[完結]Home is the sailor, home from the sea.   作:Гарри

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 「歴史的補遺」までの注釈を書き足しました。見落とした部分があれば今後も追加の予定です。

(2015.12.28)


 申し訳ありません、活動報告で予め申し上げておりました通り、今週の更新はできませんでした。お詫びと言ってはなんですが、完結後に載せるつもりだった注釈集(「融和」編まで)などをアップしておきます。
 なにとぞご容赦くださいませ。

(2015.12.12)


注釈集など
注釈集


注:注釈集の性質上、当然ながら(現段階での最新話までの)ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Гарри(ガリー)

 英語で言うところのHarryに相当する。PNを何にしようか迷っている時に丁度、「Король и Шут(カローリ・イ・シュート)」(「王と道化」の意)というロシアンロックバンドの『Месть Гарри(ミェースチ・ガリー)』(「ガリーの復讐」)という歌が流れたのでこれに決まった。なおこの歌の最後にはボーカルが搾り出すような声で「Гарри - сволочь(スヴォーラチ)...」(「ガリー、このクソ野郎……」)と言う。作者にぴったり。

 

・Home is the sailor, home from the sea.

 ロバート・ルイス・スティーブンソンによる詩『レクイエム』より。以下原文と私訳

 

UNDER the wide and starry sky

 Dig the grave and let me lie:

Glad did I live and gladly die,

 And I laid me down with a will.

遥かに広がる星空の下

 墓穴(はかあな)を掘って、私を寝かせてくれ

楽しく生きて、楽しく死にゆく

  ここに横たわるのも望んでこそ

 

This be the verse you 'grave for me:

 Here he lies where he long'd to be;

Home is the sailor, home from the sea,

 And the hunter home from the hill.

私の墓にはこう刻んで欲しい

 “この者、願い通りにここに眠る

船乗りは帰ってきた 海を越えて帰ってきた

 そして狩人は丘を越えて帰ってきた”

 

▼   ▼   ▼

 

 

*「艦娘訓練所」編

 

※1 ロバート・ルイス・スティーブンソン

 1850-1894。スコットランド、エディンバラ出身の小説家。『宝島』(1883)『ジキル博士とハイド氏』(1886)で非常に有名。

 

※2 矢野徹

 1923-2004。SF作家、翻訳家。太平洋戦争時には学徒動員により騎兵連隊に所属。階級は軍曹。ハインラインの『宇宙の戦士』(1959)『月は無慈悲な夜の女王』(1966)やフランク・ハーバートによる『デューン』シリーズ(1965-)などの翻訳で知られる。また、上述のスティーブンソンの『ジキル博士とハイド氏』も訳している。

 

※3 「普遍的真実は存在するだろうか?」

 ゲーム『ウィッチャー3』より。面白かったから2買ったら割とつらかった。

 

※4 「今のは敵の巡洋艦がよく使う砲だ。発砲音をしっかりと覚えておけ」

 映画『ハートブレイク・リッジ』(1986)より。もう三十年前か……。

 

※5 『何かが私には有益だが家族には有害であることが分かれば(中略)私はそれを罪悪だと考える』

 フランスの哲学者シャルル・ド・モンテスキューの『随想録』より。断片741番。

 

▼   ▼   ▼

 

 

*「広報部隊」編

 

※6 アルセーニイ・タルコフスキー

 1907-1989。ウクライナの著名な詩人。映画『僕の村は戦場だった』(1962)『惑星ソラリス』(1972)『ストーカー』(1979)で知られるアンドレイ・タルコフスキーの父。なおアルセーニイはアンドレイの幼少期に妻と子を捨てて別の家庭を作ったのだが、アンドレイの映画にはその父の詩がしょっちゅう出てくるらしい(筆者は『ストーカー』しか観てない)。やや切ない。

 

※7 来月も聞くだろうね。再来月も

 ハインラインの『太陽系帝国の危機』(1956)あるいは『ダブル・スター』(邦題が改訳されたもので、中身は同一。原題は“Double Star”)より。

 

※8 五十路を迎えた光の君

 女性初のアカデミー・フランセーズ会員としても有名なフランスの小説家、マルグリット・ユルスナール(1903-1987)の『東方綺譚』に収録されている短編『源氏の君の最後の恋(Le dernier amour du prince Genghi)』より。

 

