「私を抱いて」

 ―― そうしたら
 ―― ……もう少しだけ、生きられるから。


 一石宏人は平凡であることを憂いていた。周囲の人間は成功しているのに、同様に努力しているはずの自分は報われない。その気持ちを吐き出すこともできず、ただ逃げたいと思う日々を過ごしていた。

 ある夜、ネオンが花畑のように輝く街中で、蝶のように色気を放って周囲を魅了する、混沌とした黒い瞳の女性に目を奪われた。

 再会は早かった。蛾のように邪険にされ、いじめられている同級生こそがその彼女だったのだ。




ーーー


※カクヨム、ノベマ!にも同作品あります。
X(Twitter)  ▲ページの一番上に飛ぶ