本作は「ヤン・ウェンリーとは何者であったのか?」を主題として、原作中のヤンの言動と、原作記述との整合性を図ろうとする小論文です。
原作中、ヤンの言動には矛盾が多いと感じていました。例えば、戦争を嫌悪し、平和を希求する為人だと強調されながら、バーミリオン星域会戦後、将来の武力蜂起の核として自艦隊の一部を隠匿したり、「ペンは剣よりも強し」を真理だと称揚する反面、皇帝ラインハルト率いる帝国軍と一戦し、その戦果を以て、ラインハルトから譲歩を引き出し、民主共和制を掲げる自治領の設立を構想するなど、民主思想を喧伝する言論活動よりも、直接的な武力行使を選んでいます。
また、これは時代背景を考えるとやむを得ない面もありますが、ヤン艦隊によるイゼルローン要塞の無血攻略は、ご都合主義的でリアリティがないと感じます。星間戦争も可能なほどテクノロジーが発達しているのに、要塞のセキュリティは無いに等しいからです。作中では「どれほど進んだハードウェアでも、それを運用するのは人」と主張されており、それは真理だと思いますが、やはりちぐはぐな印象は否めません。
これらの矛盾(敢えて失礼な表現をすれば「原作設定の不備」)に、筆者なりの整合性を与えたいと考察していった結果、ヤンという人物は温和な好青年などではなく、オーベルシュタイン以上に冷徹で、ルビンスキーやド・ウィリエ以上の謀略家で、自身の政略達成のためなら、あのトリューニヒトと握手する事さえ辞さない、極めつけのマキャベリストとなりました。
これは殊更にヤンを貶めようと意図した訳ではなく、筆者なりにヤンの言動と原作記述との整合性を図ろうとした結果です。原作通りのヤン像を好む方には不快な記述が多数ありますので、本作の閲覧はお勧めしません。敢えて閲覧される場合は、自己責任でお願い致します。
なお、本作では同盟軍内の派閥抗争が大きなウェイトを占めていますが、これは銀英伝二次創作の傑作、甘蜜柑氏の作品「エル・ファシルの逃亡者」から得た着想です。原作世界に対する氏の分析は非常に鋭く、筆者もその見解に多大な影響を受けています。銀英伝ファンで未読の方には是非、一読をお勧め致します。
本作は拙作「ゴールデンバウム朝銀河帝国史」の設定を用いており、本文中の「ミンツ氏の著作(諸著作)」は、原作及び原作記述を指します。らいとすたっふルール2015年改訂版にしたがって作成されています。
原作中、ヤンの言動には矛盾が多いと感じていました。例えば、戦争を嫌悪し、平和を希求する為人だと強調されながら、バーミリオン星域会戦後、将来の武力蜂起の核として自艦隊の一部を隠匿したり、「ペンは剣よりも強し」を真理だと称揚する反面、皇帝ラインハルト率いる帝国軍と一戦し、その戦果を以て、ラインハルトから譲歩を引き出し、民主共和制を掲げる自治領の設立を構想するなど、民主思想を喧伝する言論活動よりも、直接的な武力行使を選んでいます。
また、これは時代背景を考えるとやむを得ない面もありますが、ヤン艦隊によるイゼルローン要塞の無血攻略は、ご都合主義的でリアリティがないと感じます。星間戦争も可能なほどテクノロジーが発達しているのに、要塞のセキュリティは無いに等しいからです。作中では「どれほど進んだハードウェアでも、それを運用するのは人」と主張されており、それは真理だと思いますが、やはりちぐはぐな印象は否めません。
これらの矛盾(敢えて失礼な表現をすれば「原作設定の不備」)に、筆者なりの整合性を与えたいと考察していった結果、ヤンという人物は温和な好青年などではなく、オーベルシュタイン以上に冷徹で、ルビンスキーやド・ウィリエ以上の謀略家で、自身の政略達成のためなら、あのトリューニヒトと握手する事さえ辞さない、極めつけのマキャベリストとなりました。
これは殊更にヤンを貶めようと意図した訳ではなく、筆者なりにヤンの言動と原作記述との整合性を図ろうとした結果です。原作通りのヤン像を好む方には不快な記述が多数ありますので、本作の閲覧はお勧めしません。敢えて閲覧される場合は、自己責任でお願い致します。
なお、本作では同盟軍内の派閥抗争が大きなウェイトを占めていますが、これは銀英伝二次創作の傑作、甘蜜柑氏の作品「エル・ファシルの逃亡者」から得た着想です。原作世界に対する氏の分析は非常に鋭く、筆者もその見解に多大な影響を受けています。銀英伝ファンで未読の方には是非、一読をお勧め致します。
本作は拙作「ゴールデンバウム朝銀河帝国史」の設定を用いており、本文中の「ミンツ氏の著作(諸著作)」は、原作及び原作記述を指します。らいとすたっふルール2015年改訂版にしたがって作成されています。
はじめに | |
第1節 政治権力に庇護されていたヤン・ウェンリー | |
第2節 同盟末期の軍内二大派閥~シトレ派とロボス派 | |
第3節 同盟軍史に見る両派の抗争 | |
第4節 アスターテ星域会戦の影響~同盟軍は敗北、シトレ派は勝利 | |
第5節 トリューニヒトは支持されていなかった?~エドワーズ女史が明かした真実 | |
第6節 帝国領侵攻作戦は何故、実行されたのか? | |
第7節 政治的軍人ドワイト・グリーンヒル~ヤンとフレデリカは「政略結婚」? | |
第8節 帝国領侵攻作戦の「裏面」~シドニー・シトレの陰謀 | |
第9節 国防委員長トリューニヒトは何故、出兵に反対したのか? | |
第10節 議長サンフォードと国防委員長トリューニヒトの密約 | |
第11節 イゼルローン要塞攻略戦①~ブレーメン型軽巡洋艦の謎 | |
第12節 イゼルローン要塞攻略戦②~フォン・ラーケン少佐の謎 | |
第13節 イゼルローン要塞攻略戦③~ブラウンシュヴァイク公爵家の影 | |
第14節 異説・ヤンは冷徹なマキャベリストだった? | |
第15節 ビュコックに求めた命令書の謎 | |
第16節 イゼルローン要塞司令官は「パエッタ・ドーソン」コンビが適任? | |
第17節 ヤンとトリューニヒトの秘密同盟~ヤンがイゼルローン要塞を欲した理由 |