※9 ポール・ファッセル

 1924-2012。歴史家、社会評論家。ポール・フセルとも。ハーバード出身。第二次大戦でヨーロッパ戦線に従軍。著書に『誰にも書けなかった戦争の現実』(1989)など。

 

※10 前線における兵士の精神状態を次の三段階に分類した。

 ポール・ファッセルの『誰にも書けなかった戦争の現実』より。

 

 

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*「第二特殊戦技研究所」編

 

※11 茫漠たる灰の海が広がり 彼方に波が暴れる

 この民謡のタイトルはРаскинулось море широко(茫漠たる灰の海が広がり)。個人的にはレオニート・ウチョーソフによって歌われたバージョンが最高。Youtubeで“Леонид Утёсов Раскинулось море широко”で検索したら出てくる。

 

※12 「うまいワインだ!」

 ボニー・Mによる名曲『怪僧ラスプーチン』より。歌の最後の方に毒入りワイン(史実では菓子)を渡されたラスプーチンが飲み干したが平気だった、という歌詞がある。ちなみに作中の逸話が元ネタの歌の通りに進むとすると長門はこの後、死ぬまで撃たれる。史実通りならそれプラス簀巻(すま)きにされて川に放り込まれる。そして溺死する。

 

※13 Старая Москва

 「スターラヤ・マスクヴァ」は、ウォッカの銘柄の一つ。モスクワ・クリスタル蒸留所。あっさりとした味わい。日本ではほとんど手に入らないと思われる。

 

※14 Столичная

 「スタリーチナヤ」は、ウォッカの銘柄の一つ。こちらは日本でも容易に手に入れられる。甘みが強く、いわゆるプレミアム・ウォッカ(より高価で、洗練された味のウォッカ)に分類されるものと比べるとアルコール臭がやや目立つ。上記のクリスタル蒸留所も製造に関わっているが、大本はSPI。その説明は次の項に譲る。

 

※15 SPI

 Союзплодимпорт(サユースプロートイーンパルト)の略称СПИをラテン字転写したもの。会社名なので日本語に訳さずそのまま呼ぶのが正しいと見られる。一応追記しておくと、Союз=Union、плод=Fruit、импорт=importに当たる。飲み物だけじゃなくてニシンの缶詰とか売ってるらしい。

 

※16 Казначейская

 「カズナチェイスカヤ」は、SPIの製造・販売するウォッカの一つ。ロシアでもちょっと見つけにくい。バルト三国方面に行けば見つけやすいとの情報。日本で手に入れられる店があったら誰か教えて下さい。昔あるロシア人にグラス半分だけ飲ませて貰ったことがあるんだけどそれ以来国内では何処を探しても見つけられないんです。

 

※17 キャラメルみたいに甘いリキュール

 「バタースコッチキャラメル」というリキュールが実在。デ・カイパー社などから発売されている。ホットミルクに混ぜて飲むとおいしい。

 

※18 僕の矮小な考えなど何らのオーソリティーにも値しない。(中略)滝にでも投げ込んでしまえ

 1903年に華厳滝から身を投げて自殺した学生、藤村操の遺書「巌頭之感」より。以下は部分的抜粋。「ホレーショの哲學(つい)に何等のオーソリチィーを(あたい)するものぞ」。なおこれは「長門」編の注釈でも触れているシェイクスピアの『ハムレット』のセリフを下敷きにしたものだが、藤村は該当セリフを誤訳したことでも有名である。

 

※19 十九世紀に医者が消毒することを覚える

 「消毒」という考えはセンメルヴェイス・イグナーツ・フュレプ(1818-1865)によって最初に提唱された。彼は排斥された挙句、集団(他の医者たち)からの殴打を受けて死亡した。当時「清潔さ」を重要視した人物には他にフローレンス・ナイチンゲールなどがいる。

 

※20 信じる者は救われる

 この言葉にぴったり合う聖書の一節は存在しないと思われる。最も近いものでマルコ福音書第十六章十六節「信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、不信仰の者は罪に定められる。」(口語訳)。幾つかの賛美歌にはぴったり同じフレーズが使われている。

 

※21 フランス人の神と信仰に対する理性的・数学的な判断

 「パスカルの賭け」のこと。神を科学における条件として矮小化したデカルトと違い、パスカルは理性と信仰を両立させた哲学者であった。

 

