俺の青春ラブコメはこの世界で変わりはじめる。   作:clp

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引き続き、本作未読かつネタバレを避けたい方はここで引き返して下さい。

長くなったのでリンクを設けました。
・原作6.5巻のあらすじに飛ぶ。→127p1
・原作との相違点に飛ぶ。→127p2
・時系列に飛ぶ。→127p3

ここまでの流れを確認したり、途中の章から読む方のお役に立てれば幸いです。
後者を想定して、区切りごとにもリンクを設けました。



ここまでのあらすじ、原作との相違点および時系列(原作6巻~6.5巻)

■ここまでのあらすじ

 

 二学期は初日から慌ただしいことになった。

 早朝から海老名と会って劇の主演を断った八幡は、後任が戸塚と知って頼もしさと罪悪感とを抱いた。

 

 階段の踊り場で遭遇した雪ノ下・由比ヶ浜と公衆の面前で歓談したり。

 運動部と文化部の融和を示すために、始業式で千葉村のレポートが公開されたせいで。

 奉仕部三人の仲が思った以上に良好なこと、そして八幡たちの活躍ぶりは、全校生徒の知るところとなった。

 

 教室で戸部が何くれと話しかけて来たこともあり。

 同級生の関心を一身に集めた八幡は逃げ出したい衝動に駆られ、なり手のない文実委員に立候補する。

 最終的に女子は相模が、そして委員とクラスの橋渡し役を由比ヶ浜が務める形になった。

 一日の終わりに情報を共有することを確認して、八幡は一人教室を後にした。

 

 昼食を終えて会議室に入り、八幡は雪ノ下と再会する。

 

 クラスの出し物から実行委員までJ組の全権を握ったと語る雪ノ下は、体力を危ぶまれて。

 思惑あっての行動で、八幡なら「いずれわかる」と告げた。

 おそらく姉がらみだと推測しながら立候補の意思を問う八幡に、雪ノ下は「委員長になる気はない」と答える。

 話の流れで「大勢で結託して誰かを役職に祭り上げる」ことに嫌悪感を示す二人は、近くで一年生が耳を傾けていることには気付かなかった。

 

 陽乃は三年前には文実を率いて、二年前には肩書きを持たない身で文化祭を大成功に導いた。

 それを城廻から教えられ、雪ノ下も陰からバックアップする方針だなと早合点して。

 名を成すには絶好の機会だと考えた相模が委員長に立候補した。

 八幡を仲介にして、更には奉仕部への依頼という形で支援を願う相模。

 雪ノ下は、相模を役職にふさわしい域まで(スパルタで)育て上げようと考える。

 

 

 だが週明けの月曜、相模は高校を休んだ。

 クラスの話題がそれに集中し注目が逸れたので、安堵していた八幡は。

 由比ヶ浜が対策に追われている姿を見て気を引き締める。

 

 欠席の原因は雪ノ下謹製の文化祭対策マニュアルにあり、本番に弱い性格の相模が電話帳並みの厚さに物怖じして、知恵熱を出したと判明した。

 遊戯部の相模との関係も教えられ、八幡は「不幸体質だな」という印象を抱いた。

 

 情報を共有した後で、せっかく部室に集まったのだからとバンドの打ち合わせを始める三人。

 由比ヶ浜が選曲基準を提案し、八幡が職場見学の際に連想した曲を推薦して。

 昼休みは楽しい話で終わった。

 

 放課後の委員会で、雪ノ下は予定の一日延期を提案した。

 胸の内に責任感を漲らせながら、いざとなれば副委員長に就任すると明言して。

 同じJ組の保健委員に体力を危惧されても、倒れないように協力して欲しいと逆に要請して。

 委員の士気を落とさぬ形で乗り切ることができた。

 

 今日は各自がクラスを手伝うことになった。

 八幡は「演技スキル」の隠れた効果を海老名に教える。

 最低限の貢献はできたと考える八幡は、「過保護」との評を得て苦笑した。

 

 

 火曜には相模も登校した。

 

 奉仕部のバンド練習は順調だったが、由比ヶ浜はそれを葉山たちに話しそびれていた。

 葉山のバンドには一色も参加していること。

 緊張緩和のために、たまには練習を見にきて欲しいと頼まれていること。

 そうした事情を抱える由比ヶ浜を、雪ノ下は「言わないままで済ませたいことは確かにある」と言って慰める。

 まるで翌日の展開を予期していたかのように。

 

 放課後の委員会で雪ノ下は、当面は副委員長に就任するつもりはないと表明した。

 過去の偉人の名を挙げて、成長に意欲を示す雪ノ下の姿を見て。

 たとえ姉を意識しての決意でも、良い方向に進んでいる間は引き留めまいと八幡は考える。

 慣例に従って一年生を募った結果、藤沢が副委員長を引き受けてくれた。

 

 その後の話し合いで、雪ノ下は渉外部門を新設するよう提案する。

 運営との折衝や現実世界に関連する事柄を扱うのが目的だ。

 その責任者にと要請された雪ノ下は、下種な勘ぐりを避けようとする八幡をあえて同じ部門に推薦した上で、「基本は別行動だ」と説明することで邪推を封じる。

 そんな雪ノ下の言葉の裏に、八幡は信頼を感じ取っていた。

 

 

 水曜も放課後までは順調だった。

 

 OB・OG代表として来校した陽乃が実行委員会に参加して、「この世界に巻き込まれた者どうし、協力は惜しまない」との意見が大半だと伝えた。

 だが「隼人は有志に参加するのか」と尋ねた陽乃は、会議室内に漂う疑問を察知する。

 なぜ葉山を下の名前で親しげに呼ぶのか。

 

 それに対して陽乃は、妹への質問で答える。

 すなわち「同じ小学校だったのを内緒にしていたのか」と。

 無邪気に無慈悲に、そう口にした。

 

 幼なじみという情報を、姉があえて伏せていると理解して、雪ノ下は嘘にならない言い回しで場を乗り切った。

 妹が過去を相対化できていると確認して、陽乃は矛を収める。

 手加減をしてなお陽乃が優位にあると確認しあって、姉妹の攻防はひとまず終結した。

 

 委員会が終わってすぐに運営との打ち合わせに向かった雪ノ下とは違って、葉山は同級生に事情説明を求められる。

 そつのない応対で大半の生徒は納得したものの。

 三浦たち三人だけは渋い顔のまま、ひそかに関係各位に向けて女子会の開催を通知した。

 

 余計な事は考えまいと、八幡は黙々と仕事をこなした。

 クラスの情報を聞いて解散する直前に、材木座からメッセージが届く。カラオケのお誘いで、戸塚も来るらしい。

 由比ヶ浜に「元気がなさそうだから気晴らししてくれば」と言われ。

 雪ノ下を助ける約束に加えて「何かあったら相談して」と約束を重ねて。

 二人はカラオケと女子会に向かった。

 

 解散直後に平塚と遭遇した八幡は、感情の不可解さに振り回されながらも。

 奉仕部の二人と一番仲が良いのは俺だと思い込んでいたこと。

 雪ノ下と同じ小学校だった葉山を羨む気持ち。

 クラスでは由比ヶ浜との距離が自分よりも近い葉山を妬む気持ち。

 これらを浄化することができた。

 教師の「自分を見失わないように」という言葉を胸に、待ち合わせ場所へと向かう。

 

