一九九九年、夏の北海道。

東京から来た一人の少年は、小樽の運河工藝館で、夕焼けの赤をガラスに閉じ込めようとする少女、ターニャ・リピンスキーと出会う。

澄んでいて、暖かくて、優しい赤。
亡き父が遺した色を追う彼女との時間は、少年にとって偶然の出会いだった。

同じ夏、少年はもう一人の女性と再会する。
航空自衛隊千歳基地・第2航空団司令部広報室に勤務する桜町由子。
バイクで旅をし、カメラを構え、自衛官としての仕事を語る彼女は、明るく、自由で、少しだけ危うい大人の女性に見えた。

だが、その夏の出会いは、ただの恋愛でも、ただの偶然でもなかった。

小樽で起きた過去の事件。
存在を秘匿された防衛庁情報局。
監視される少女。
感情を対人インターフェースとして運用する女。
そして、何も知らないまま二人の工作員に接触していく少年。

同じ赤を見たとき、人は同じものを見ているのか。
夕焼けの赤、血の赤、幸福を呼ぶ赤いスズラン。

これは、恋愛ゲームの夏の裏側で、二人の少女がそれぞれの「本物」を問われる物語。

*pixivにも掲載しています。