※22 Вызов принят

 「いいだろう」とルビを振っているが、“Challenge Accepted(その挑戦、受けた).”の方が(同じ表現を使っているということもあって、ニュアンス的にも)より正確な訳となる。

 

※23 頬をぺちぺちしてやってもいいが、榛名さんによれば美容によくないらしい。

 化粧水を肌になじませる時に行うパッティングでさえ、肌を傷つける原因となることがある。正確な理解が必要である。

 

※24 ダリ

 サルヴァドール・ダリ(1904-1989)。スペインの画家。シュールレアリスムの大家。その中で描かれた印象的なモチーフにちなんで「柔らかい時計」とも呼ばれる絵画『記憶の固執』で有名。

 

※25 あれができるのは何もお前だけじゃないんだぞ

 長門編・第五艦隊編への布石。

 

※26 赤線地帯

 1958年に売春防止法が成立するまで日本に存在した、公認で売春が行われていた地域のこと。

 

※27 若きウェルテル

 ゲーテの名作『若きウェルテルの悩み』(1774)より。主人公ウェルテルは人妻への失恋を原因として拳銃自殺をする。なお発表後、ウェルテルを真似て自殺する者が多数現れたという。

 

※28 古代ローマでは、市民権は軍務に就けるものしか得ることができなかった。

 少なくとも、紀元前一世紀にガイウス・マリウスの軍制改革によって市民権の取得条件から兵役義務が免除される前の共和政ローマではそうだった。

 

 

▼   ▼   ▼

 

 

*「“六番”」編

 

※29 ウィリアム・ブレイク

 1757-1827。イギリスの詩人、画家。「古代あの足が(And did those feet in ancient time,)」で有名な預言詩『ミルトン』で知られる。アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』(1956)のタイトルはブレイクの詩に由来する。なお、ここで引用されている詩は『狂気の歌』である。

 

※30 賭け

 事前に日向が歓迎会の為に提督に人数分の外出許可を申請する→その際の会話で提督が会場(店)を聞き出す(有事の際に連絡先が分からないと困るとか理由をつけて)→前もって関係各所(店・憲兵隊・賭けに乗りそうな連中)に連絡→喧嘩発生(本編で描かれているのはここと提督大勝利部分だけ)→憲兵隊、第一艦隊の護送中に提督へ連絡→憲兵隊への賄賂支払い(賭けに乗った連中から奪った参加費から捻出)→提督大勝利

 

 裏でこんな具合になっていました。

 

※31 短髪でボーイッシュな雰囲気のウェイトレス

 書き始めた時はこのウェイトレスは武蔵の仲間である最上の変装、という設定だった。

 

※32 「そうとも、これが私の悪徳さ。(中略)どんなに気分のいいものか!」

 エドモン・ロスタンの名作戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』(1897)より。映画版もある。1990年版がお勧め。

 

※33 「一九六九年以来、そんなスピリットは用意しておりません」

 イーグルスによる名曲『ホテル・カリフォルニア』(1977)より。

 

※34 「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」

 太宰治の名言とされる。

 

※35 憂鬱質

 ヒポクラテスの四体液説(人間の体内を流れる四つの体液のバランスによって病気が引き起こされる、という説)における四気質類型の一つ。黒胆汁が過剰な人間に発露すると考えられていた気質ないし体質を「黒胆汁質」と呼び、「憂鬱質」はその異名である。なお憂鬱質の人間において発露するとされる気質・体質は「非社交的で孤独、血色が悪く、心配性で陰気、独断的、他者を利用する、根に持つ、細かい、慎重、神経質、打算的、欲深い」などであり、ろくなものがない。

 

※36 「朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり」

 現在の浄土真宗本願寺派の礎を築き上げた、本願寺中興の祖、蓮如の書いた手紙(御文、御文章と呼ばれる)の五帖目第十六通「白骨」の章より。人の命の儚さを表した言葉。

 

※37 “Пофигу”を……スラヴ人に言わせれば、金も女も名誉も(中略)ただし酒は別だとか。

 元ネタはあの速水螺旋人も復習に使っているという(ソース:本人のTwitter;2013年2月17日0:35)論文『越境する悪態―ロシア語の被検閲言語、マットの修辞的空間の人類学的考察―』に書かれていたアネクドート。実は酒と女が逆。自分のマット(ロシア語スラング)知識はこの論文+論文の作者からの直接講義で培われた。ありがとう先生。