 材木座と軽口を叩き合って、奉仕部で自分だけが取り残される怖さをひとまず遠ざけ。

 戸塚には、元気がなさそうに見えた由比ヶ浜にどんな話題を振れば良かったのかを相談して。

 八幡はようやく普段の調子を取り戻す。

 最後に現れた城廻には、結果に目を向ける前にまずは周囲の期待を受け止めること。

 そして、いざとなったら身近な面々を頼ることを教えられた。

 

 同じ頃、比企谷家では女子会が行われていた。

 雪ノ下と葉山は幼なじみで、しかし小学生時の事件から疎遠になった。

 その情報を一同に伝えて、雪ノ下はようやく過去を完全に払拭できた。

 

 雑談の流れから二つの集まりは、くしくも同じ話題に至った。

 陽乃は高三の(今から二年前の)文化祭にどう関与したのか。

 城廻や前生徒会長が率いた生徒会との関係と、奉仕部の設立。

 そして雪ノ下が入学後の経緯を知って。

 この日はともに解散となった。

 

 八幡には今日中に事情を説明しておくべきだと言われた雪ノ下は、由比ヶ浜と小町が見守る中で話を始めた。

 八幡は「昔の話」だと気にしない風を装ったり、嘘告白を経験した話で笑いを取ろうとしたり。

 後者は沈黙を呼んだだけだったが、前者は雪ノ下に、過去に囚われるのは莫迦らしいと認識させた。

 

 今回の騒動を繰り返さないためにも対策が必要だと訴える八幡は、一つの案を口にする。

 雪ノ下なら、陽乃を向こうに回して相互確証破壊を運用できる。

 由比ヶ浜と小町からも了承を得て、来週の方針が決まった。

 

 雑談に入り、八幡は平塚との会話でネタにした作品を演奏候補に推薦した。

 カマクラをあやしながら承諾した雪ノ下が、今日の集まりをバンド練習で締めくくることを提案して。

 

 こうして山あり谷ありの一日がようやく終わった。

 

 

 木曜も由比ヶ浜は朝から走り回っていた。

 六月に予算案に反対した残党が、蠢動を始めたのが原因だ。

 

 高校の文化祭ごときのために、由比ヶ浜や雪ノ下が多大な労力を費やしている。

 見知らぬ連中のためにどうしてここまで、と考える八幡は、その感情が自己投影に由来している可能性に思い至り限度を定める。

 

 あの二人が倒れたり、事態が二人の意に沿わぬ方向に進んだ時には。

 それらを解消することだけに専念しようと八幡は決意した。

 

 雪ノ下だけでなく由比ヶ浜の体調も気遣う八幡に。

 そして自分だけ一歩引こうとする八幡をたしなめる雪ノ下に。

 由比ヶ浜は「何かあったら三人で協力して解決する」と約束させた。

 

 二人の負担を懸念する八幡は「頼るほどでもない時は勝手に解決する」と軽口を叩くも、逆に「八幡の知らぬ間に解決しても大丈夫なのか」「私達の行動を信頼できるのか」と返された。

 由比ヶ浜の誕生日にお膳立てをしたことや、千葉村で「報われない」のを宥められたこと。それらを念頭に置いた雪ノ下の発言を受けて。

 脳裏に「お兄ちゃん」「過保護」といった言葉を思い浮かべながら、八幡は「信頼している」とは言えないまでも、二人を「信頼したい」と口にした。

 

 昼食後に、雪ノ下は過去の葉山とのいきさつを戸塚に説明して。

 その足で生徒会室に向かうと、全校放送で残党の撲滅を果たした。

 

 火曜に雪ノ下が口にした偉人の話が、千葉村での漱石の話に繋がっているのを知って。

 雪ノ下の意図を見通すには、まだ情報が不足しているけれど。

 八幡と由比ヶ浜は奉仕部のこの先の未来を思い浮かべていた。

 

 

 金曜と土曜は大きな問題こそ起きなかったものの。

 由比ヶ浜が身体を休める時間は無かった。

 

 

***

 この続きを本編で読む場合は、こちら。→107話。

***

 

 

 日曜の午後、八幡は「由比ヶ浜が倒れた」と連絡を受けて雪ノ下のマンションを訪れた。

 玄関先で見覚えのあるメイドさんに出迎えられた八幡は、職場見学で指摘された時間配分の問題に、メイドカフェから人を雇って対処したのだと教えられた。

 

 ベッドで横になる由比ヶ浜を交えて話し合いが行われ、八幡はまず組織の問題点を指摘する。

 雪ノ下と由比ヶ浜が抜ければたちまち機能しなくなるのは危ういと。

 その上で、明日は由比ヶ浜を休ませてメイドさんに看病してもらうと語る雪ノ下に、「二人とも休むべきだ」と、「明日が身体を休める最後のチャンスだ」と告げた。

 

 倒れる前に高校をズル休みするのは、性格的に難しいとの返事を得て。

 雪ノ下が失敗する姿は見たくないと強く思った八幡は、由比ヶ浜を頼る。

 理に適った八幡の指摘に由比ヶ浜のお願いが加わると、雪ノ下はあっさり提案を受け入れた。

 

 今後の対策を話し合う中で、八幡が一つ推論を述べる。

 由比ヶ浜には知り合いが多いので、頼み事を断りきれずに疲労が蓄積したのではないかと。

 だが自分にとっては有象無象でも、由比ヶ浜にとっては親しい連中なのだなと思い直した八幡は、先日の自己投影を思い出しながら心配を取り下げた。

 代わりにバンドの演出を打ち合わせて話を終える。

 

 見送ってくれるという由比ヶ浜の支度を廊下で待っていた八幡は、メイドさんの手引きで雪ノ下の部屋に招かれた。

 見覚えのあるぬいぐるみ。

 テニス勝負や千葉村の写真。

 雪ノ下と由比ヶ浜に投影していた感情を払拭した八幡は、文化祭のためにやる気を出そうと考えながら一人家路に就くのだった。

 

 

 二人のいない月曜を、八幡は物思いに耽りながら過ごした。

 半日授業を真面目に受けて、部室で一人昼食を摂りながら。

 二人を助ける動機や、自分が文化祭の準備に勤しむ理由を明確にした。

 

 午後の文実では、相模は会議を主導できず、藤沢も気弱な発言が目立ってきた。

 城廻を待望する声が出始めたせいで、表立ったフォローも難しくなり。

 一方で、気ままな雑談の声は少しずつ増えていった。

 そうした雰囲気を察した相模は雪ノ下の先例に倣って、予定の一日延期を提案する。

 同じく雪ノ下の名前を出して藤沢が待ったをかけたものの、状況は手詰まりだった。

 

 二人が休んでいる間も仕事を進めておきたい八幡は、教室内の空気をぶち壊そうと企てる。

 自分や他人を信じられるように、まずは他人に認められたいと考えていた八幡は、そのルートを捨ててでも今の流れを食い止めるべきだと決意した。

 

 たまたま得た発言の機会を活かして、雪ノ下に頼りっぱなしの現状を真正面から指摘すると。

 罵声を受ける寸前に平塚が場を取りなして、仕事を進めた方が良いと言ってくれて。

 城廻は「各々が良いと思う仕事を」「もし見当違いでも雪ノ下に怒られないようにするから」と言って収拾してくれた。

 

