しょっぱい女神と真水の行商人
作者:

オリジナル:ファンタジー/恋愛
タグ:残酷な描写 神話 メソポタミア 人外ヒロイン じれじれ 行商人
空から塩が降るようになって、十二年。
畑は白く死に、井戸はしょっぱくなり、鉄は錆びて朽ちていく。この世界で、塩はお金を払って捨てる「ゴミ」だった。

河口の町ウルカの行商人ナラムは、塩降りの嵐の中で、言い伝えの「振り返り女」の柱が割れるのを目撃する。中から現れたのは、白い髪の娘ティア。
彼女はナラムの手首を嗅いで、こう言った。
「しょっぱくない。いい匂い」

ティアの好物は塩。触れるだけで、井戸の塩も、錆も、死んだ畑の塩も吸い取ってしまう。
ならば、町の嫌われ者の塩を安く買い取って、彼女に食べさせればいい。けちな行商人の思いつきで始まった二人旅は、行く先々の町を少しずつ救っていく。

けれど、「塩を喰らう女」の噂は、やがて天にまで届いてしまう。
母なる竜の昔話。二つに裂かれた母の体。そして、ナラムの中にだけ流れている、しょっぱくない水。

分からないことには、あとで値をつける。
これは、値段をつけられない相手と出会った商人の、神話をめぐる旅の物語。