント・立花。本名、立花育子。
彼女に余りにも唐突が過ぎる、試合開始直後の、圧倒的なまでの顔面飛び蹴りが襲い掛かった。
部屋にはスーツに身を包む姿の彼が座る、重厚な趣を感じさせるデスクとそれに応対するためのソファ以外何も置かれていない。目の前に居る彼はおもむろに立ち上がり、背後の窓の外を眺めてみる。
「待、待ってください!私は規律違反などしていません、クリアランスも厳重に守っています!そんな私がクソ遠いここに来て、ドアを開けてその開口一番、懲戒解雇ですか!?」
ノックからドアを開けてみれば、これだ。流石に面食らう。
彼──白状すれば名前を知らない──のセキュリティクラスは恐らくというか確実に私よりも上。つまり上司。
でも、言われなきデマがあるのなら、修正しなければならない。知らずにやってしまった過ちがあるのなら、知らなければならない。兎にも角にも、真意を知りたい、その一心で目の前の男に捲し立てる。
「フフ、名前だけ有名なコスプレ漫画みたいだね」
「茶化さないでください、これは私の人生の一進一退がかかっているんです!せめて、なぜその結論に至ったのかの最低限の説明はしていただけますか!?」
飽くなき未知の理不尽を解明せんとす精神を持つからこそ、SCP財団の職員なのだ。ここだけは譲れないし、譲ってしまえばそれはきっと未来の自分がしっぺ返しを食らうということ。そんなこと、若輩の私でも幾度となく辛酸を舐めさせられたんだ、十分に分かっているつもりだ。
「君、息が荒いぞ。分かった、嘘だ。説明しよう、君がはいそうですかと言われて出ていかれては私が困る。ベークルを持ってくる。そこのソファでくつろいでいてくれたまえ」
「はぁ……とんだアイスブレイクですよ」
どうやら彼はそこまでタイムパフォーマンスを極度に重視する人間ではなかったようだ、助かった、助かった。
──3分後
ベーグルが数個入っている小さな籠を持って、彼は悠々と部屋に帰ってきた。彼が対面のソファに座ると同時に籠は机に置かれる。彼が一つそれを手にする。私も小腹が減っているんだ、一個手に取って口にする。
「よし、説明を始めようか。君は2年前の事故のことを知っているかね?」
「事故ですか?インシデントでなくて?」
SCP財団は米国に端を発する。その繋がりで、事故のことをインシデントと呼称するのだ。
「事故だ、くれぐれも念押しするが、事故だ。悲劇とも言うがね。で、知っているのかね?」
インシデントでないのなら、SCP財団絡みのトラブルではないのだろう。2年前にあった、念押しされるほどの事故で、かつ悲劇。
「2年前の事故……ツヴァイウイングのライブ事故のことを指しているのなら、はい。存じています」
一つしか思い浮かばなかった。いや、思考より先に、文言が想起された。
忘れる訳がない。忘れるものか、一生分の思い出となるはずの時間が、親愛なる家族が壊れるキッカケとなる時間となってしまっただなんて許されてたまるか。
「うん、その通り。君はその時会場には当然居なかった訳だけれど、君の従妹にあたる子がその時会場にいて、生き残った。彼女の名前は──」
彼はここぞとばかりに首肯する。そうだ、私の従妹であり、同じ苗字を持つ少女。
「──立花響ですね」
親愛なるはずの妹分で、なのにこうも心が締め付けられる少女の名前。
「そうだ、こちらで血縁調査をした。結果の表面だけを見ると、君と立花響とは関係性があると見た。ほぼ同世代、従妹、同性。上辺だけをなぞってみただけの話だが、実態はどうなんだい?」
「確かに、私と彼女にはある程度の関係性があります……ですが、一概に回答しづらいです」
言いたいことが言えない。そんなの、誰だってあるだろう。
「というと?」
「訂正します。拒否します、答えません。過去、私は彼女と関係性を有していた。それ以上、答える権利は私にはありません。彼女と私のクビが何の関連性があるのでしょうか?」
ましてや、あまりにも堪えぬ事情があるのだ。言えないさ。それが命令でも、動ぜずにはいられない。
「うん、そう来ると思っていたよ。だから私が代弁しよう、まず君と立花響は今疎遠というレベルを超えて途絶状態にある」
彼は私の拒絶を聞くと、想定内だったのか忌々しくもご丁寧に話し始める。
「調査によると彼女は明るい性格だそうだね。昔の君そっくりだ。だが、何故途絶せざるを得なくなったか、そりゃまぁ言葉にしづらいね。心中お察ししますというやつだ」
そんなの、私が一番分かっているんだよ。
「……止めてください」
声が漏れる。
「ずいぶんと息が重いね、何せ君の家族と立花響の家族はかなり交流があったそうじゃないか」
事実。私の父親は彼女の父親の兄にあたる。
「……」
何か言おうとするけども、声が出ない。
「だけど、あの事故以後。我々も常日頃から多用しているとはいえ、衆愚は生った。マイナスに一直線にね」
カバーストーリーは原則、SCPに関するトラブルや込み入った事情などが発生した際、大衆に向けて発表し、適応される隠れ蓑。大衆の操作など財団にとってみれば動作もないことだが、そこには民事不介入の大前提がある。当然だ。
「私はあんな家に住む主人公を一人知っているのだけれど、そいつのように彼女は腕っぷしを持っていなかった。つまりは一般人だよ」
「メディアの過熱した過剰にして著色が過分に含まれた報道によって、叩き棒を見つけた大衆は何の罪も無い家族を壊した」
「丸で生きていること自体が罪とでも言うようにね。
人間、誰しも語りたくない
「……止めて下さい」
目を背け続けてきた過去を、目の前の男は執拗に思い出させようとさせてくる。私は力なく答えることしかできなかった。
「始まりはどこだって人を蔑む心さ。当時のネットに挙げられていた写真を見るに、それは恒常化していたようだね。助けなんて無かった」
知ってるよ、知ってしまったんだ。
彼女の家の凄惨たる様を。
「……止めて下さいッ!!」
私は叫ぶ。
時間は全てを解決する。だけれども、それは立花響の家庭を壊して歪ませるのには十分すぎる時間だったんだ。
「悪趣味が過ぎたね、だけど、見るに君の家族はそっち側じゃなくてこっち側だったんじゃないかな?」
「助けの手を差し出すことで安全圏を捨てるだなんてヒーローじゃないんだ、手を差し伸べずに安全圏を保つ至極一般の思考をする大衆の側。それが君の家族だった」
だけど、それは一番しちゃいけなかったことだったのだ。助けるべきだった。
そして、それこそが私の家族が彼女らと交流を閉ざすことになった一番の理由。後ろめたさ、罪悪感。
「……全部お見通しです、か。そうです、私の家族は身内を助けなかった。言い換えれば、見捨てたんです」
SCPなどもはや何も関係ない。
私はもはや投げやり気味にそう答える。もはや、もうこの話題から一瞬でも早く立ち去りたかった。
「うん、ごめんね。だけども、それが君の処遇で君の左遷先なのさ」
「……どういうことです?」
しかし、立ち去ることを運命は許さなかった。男は彼女に対して、あたかもそれこそが贖罪だと言うかのように言う。
「特異災害対策機動二課。そこが君の次の職場さ。君はそこでエージェント兼スパイとして働いてもらう」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
SCP-014-JP-J『奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン』by tokage-otoko
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