 会議の直後に城廻が話しかけてくれて。

 渉外部門からも爪弾きにあうことなく、八幡は仕事に参加できていた。

 だがそこに、運営から思いがけない話が舞い込む。

 現実世界からの取材のために、一時間後に映像通話を繋げるという通知だった。

 

 大急ぎで渉外の委員を集めて、八幡は対策を進める。

 慣れぬ進行役を務めながら、スローガンの決定や想定問答集の作成などをお願いして。

 意外に好意的な反応に首を傾げつつ、自らは雪ノ下と連絡を取った。

 

 できれば今日は休ませたいと考える八幡は、情報を交換した上で自宅待機を提案する。

 通話を繋げた状態で取材を見守りながら、相模の緊張ぶりを改善できないかと相談していると。

 記者の一人が、文化祭の話はそっちのけで、この世界に閉じ込められた事件について熱弁をふるい始めた。

 

 この世界で過ごしてきた日々を軽く扱うような物言いに、嫌悪感を覚えて。

 同じ環境下にある有象無象の生徒が、記者の演説を聞いて葛藤を覚えないように。

 彼らを見捨てるのは、かつて自分を見下した連中と同じ振る舞いに思えたから。

 

 だから八幡は、記者を撃退して陰鬱な雰囲気をも吹き飛ばしてやろうと考えて、雪ノ下と由比ヶ浜の召喚を決意した。

 

 記者を一方的に論破した雪ノ下は、続けて会議の開催を要請した。

 正式に副委員長に就任して、所信表明を行う。

 

 全員を強調する雪ノ下に向けて、先程の発言で委員の反感を買ったと自覚している八幡は「敵は敵として扱ったほうが効率が良い」と考えて、あえて憎まれ口を叩く。

 だがそれは、雪ノ下の想定通りの行動だった。

 雪ノ下には、八幡の問題行動を覆い隠すつもりはなく。失態は失態として、別の形で挽回するようにと命じた。

 

 失敗を恐れず前を向いて、汚名を返上するのも前向きな行動で。

 その方針を貫くことができれば、たとえ他人からは認められなくとも、自分や他人を信じられるのではないか。

 

 八幡にその気付きを与えた雪ノ下は、最後に。

 この世界に捕らわれた程度では、ハンデにすらならないと断言して。

 過去最高の文化祭を目指すと宣言した。

 

 委員会の解散後には平塚を交えて、八幡の放言を振り返って。

 終わってみれば、全てが良い方向に片付いた一日だった。

 

 

 翌日には雪ノ下の演説が全校に伝わって、校内はいたる所でやる気に満ちていた。

 

 文実では、奉仕部三人の役割分担が固まってきた。

 二人を局所に投入するのではなく、全体を見られる配置にした上で。

 雪ノ下は指針を示し、正攻法で問題を解決する。

 由比ヶ浜は問題を早期に発見して、ほころびが出る前にフォローを行う。

 そして八幡は社畜のように働きつつ、奇策や搦め手で問題を解消する。

 

 火曜は充実した一日になった。

 

 

 水曜には陽乃が再び現れた。

 

 奉仕部の三人に平塚を加えて、万全の態勢で待ち構えていたはずが。

 実際に陽乃の姿を目の当たりにして、更には葉山が飛び入り参加をして。

 全体会議に先がけて関係者のみで行われた話し合いは、冒頭から波乱含みだった。

 

 だが何度となく話を混ぜ返されても、三人は目的に向けて邁進する。

 陽乃から文化祭の邪魔をしないと言質を取ること。

 陽乃が隠し持っている情報を開示させること。

 葉山の存在は三人にとってプラスに働き、徐々に主導権も握れるようになった。

 

 それを見た陽乃は、運営の企みについて話せる範囲でヒントを与え。

 加えて、この世界に巻き込まれた生徒の成績が急上昇したこと。

 そのせいで現実世界の中高生や教師・保護者から注目を集めていること。

 彼らが文化祭に大挙して押し寄せる可能性があることを伝えた。

 

 それでも揺るぎを見せない雪ノ下に、葉山は飛び入り参加の目的を語る。

 相模も含めた全員で、文化祭を成功に導いて欲しいと。

 自分にはそれができないと言わんばかりの葉山の姿勢を、陽乃は「変化の第一歩」と評し、葉山は「第一歩が一番難しい」と答えた。

 

 有能であるがゆえに、身動きができなくなる。

 誰かを見捨てることも、誰か一人を選ぶこともできなくなる。

 それはとても残酷なことだと八幡は思った。

 

 情報を引き出し終えて、あとは陽乃に協力を約束させるだけ。

 陽乃の反論を三人で補い合うようにして退け、雪ノ下は一歩も引かない姿勢を見せる。

 相互確証破壊をしたいのだなと看破した陽乃は、妹の誘いに乗るほうが面白そうだと判断して、ついに合意に至った。

 

 下校時刻が迫る頃に陽乃に話しかけられた八幡は、話し合いでの情報提供や、日頃から妹に構う理由を尋ねてみた。

 雪ノ下を成長させるために敵役を演じているのではないか。

 陽乃に問い返されて、そう答えようとしたところ。

 中途で遮られた八幡は「まだ半分」だと告げられた。

 

 最後に一つ提案をして、陽乃からも賛同を得て。

 八幡は考え得る限りの準備を終えて、文化祭を迎えた。

 

 

***

 この続きを本編で読む場合は、こちら。→111話。

***

 

 

 金曜の早朝に集まった三人は陽乃を招いて、正午に導入が予定されている新機能について相談を交わした。

 発表されたばかりのゲームマスターの論文を読み解いた雪ノ下姉妹は、感覚のごく一部だけを再現する、いわば部分的なログインが可能になると予測した。

 想定していたモニター越しの来校者とはまた別の対応が必要だと確認して。

 陽乃を見送った三人は、文化祭の初日に臨む。

 

 緊張した相模が少しヘマをした程度で、オープニングはつつがなく終わった。

 今日はクラスで仕事なので、八幡は由比ヶ浜と連れ立って教室に移動する。

 そこで同級生と声をそろえて劇の成功を誓い、海老名の脚本に苦笑した。

 

 由比ヶ浜とハニトーを食べて、「自分から行く」という決意を受け取って。

 初日の公演を終えた同級生が遊びに行くのを見送った八幡は、一人受付に座っていた。

 

 そこに、部分的なログインをした中学の同級生が現れる。

 かつて八幡がやらかした時には真っ先に口を挟んできた、カースト下位の連中だ。

 無関心を決め込む八幡だが、相手は以前よりも悪質になっていた。

 文実の腕章を見てわざとらしく驚いたり、聞こえよがしにネチネチ話す連中に辟易していると。

 思いがけず、由比ヶ浜が助けに来てくれた。

 

 それでも連中は由比ヶ浜の言葉尻を捉えて、八幡を悪く言うのを止めない。

 あげく雪ノ下を貶したり、由比ヶ浜の優しさを曲解するのを耳にして。

 こんな連中には何を言っても無駄だと、中学の頃から無言を貫いていた八幡は、初めて。

 連中に向かって「お望み通りに文実は辞めてやるから、他の生徒には手を出すな」と啖呵を切って、一人去って行った。

 

 明日も来ると言い残してログアウトした連中を見届けて、由比ヶ浜は一人うなだれる。

 そこに三浦と海老名が駆け付けて、川崎は八幡の代わりに受付を買って出てくれた。

 由比ヶ浜は顔を上げて雪ノ下と連絡を取り、明日のことを相談する。

 

