彼女に注目した理由を聞かれると、少し困る。

代表候補生だったわけではない。

特別な訓練を受けていたわけでもない。

入学した理由だって――空を飛んでみたかったから。

それだけだった。

けれど、彼女が初めてISを動かすところを見て、私は一つの疑問を持った。

――この子は、どこまで自分で動かしているんだろう。

操縦が上手い、という話ではない。

実際、彼女は失敗する。

教わらなければ知らないことも多いし、新しい技術を覚えるには他の一年生と同じように練習が必要だった。

それなのに、人間とISの境界だけが妙に曖昧に見えた。

だから調べ始めた。

彼女のための実験用専用素体を用意し、飛び方を観察し、記録を取った。

そうすれば、何か一つくらい分かると思っていた。

結果は逆だった。

分からないことが増えた。

人間は、どこまでISを操っているのか。

ISは、どこまで人間を助けているのか。

専用機とは何をもって「専用」なのか。

性能が高いことと、強いことは本当に同じなのか。

そして――私たちは、この機械のことをどこまで知っているのか。

折しもその年、IS学園には世界でただ一人、ISを動かせる男子生徒も入学してきた。

すでに自分の国を背負って飛ぶ者。

初めてISに触れる者。

強さを求める者。

ただ、飛んでみたかった者。

同じ空を飛びながら、彼らとISとの間には、それぞれ違う関係があった。

だから私は、記録しておくことにした。

これは、特別な少女が世界を救う物語ではない。

一人の少女が飛ぶことを覚えていく傍らで、

ISという巨大な技術を手にした人類が、

まだその付き合い方を学んでいた頃の記録である。

――佐伯