帝国との関係を断たれ、衰退しつつある北方の一族。

幼いルカにとって、年上の従姉ゼルダは、母を失った自分に残されたただ一人の心安らぐ存在だった。だが数年後、帝国貴族のもとへ嫁いだゼルダは、心身に深い傷を負い、一族のもとへ戻ってくる。

薬を求め、自らを傷つけ、家から出ることさえできなくなったゼルダ。まだ16歳のルカは、彼女を見捨てることができず、ただ一人でその傍らに立ち続ける。

救う者と、救われる者。

二人きりの閉ざされた生活のなかで、その関係はいつしか、家族という言葉だけでは呼べないものへ変わっていく。

やがて成長したルカに、一族を滅亡へ導いた先代当主カイの面影と、類まれな剣の才能が現れ始める。一族の未来を変えようとする者たちは、ルカを新たな当主として望み始めるが、彼自身はカイと同じ道を歩むことを何より恐れていた。

一方ゼルダは、自分と同じように帝国へ送り出されようとする一人の少女と出会う。

愛する人を自由にしたい。
けれど、同じ犠牲を繰り返す一族を見捨てることもできない。

傷ついた女と、彼女を救うために少年時代を差し出した男。二人が互いを深く愛しながら、異なる未来を選ぶまでを描く物語。