 事情を聞いて集まってくれた葉山グループに、連中への対策を一任すると。

 まずは文実の仕事の割り振りを相談した上で。

 由比ヶ浜もまた「報われて欲しい」と思っていることを確認した雪ノ下は、校内で八幡の悪評が広がらぬよう、一つの策を練り上げた。

 

 同じ頃、八幡は一色とベストプレイスで顔を合わせていた。

 

 クラスの出し物が喫茶店になったので、一色はお菓子のレシピを提供したものの。

 部分的なログインでは味覚が充分に反映されず、外部の人には不評だった。

 その責任は一色にあると言って話を歪める女性陣と、一色をかばう男性陣。

 二派に分かれて混乱する教室から追い出され、一色は人の少ない場所へと避難した。

 そこで逃げてきた八幡と遭遇した形だ。

 

 誰かに見付かるのをおそれる八幡に、一色は場所の変更を提案する。

 待ち時間を潰すという程度の軽い気持ちだったが、今の八幡にはその扱いが心地よかった。

 人目に付かないように、別々に特別棟へと移動して。

 二人は空中廊下で再会を果たし、途切れることなく会話を続けるのだった。

 

 戸塚が気遣って連絡をくれる前に八幡からお誘いして、材木座を加えた三人で夕食を囲む。

 連中に言いたいことをぶつけた時点で、自分の中では過去の話になっていると。

 それよりも、雪ノ下と由比ヶ浜とは対等な関係を続けたいと語る八幡は。

 三人の上に何かを、例えば理念を置けば、奉仕部を抜きにしても関係が続くかもと考える。

 

 再び連中の話に戻って、ログアウトして逃げられたら厄介だと語る戸塚に、八幡は一つ秘策を授ける。

 明日は表舞台に立たない方が良いと考えた八幡だったが、バンドの代役を頼んだ陽乃から、全てを見透かされた返事をもらって。

 二人と並んで演奏ができると、高揚する気持ちを抑えきれない八幡だった。

 

 

 文化祭は二日目を迎えた。

 

 同じグループの生徒に発破をかけられた相模は、前日の一件で八幡を責める。

 形だけ謝らせれば良いと考えていた相模だが、擁護に動くと思っていた雪ノ下が「八幡を監督下に置いて馬車馬のように働かせ、昨日の連中にも引き合わせる」と言い出した。

 

 予想外の展開についていけない相模は、委員長としての体裁を保つために明確な謝罪の言葉を要求し、八幡は素直に頭を下げた。

 悪くないことで謝るのは八幡にも、そして実情が明らかになれば相模にも益がないのに。

 そう心配する雪ノ下と由比ヶ浜をよそに、朝の会議はそのまま終わった。

 

 部室に移動して、平塚を加えた四人は陽乃の活躍ぶりを話題に出した。

 この世界に捕らわれながらも、現実世界の多彩な面々を巻き込んで文化祭を盛り上げている。

 そんな陽乃に「バンドの代役を却下されて助かった」と語る八幡は、平塚から「バンドは予定通りで大丈夫か」と問われ「予定通りでお願いします」と答えた。

 そのやり取りを見守りながら、雪ノ下と由比ヶ浜は昨日練った策を思い浮かべて。

 二人は目線だけでこっそりと、他の二人には内緒の事柄を確認した。

 

 クラスの出し物に違反がないかを点検しながら、盛り上がる校内を並んで歩く三人は、小町と遭遇したりトロッコの中で密着したりと文化祭を楽しんでいた。

 

 昨日の連中がもうすぐ来ると連絡を受けて、二年F組に移動する。

 対応を任された葉山は、戸部と戸塚を従えて友好的に対話をするつもりが。

 モニター越しに「逃げても無駄だ」と連中を恫喝する、前生徒会長の声が響き渡った。

 見慣れない制服の男子生徒に促され、戸部と戸塚もログアウト対策を披露して。

 それでも葉山は優位な立場を笠に着ることなく、穏当な姿勢で話し合いを進めた。

 

 昨夜戸塚に伝えた秘策と同じ発想に至った戸部の旧友を、八幡は警戒する。

 六月の模試で全国一位だったと雪ノ下が。

 あの制服は都内の有名な進学校だと由比ヶ浜が教えてくれた。

 

 模試の結果は自分が頑張れば何とかなるけど、巡り合わせや縁は一人ではどうにもできない。

 そう語る男子生徒から良い刺激を受けて。

 雪ノ下は「戸部に感謝をする日が来るとは」と真顔で冗談をつぶやき。

 それを取りなす八幡は「自分が頑張る」部分も怠れないなと考える。

 

 話し合いを終えた葉山に呼ばれて、八幡は中学の同級生と向かい合った。

 既に連中のことは眼中にないと。

 加えて、もはやカースト底辺ではないと、無意識に態度で伝えた結果。

 八幡は過去をきれいに清算し終えた。

 

 それをこっそり見届けて、他の出し物に向かう小町と留美。

 対陽乃で共同戦線を張ろうと、前生徒会長と同盟を組んだ雪ノ下。

 そして相模は、状況の変化を察したお仲間から距離を置かれようとしていた。

 見捨てられる前に自分から教室を去った相模は一人屋上に向かう。

 

 相模に代わって文実を率いる雪ノ下と、辞任した八幡の仕事を引き継いでくれた由比ヶ浜。

 二人が動けない以上、相模の捜索に向かえるのは一人だけ。

 八幡は二人に見送られて校内を走り回る。

 

 材木座に助けを求め、一緒にいるという遊戯部にも協力を要請して。

 屋上の鍵が壊れていると川崎に教えてもらい、思わず口に出たお礼の言葉に照れる二人。

 改めて応援の言葉をもらって、八幡は屋上に向かった。

 

 そこで相模を見付けた八幡は、あえて挑発的な言葉を投げかける。

 怒った勢いで相模が動くのを期待したものの、予想以上に打たれ弱い姿を見て困惑する八幡。

 そこに遊戯部の相模が現れた。

 長年の確執のわりには、直接の対話がほとんどなかったと知った八幡は、二人だけで積もる話をさせるために屋上から去った。

 

 話し始めると話題が尽きないもので。

 二人の相模は、ようやく改善の一歩を踏み出した。

 

 合流を果たした奉仕部の三人は、相模の一件をそれぞれに受け止めていた。

 八幡は、結果は偶然に過ぎず、自分は相模を怒らせるしか手がなかったと反省し。

 雪ノ下は、何を言っても、相模の意識を変えさせることはできなかったと反省し。

 由比ヶ浜は、それでも話をするべきだと、積み重ねてきた言葉が大切だと主張し。

 そして三人は、ステージの袖に移動した。

 

 副委員長として、壇上でこの二日間を総括していた雪ノ下は、来訪者への最後のおもてなしと称して奉仕部三人のバンド姿を披露する。

 演奏したのはわずか二曲。それもメドレーという形だったが。

 楽曲の進行に合わせて、三人はそこに様々な想いを込め、色々な気付きを得て。

 管楽器に声と打楽器を重ねて、曲はついに大サビに至った。

 

 職場見学で由比ヶ浜と決別した時のことを思い出す八幡の背後では、三人の姿が順番に、スクリーンに大きく映し出されていた。

 濁った目で気怠そうな雰囲気を醸し出そうとも、演奏に一切の手抜きはない。

 この八幡の姿を全校生徒に伝えるのが、雪ノ下と由比ヶ浜の腹案だった。

 

