現代の日本。人の暮らしのすぐそばには、昔から変わらず残っているものがある。
 
 高校生の九重陽奈は、古くから続く陰陽師の家に生まれた少女である。家に伝わる不思議な習わしを身近に感じながらも、学校ではごく普通の毎日を過ごしていた。
 そんなある雨の日、陽奈は学校の裏で、誰もいないはずの場所から水の音を聞く。
 そして、どこからともなく聞こえてきた声。

「……返して。」

 その日を境に、陽奈の身の回りで少しずつ奇妙な出来事が起こり始める。
 調べていくうちに見えてきたのは、その土地に残された古い記憶と、そこに込められた人々の祈りだった。

 怪異とは何なのか。
 人はなぜ、それを恐れ、祈り、鎮めてきたのか。
 人の世と、見えないものの境に立つ少女の物語が、静かに始まる。

※カクヨムにて公開中。カクヨム先行