 演奏を最後まで終えて、大歓声に包まれる中で。

 八幡はマイク越しに、最後におもてなしを受けるべき二人の名前を口にする。

 雪ノ下と由比ヶ浜をねぎらうために。

 八幡の呼びかけに応えて、城廻と陽乃と平塚が壇上に上がる。

 六人によるアンコール演奏は観客を巻き込んで、体育館は興奮の坩堝と化した。

 

 同姓の男子を伴ってステージを眺めていた相模に、戸塚が話しかけた。

 劇の主役をして、他校の生徒と渡り合って、自らの強みを認識できるようになって。

 文化祭を成功させるために、そして八幡の依頼に応えるために。

 戸塚は相模の背中を押して、ステージの上で三人に気持ちを伝えるべきだと促した。

 

 走り去る相模を見送った戸塚と、葉山は会話を交わす。

 戸塚がこうした役割を引き受けてくれれば、別のことに目を向けられる。

 八幡とも雪ノ下とも戸塚とも違う、自分だけの長所を研くことができる。

 葉山もまた、内心で変化の手応えを感じていた。

 

 相模はステージ上でまたもやらかし、しかし思いの丈を告解するその姿からは飾らない剥き出しの感情が伝わってきて、聞く者の心を打った。

 観客の温かい拍手に送られて一同はステージを去り、最後に藤沢が閉会の挨拶をして。

 今年の文化祭が無事に終わった。

 

 八幡は平塚と二人だけで反省会を行って。

 ろくに仕事もせず評価だけを求めていた相模と。

 仕事をしているのに評価やねぎらいを拒絶していた自分を比較して。

 教師の指摘を胸に納めた。

 

 集合場所は別だというのに、図らずも部室で合流した三人は。

 秋の風を感じながら、打ち上げ会場に向けて並んで歩くのだった。

 

 

 全体の打ち上げからは早々に抜けて、親しい面々で再集合して。

 お店を追い出される時間まで、盛り上がり続けた一同だった。

 

 

 文化祭から一週間が過ぎた。

 顧問以外のルートからも依頼を受けるべきかと検討していた雪ノ下は、平塚から「お悩み相談メール」という新たな試みを提案された。

 

 平塚からブライダル会社のイベントに誘われた三人は、文化祭の総括のために部室を訪れていた相模を巻き込んで、婚礼衣装に身を包んだ姿を写真に撮られることになるのだった。

 

 

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 この続きを本編で読む場合は、こちら。→119話。

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6.5

 十月に入り体育祭が迫ってきた。

 

 運営委員長のなり手がない現状を見て、城廻は奉仕部を訪れる。

 会長選挙のことはまだ未定だと念を押した上で、雪ノ下は立候補を表明した。

 

 先のことを尋ねる八幡には、思惑あってのことで「すぐにわかる」と答え。

 相模グループが今なおぎくしゃくしている現状を城廻に伝えて。

 相模と取り巻きの四人を運営委員会に招集することを提案して。

 雪ノ下は、使える人員を総動員する方針を表明した。

 

 三人に組分けを尋ねた城廻は、全員が赤組だと知って。

 四人で優勝を目指して頑張ろうと盛り上がった。

 

 関係者が会議室に集まって、運営委員会が開かれた。

 てきぱきと仕事を割り振る雪ノ下に、城廻が不安を述べる。

 昼に立候補して、放課後には委員長に必要な知識を全て吸収し終えている。

 いくら雪ノ下の理解力が図抜けていても、仕事量として見れば膨大だ。

 無理はさせたくないという城廻の想いを、八幡と由比ヶ浜も共有した。

 

 口には出さなかったものの、城廻には更なる懸念があった。

 責任者である限り、雪ノ下は誰よりも多くの仕事を求めずにはいられない。

 そんなふうに思える瞬間に何度か遭遇して。

 

 短期の運営委員長ならまだしも、長期の会長職は合わないのではないか。

 それよりも、特権を与えて自由に動いてもらうほうが良いのではないか。

 いつしか城廻の心の中に、そんな迷いが生まれていた。

 

 今回の運営委員会で、それを見極める。

 できれば雪ノ下に会長職を引き継いで欲しいと思う城廻は、不安を振り払って前向きな姿勢で一同を鼓舞した。

 

 

 一日空けた水曜日の運営委員会にて。

 海老名と材木座のおかげで、目玉競技は棒倒しとチバセンに決まった。

 

 相模から「うちらは何をすれば」と問われた雪ノ下は、チバセンの衣装のうち、鎧は文実で渉外部門だった面々に、コスプレは相模たちに任せると告げた。

 とはいえ手作りの必要はなく、衣装を着るイベントを行うような会社なら注文も可能ではないか。

 雪ノ下の誘導は露骨だったが、相模は「心当たりがある」と得意げな様子だった。

 

 当日の仕事を割り振る雪ノ下は、相模たちを審判部に配した。

 ここ数年は判定で揉めたことがないので、形だけの役職だ。

 彼女らの不満を抑えるために、葉山と由比ヶ浜を上司に据えて。

 状況を無言で訴えかけて、三浦からも了承を得た。

 

 正論で押しきるだけではなく、根回しや手打ちも身に付けたいと考える雪ノ下だが。

 テニス勝負以来、気安い関係にある三浦に対してすら、事前の根回しができていない。

 不向きなことゆえに何が悪いのかを悟れぬまま、それでも表面的には順調に仕事が進む。

 

 話が一区切りして、葉山が棒倒しを話題にした。

 八幡の演技スキルを警戒して、当日は正々堂々と戦おうと口にする葉山。

 望まれるままに「棒倒しで演技スキルは申請しない」と一筆書いた八幡は、内心では「一泡吹かせてやる」と考えていた。

 

 

 翌日の木曜日。

 相模たちはブライダル会社を訪れ、衣装の見積もりを依頼した。

 

 いつもと違った環境に背中を押されて。

 文化祭から今日までのことを謝ろうと決めていた四人は、相模のヘタレぶりに脱力しつつも、ようやく仲直りを果たした。

 

 

 翌日の金曜日。

 取ってきた見積もりを提出した相模は、形だけではなく最後まで仕事を手伝いたいと申し出た。

 

 謝りたい相手がいると語る相模に、雪ノ下は「彼が困っていたら、全校を敵に回してでも味方になる」ぐらいの意気を見せて欲しいと告げる。

 迷いなく「雪ノ下が敵になっても容赦しない」と宣言する相模に、雪ノ下は獰猛な笑顔で応えるのだった。

 

 

 迎えた体育祭の当日。

 

 目玉競技の二種目を残して、白組は一四五点、赤組は一〇〇点。

 優勝のためには、ただ勝つだけでは届かない。

 棒倒しの勝利に加えて、チバセンで白組の大将騎を全滅させるしかない状況だ。

 

 互いの軍勢を率いて戦術を競う雪ノ下と海老名。

 雪ノ下が手作りディナーを交換条件に一色を三浦と対峙させれば、海老名は川崎をあえて動かして雪ノ下の誤解を誘おうとする。

 

 いつしか戦場は三つに分かれ、紅白の大将騎がぶつかり合っていた。

 雪ノ下が三浦を、城廻が海老名を、そして由比ヶ浜が川崎を討ち取って、チバセンは赤組の完勝で終わった。

 

 棒倒しは開始早々に赤組の奇襲部隊が飛び出した。

 それを囮と見なして八幡から注意を逸らさない葉山だが、仲間割れを装って城山に投げられた材木座が、重力その他を無視して飛んで来た。

 演技スキルが原因と見た葉山は、八幡が設定した条件を解明しようとするが努力およばず。

 材木座の秘剣が炸裂して、白組の棒は倒れた。

 

 赤組の勝利で良いのかと多くが困惑する中で、審判部から駆けつけた相模が「失格」と叫ぶ声がこだまする。

 相模の主張を聞いて物言いを認めた雪ノ下は、審判部の責任者である由比ヶ浜と葉山に当事者の八幡を加え、三人による公開審議を開催した。

 

 由比ヶ浜の進行により、八幡の企みや葉山の意図が明らかになる。

 お互いの主張を雪ノ下が整理したところで、奇襲に加わった七人が、八幡に協力した経緯や意図を話し始めた。

 戸部たちも葉山を擁護する意見を出して。

 関係者の言い分が出揃ったのを見て、葉山は由比ヶ浜に「裁定を任せて欲しい」と告げる。

 

 自らも当事者でありながら、葉山は公平な裁定を下した。

 体育祭は赤組と白組の同時優勝となり、それぞれの功労者が宙を舞う。

 白組はもちろん葉山が、そして赤組は材木座が。

 この展開を予測してさっさと逃げ果せていた八幡は、離れた場所から友人の晴れ舞台を眺める。

 

 ベストプレイスで二人を待とうと考えた八幡だが、先客があった。

 普段とは違った様子の一色と、それでも途切れることなく会話を続けていると。

 語りたいことを語り終えた一色は、八幡の耳元でお礼を告げると去って行った。

 

 続けて奉仕部の三人で、今回の振り返りをして。

 そこに城廻が加わって、四人は月初めの目標を果たせたことを喜び合った。

 

 校舎から大部分の生徒が姿を消した頃、城廻は生徒会室で一人、物思いに耽っていた。

 体育祭は無事に終わったものの、不安は払拭できず新たな人材も現れなかった。

 陽乃が言う通りに、由比ヶ浜を引き抜くべきなのか。

 下校時刻になっても、城廻の悩みは尽きなかった。

 

 

 二日後の金曜日、城廻は選挙管理委員会を立ち上げた。

 

 更に二週間後の金曜日、中間試験を終えた三人が久しぶりに部室に集まった。

 採点作業から逃避してきた平塚が、ブライダル会社の要望を伝える。

 すなわち「コラムにできる量の感想をくれたら費用をタダにする」と。

 

 その翌日、八幡はコラムの下書きに勤しみながら、小町と受験後を見据えた会話を交わしていた。

 

 同じ頃、雪ノ下は由比ヶ浜と一色を迎えて、ディナーを振る舞っていた。

 会長選挙を話題に出すと、当初は「目立たないし、しょぼい」という感想だったが、続けて「やり方次第では面白くできそうだ」と語る一色から才能を感じ取って。

 逆に一色は、八幡を話題に出して二人から情報を引き出して。

 少しずつ仲を深める三人だった。

 

 

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 この続きを本編で読む場合は、こちら。→128話。

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■原作との相違点(各キャラについて登場順に)

 あらすじと重なる情報が多めですが、従前通りの形でまとめておきます。

 完全にオリ展開の部分は省略しました。

 

・比企谷八幡

 奉仕部三人の仲や成果は全校に周知されている。(6巻01話)

 実行委員に立候補した。(6巻01話)

 陽乃対策として相互確証破壊を提案。(6巻08話)

 雪ノ下の私室に侵入済み。(6巻11話)

 川崎への愛の言葉は自覚しています。(6巻18話)

 ブライダル会社のイベントで紋付き袴とタキシード姿に。(6巻幕間=118話)

 体育祭では戸部のツッコミ役として放送に配属。(6.5巻03話)

 二学期の中間試験で、葉山と並んで国語学年二位に。(6.5巻幕間=125話)

 

・比企谷小町

 小学生同伴で文化祭に。(6巻18話)

 

・平塚静

 直近四回の文化祭で三度もベースを弾くことに。(6巻19話)

 

・雪ノ下雪乃

 とある思惑を抱え、クラスの出し物から実行委員までJ組の全権を握った。(6巻02話)

 入学式の直前(事故の直後)に当時の生徒会長と一悶着を起こした。(6巻07話)

 メイドさんを雇って家事を代行させている。(6巻11話)

 ブライダル会社のイベントで引き振袖に。(6巻幕間=118話)

 体育祭の運営委員長に就任。(6.5巻01話)

 

・由比ヶ浜結衣

 クラスと実行委員の橋渡し役に就任。(6巻01話)

 文化祭の一週間前に疲労で倒れる。(6巻11話)

 ブライダル会社のイベントで白無垢姿に。(6巻幕間=118話)

 体育祭では放送と審判部を兼任。(6.5巻03話)

 

・三浦優美子

 チバセンでは己の不利を理解した上で雪ノ下に挑んだ。(6.5巻04話)

 

・海老名姫菜

 チバセンでは白組を戦術面で主導。(6.5巻04話)

 

・葉山隼人

 雪ノ下に劣る自分を受け入れて、違う一歩を踏み出した。(6巻14話)

 八幡や雪ノ下や戸塚とは違った自分だけの長所を研こうと決意。(6巻20話)

 体育祭で放送と審判部を兼任。(6.5巻03話)

 当事者にもかかわらず棒倒しの裁定を下し、誰からも反対されない結末を演出。(6.5巻06話)

 

・城廻めぐり

 二年前に文実副委員長、その秋に生徒会書記に就任。(6巻07話)

 

・材木座義輝

 棒倒しでは囮部隊かと思いきや主役として輝く。(6.5巻05話)

 

・戸塚彩加

 他人に警戒されない性質を長所として活かそうと考え始める。(6巻20話)

 体育祭で現場班を統率。(6.5巻03話)

 

・城山

 体育祭で現場班の統率を補佐。(6.5巻03話)

 棒倒しでは囮部隊として活躍。(6.5巻05話)

 

・一色いろは

 葉山のバンドにキーボードで参加。(6巻04話)

 クラスの喫茶店で出すお菓子を作った。(6巻17話)

 チバセンでは雪ノ下の依頼を受けて三浦と対峙。(6.5巻04話)

 少しだけ過去話あり。(6.5巻幕間=125話)

 

・川崎沙希

 チバセンでは白組最後の大将騎にふさわしい振る舞いを貫いた。(6.5巻04話)

 

・大和と大岡

 一学期に噂を広めた罪悪感を抱え続け、八幡と戸部のためなら動くことを厭わない。(6巻17話)

 体育祭で現場班の統率を補佐。(6.5巻03話)

 棒倒しでは葉山の手足となって最後まで抵抗した。(6.5巻05話)

 

・戸部翔

 色んなところで「海老名さんすげーっしょ」と主張。(6.5巻03話、6.5巻04話)

 棒倒しでは八幡の監視役を務めた。(6.5巻05話)

 

・川崎大志

 バンド演奏は観てたっす。(6巻19話)

 

・J組の保健委員(オリキャラ)

 職場見学の翌日に体調不良の雪ノ下を保健室に押し込める。(3巻03話)

 体調管理を期待されて、雪ノ下と共に文実に参加。(6巻03話)

 棒倒しでは八幡と共に白組本陣に乗り込む。(6.5巻05話)

 

・雪ノ下陽乃

 三年前は文実を率いて、二年前は無役で文化祭を大成功に導いた。(6巻02話、6巻07話)

 高三の秋に奉仕部を設立。(6巻07話)

 家の決まりで外では酒はダメなんでオレンジジュース下さい。(1巻05話,6巻BT)

 由比ヶ浜を引き抜く案を城廻に伝える。(6.5巻06話)

 

・秦野と相模

 相模南とは和解しました。(6巻18話)

 棒倒しでは白組の一年を引き付ける役割を果たす。(6.5巻05話)

 

・鶴見留美

 小町と一緒に文化祭を楽しむ。(6巻18話)

 

・戸部の旧友(オリキャラ)

 小学生の頃、戸部の何気ない誘いかけに自信を貰ったのを皮切りに、最後は生徒会長まで務めた。今は東京の進学校に通っている。(4巻04話)

 戸部から連絡を受けて、文化祭を訪れた。(6巻18話)

 

・留美と同じ班の少女(オリキャラ)

 かつては留美と仲が良かった。留美の為にと口にした言葉が間違っていたと気付き、小町に留美のことを頼んだ。ゲームではトルコ担当。(4巻15話、4巻18話)

 小町に勧められて、こっそり文化祭を見に来た。(6巻19話)

 

・相模南

 委員長就任後の初日に病欠。(6巻02話)

 本番に弱い、不幸体質。(6巻03話)

 遊戯部の相模との過去話あり。取り巻きは四人。(3巻20話、6巻03話、6巻18話)

 ブライダル会社のイベントで色打掛に。(6巻幕間=118話)

 体育祭では審判部に。(6.5巻03話)

 雪ノ下と約束を交わす。(6.5巻03話)

 チバセンで遙・ゆっこと対峙。(6.5巻04話)

 棒倒しの結果に物言いを付ける。(6.5巻05話)

 

・藤沢沙和子

 文実の副委員長に立候補した。(6巻04話)

 雪ノ下への憧れがその理由。(6巻13話)

 

・本牧牧人

 生徒会長の使いとして、雪ノ下に部長会議での仲裁を要請。(3巻06話)

 藤沢と並んで座っていることが多いですね。(6巻04話、6巻13話)

 

・前生徒会長(オリキャラ)

 城廻の前に生徒会長を務め、一年上の陽乃と事あるごとに対立した。雪ノ下の入学後も、奉仕部に依頼が行かないように率先して校内の問題解決に取り組んだ。(6巻07話)

 城廻に召喚されて文化祭の二日目に姿を見せた。(6巻18話)

 

・折本かおり

 あのドラム……レアキャラ発見!(6巻19話)

 

・玉縄

 演奏のクオリティやプレイの質が高くて目をこすって刮目したよ。(6巻19話)

 

・津久井と藤野

 この世界に巻き込まれた直後の混乱期にも、柔道部に残って城山を助けた。(6.5巻05話)

 棒倒しでは囮部隊に加わった。(6.5巻05話)

 

 

*設定その他

 文実の副委員長は一年生が務めるのが慣例。(6巻03話)

 三浦・海老名・由比ヶ浜の支持層やそれへの振る舞いを創作。(6.5巻02話)

 チバセン=材木座の演技スキルが前提の特殊な騎馬戦。大将騎が倒されると鎧が砕けてコスプレ姿が露わになる。生き残った大将騎の数に応じて得点が傾斜配分される。(6.5巻03話)

 体育祭では審判部を設けるのが慣例。(6.5巻03話)

 

 

■時系列

 曜日は、由比ヶ浜の誕生日=月曜日という3巻の設定に合わせています。

 

9/1(土)

 始業式。

 八幡が劇の主役を断る。(6巻01話)

 階段の踊り場で奉仕部三人が歓談。(6巻01話)

 文実委員は相模と八幡、クラスと委員の橋渡し役は由比ヶ浜に決定。(6巻01話)

 相模が文実の実行委員長に就任、奉仕部に協力を依頼。(6巻02話)

 F組の出し物が海老名の劇に決定。(6巻02話)

 

9/2(日)

 相模が雪ノ下謹製の文化祭対策マニュアルを受け取り、翌日病欠。(6巻03話)

 

9/3(月)

 昼休みに三人が部室で打ち合わせ。バンドの選曲も始まる。(6巻03話)

 放課後の委員会で雪ノ下が予定の一日延期を提案し受諾される。(6巻03話)

 八幡が海老名に演技スキルの裏要素を伝授。(6巻03話)

 

9/4(火)

 藤沢が副委員長に就任。(6巻04話)

 雪ノ下と八幡が渉外部門に属することに。(6巻04話)

 

9/5(水)

 陽乃が卒業生代表として実行委員会に出席。同じ小学校発言。(6巻04話)

 葉山の弁明。(6巻05話)

 八幡が材木座・戸塚・城廻とカラオケ。(6巻06話)

 千葉村に行った面々で女子会。(6巻07話)

 雪ノ下と由比ヶ浜が八幡を出迎える。(6巻08話)

 

9/6(木)

 部長会議の反対派が怪気炎を上げる。(6巻09話)

 昼休みに雪ノ下が彼らを瞬殺。(6巻10話)

 

9/9(日)

 由比ヶ浜が倒れ、療養先の雪ノ下マンションを八幡が訪れる。(6巻11話)

 

9/10(月)

 八幡が人という字をテーマに演説。(6巻12話)

 現実世界から取材を受ける。休ませていた雪ノ下と由比ヶ浜を召喚し記者を瞬殺。(6巻13話)

 雪ノ下が副委員長に就任。(6巻13話)

 

9/12(水)

 陽乃が再び来校。(6巻14話)

 

9/14(金)

 文化祭初日。

 早朝に奉仕部三人と陽乃がゲームマスターの論文を精査。(6巻15話)

 八幡が中学の同級生と遭遇。文実を辞任して逃走。(6巻16話)

 八幡が一色と逢い引き。(6巻17話)

 

9/15(土)

 文化祭二日目。

 八幡がトロッコで密着。(6巻18話)

 八幡が中学の同級生との関係を清算。(6巻18話)

 相模が職務放棄で屋上に逃げ、八幡と次いで遊戯部の相模と向き合う。(6巻18話)

 三人と六人がバンド演奏。(6巻19話)

 相模がステージ上で告解。(6巻20話)

 親しい面々を集めエンジェル・ラダーで打ち上げ。(6巻BT)

 

9/21(金)

 お悩み相談メール開始。雪ノ下がうふんくすぐったい朗読。(6巻幕間=118話)

 

9/22(土)

 ブライダル会社のイベントで八幡が両手両足に花。(6巻幕間=118話)

 

9/28(金)

 体育祭運営委員長の立候補締め切り。(6.5巻01話)

 

10/1(月)

 城廻が奉仕部を訪れる。雪ノ下が運営委員長に就任。(6.5巻01話)

 今年度初の運営委員会開催。(6.5巻02話)

 

10/3(水)

 第二回運営委員会。(6.5巻03話)

 

10/4(木)

 相模がブライダル会社に衣装の見積もりを頼む。相模グループの和解。(6.5巻03話)

 

10/5(金)

 相模たちが雪ノ下と約束を交わす。(6.5巻03話)

 

10/10(水)

 体育祭。

 チバセンで赤組が勝利。(6.5巻04話)

 棒倒しで赤組が勝利?(6.5巻05話)

 審判部の裁定により、赤組と白組の同時優勝。(6.5巻06話)

 八幡が一色と密会。(6.5巻06話)

 

10/12(金)

 選挙管理委員会設置、告示。(6.5巻幕間=125話)

 

10/26(金)

 ブライダル会社からコラム提出の要請。(6.5巻幕間=125話)

 次期生徒会役員の立候補受付開始(~11/2)。(6.5巻幕間=125話)

 

10/27(土)

 雪ノ下お手製のディナーを一色と由比ヶ浜が堪能。(6.5巻幕間=125話)

 

 

■この世界特有の設定

 よく使うものを簡単にまとめます。

 前回96話で説明したものは省略しました。

 

・演技スキルの特殊効果(6巻03話、6.5巻05話)

 演技スキル(演技の実力ではなく演技していた時間の総計で判定)が200以上で発動できる。

 事前に運営に申請して許可が下りれば、特定の範囲内にて一定時間、現実離れした動き(例えば演劇の際に、飛んだり消えたり衣装替えしたり)が可能になる。

 設定した条件を満たせば他者にもその動きは可能だが、申請や条件設定は当人に限る。

 運営としては弱者救済を目的としたおまけ要素ぐらいの認識だったが、決して挫けぬ中二病・限りなくリア充に近いぼっち・トップカーストに君臨する腐女子と、同じ高校から三名もの適合者が出たのは予想外だった。




更新が遅れて申し訳ありませんでした。

本話と合わせて、原作1巻~幕間をまとめた25話や、原作2~3巻をまとめた73話、原作4~5巻をまとめた96話も、ご参照を頂ければと思います。


改行後に、過去話の扱いに関してお話があります。
興味のない方はスルーして下さい。

7/31から原作7巻に入る予定です。
ご意見、ご感想、ご指摘などをお待ちしています。


追記。
リンクを修正し、細かな表現を修正しました。(7/28,8/3)
改行の調整、表現の修正を行いました。(8/11)
前書き・後書きを修正し区切りごとにリンクを設けました。(9/3)
6巻は長いので二週目(11話〜)と文化祭当日(15話〜)にもリンクを設け、細かな修正を行いました。(9/12)









 章が変わるごとに微妙に書き方を修正しながら、少しでも読みやすく、同時に正確性を欠く描写にはならないようにと模索してきました。
 けれど今に至ってもなお「これだ」と言えるほどには文体が定まっておらず、上記の方針も満足できる域には到達していないので、章をまたいで描写を統一させることには二の足を踏んできたのですが。

 このたび作品を通しで読み返して、さすがにある程度は手直しを入れるべきだと思いました。
 とはいえ物語の主筋に変更を加えるつもりはなく(それを始めるとエタる未来しか見えないですし、最新話まで読んで下さった方々に失礼だと思うので)、細かな表現上の修正が主です。


 具体的には、今回の修正方針はこんな感じです。

・文の流れを少しでも良くする。ただし、元の文章の雰囲気は可能な限り残す。
 視点の変更を少なく、くどい表現をカット、漢字とひらがなの割合を調整、語順を入れ替える等。

・2巻以降の書き方に合わせて、地の文では八幡と小町以外は姓で統一する(おそらく大志・陽乃・留美も例外になると思います)。

・三浦の「姫菜」呼びを原作通りの「海老名」に修正する(9箇所)。
 二人の距離を縮めようと考えて変更しましたが、名前で呼ばせなくても親しさを表現できると(ようやく)思えたので、原作通りに戻します。混乱させる形になって申し訳ありません。
 数が多いので、これは後書きでもいちいち明言しない予定です。

・文末の「?」「!」を減らして今の書き方に近付ける。

・「……」を減らす。
 ネタバレ回避のために使っている場面では地の文で補足を入れる。

・微妙に矛盾している箇所や、誤解を生みかねない描写を修正する。
 これは該当話の後書きにて、変更内容と理由を明記する予定です。

・1巻4話のみ、新たに書き直したものに差し替える予定。
 単なる手直しよりも時間が掛かる上に、最新話まで読んで下さっている読者さんには全く益のない行為で、書き直しても満足のいくものに仕上がるかは未知数(該当話以外に修正を加えるつもりはないので)ですが、自分で読んでいても居たたまれなかったので……ご理解を頂ければと。

・以前のまとめ回で取り上げてはみたものの、さすがに細かいと思える部分は後書き(かつ改行後)に回す予定です。
 ご指摘を軽く扱うという意図はありませんので、できればご了承を頂ければと。

・前書きと後書きの簡略化。
 前書きで時々掲示していた内容に関する注意書きは削除する予定です。
 頂いた忠告を蔑ろにするつもりは無いので、ご容赦下さい。
 前書きで「文字数が多い」と警告する基準を一万数千字から二万字に変更。
 区切りの良い箇所まで飛べるリンクを作成して前書きに用意する。

・リンクのタグで挟むのを数字のみに変更(2バイト文字を挟むとepubで反映されないため)。
 その結果、例えば「2巻20話」という文字列にリンクを設置する形から、通算の話数となる「45」話に「20」話にリンクを用意する形になります(本話で採用済みの形です)。(9/12変更、幕間・番外編のみ例外)


 一方で、保留するのはこの辺り。

・改行および行開けの抜本的な修正。
 前話や本話のように「行開けをせず改行する」書き方をもう少し模索したいので、今の段階では大幅な修正は施さない予定です。

・数字の表記。
 例えば6.5巻では原作に従って「一五〇」などと書きましたが、これは縦書きのための書き方ですよね。それよりも「百五十」と書いた方が良いのか、それとも半角のアラビア数字で「150」と書くべきか。
 これは正直、結論が出ない予感がします。

・アルファベット一文字の表記。
 これも同種の問題で、例えばクラスの表記をどうするかというお話。
 つまり全角で「F組」と書けば、縦書き表記にしても首を横に向けなくて済むし、こちらの手間も少ない。でも縦書きで読んでいる読者さんがどの程度いるのか判らない上に、上記のリンクの件とは違って読みづらいと言える程ではない。
 そうした理由から、これも保留の予定です。

・作中世界の設定を説明した部分、それと原作通りでも敢えて描写した部分の修正・削除。
 書いた時点では「必要だ」と思って書いたものの、物語が進んだ今となっては「結局は不必要だったな」と結論付けられる描写がいくつかあります。中でも無駄な設定の話は、読者さんに負担を強いて読み進めるのを困難にしかねないだけに、修正したいのはやまやまですが……。
 調整が複数話にまたぐ可能性も多々あり、そこに労力をかけ始めるとやはりエタる未来しか見えないので、ご勘弁を頂ければと思います。


 そんな感じで、7巻を書き進めながら無理のないペースで手を入れる予定です。
 全てを修正し終えてから連載を再開するのが理想で、それが無理なら「せめて3巻まで」とも思いましたが、本話に費やした時間ややる気を考えても実現は難しそうで。
 それよりも平行して作業を行うほうが現実的だと思うので、以上のような計画にしました。


 思っていたよりも長くなってしまいましたが、各話の後書きで変更理由をいちいち書くよりも、一箇所にまとめておきたかったので。
 ここまで読んで頂いてありがとうございました。
 他にも何か気になる点などありましたら、お気軽にご指摘を頂けると助かります。

 では、今後とも本作をよろしくお願いします。

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