 

※38 吊るされた男

 タロットの大アルカナに属する一枚。意味は正位置で「忍耐・奉仕・試練」など。一方、逆位置では「徒労・逃避・犠牲」などになる。

 

※39 あの方々は真に我が巌、我がやぐら

 詩篇第十八篇二節「主はわが岩、わが城、わたしを救う者、わが神、わが寄り頼む岩、わが盾、わが救の角、わが高きやぐらです。」(口語訳)より。

 

※40 「あなたは嘘をついておいでだ!」

 アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』より。

 

※41 「車とはタイヤのことなのか? エンジンのことなのか? シートのことなのか? ホイールのことなのか?」

 いわゆる仏教説話の一つである「ミリンダ王の問い」より。もちろん、エンジンやシートといった言葉がそのまま出てきたりはしないが。

 

※42 イェイツ

 ウィリアム・バトラー・イェイツのこと。1865-1939。アイルランドの詩人。秘密結社「黄金の夜明け団(ゴールデンドーン)」のメンバー。

 

※43 誇りある男は/死に直面すれども/それを恐れじ/死とは人の作りしものと/知ればこそなり

 イェイツの詩『Death』より。これは後半で、前半がある。後半の原文は以下の通り。

 

A great man in his pride

Confronting murderous men

Casts derision upon

Supersession of breath;

He knows death to the bone

Man has created death.

 

※44 「我々は生きているんじゃない。生き抜いているんだ。どうだ、そう言ってみると何となく励ましになるだろう?」

 いつのものだか忘れたが筆者がニューヨーク・タイムズだか何処だかの外字新聞で読んだロシアのゴルロヴォ村に関する記事で、村民が語った言葉……をうろ覚えで訳したもの。村民の発言(を英語訳したもの)は以下の通り。

 “We don't live, because you can't call it a life. We survive. But that is so much better than dying and something to be cheerful about.”

 (2002年3月12日発行のJapan Times掲載、Andrei Shukshinによる記事でした。:05032016発見)

 

※45 絶望の内に僕は死ぬ、僕は死ぬ、今ほど命を恋しく思うことはなかった!

 ジャコモ・プッチーニの歌劇『トスカ』において歌われるアリア「星は光りぬ(E lucevan le stelle)」より。

 

※46 I Can't Believe It's Not Butter!

 「これがバターじゃないなんて信じられない!」はアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアに存在したJ.H.フィルバート社が1979年に発売したバターの代用品。現在はJ.H.フィルバート社を買収したイギリスのユニリーバ社が販売している。ディロン・フランシスという歌手によるこの製品を元ネタにした同名の歌もある。

 

※47 “誰でもない”

 ホメロス『オデュッセイア』の第九歌より。主人公オデュッセウスは、彼が目を潰してやった人食い巨人に「私の名は“誰でもない”だ」と名乗る。この後、巨人は仲間である他の巨人たちに「誰に傷つけられたのだ」と聞かれるが、「“誰でもない”!」と答えたせいでオデュッセウスは(巨人たちには)復讐されずに済む。

 

※48 今の僕はクソみたいに怒り狂ってるぞ

 映画『ネットワーク』(1976)より。“I'M AS MAD AS HELL, AND I'M NOT GOING TO TAKE THIS ANYMORE!”

 

※49 消化器についての研究をする為に木の筒の中に肉を入れて飲み込んだイタリア人

 ラザロ・スパランツァーニ(1729-1799)。生物の自然発生説否定にも貢献した。

 

※50 自分で自分の腕の静脈から心臓にカテーテルを挿入したドイツ人

 ヴェルナー・フォルスマン(1904-1979)のこと。危険な実験をしたからという理由で病院を解雇されたが、お陰でノーベル賞を貰った。解雇した病院は現在彼の名を冠しているという。

 

※51 「たまに、数秒間ほど永遠の地獄を見るんだ」

 ヴィクトル・ペレーヴィン『ジェネレーション<P>』より。最近翻訳本が出たが3500円と高かった。でも訳者の人と知り合いなので買った。読んだ。帯に「現代ロシアで最も支持される作家ペレーヴィン」と書いてあるが絶対に信じない。唯一好きなページは134ページ。もし万が一店頭でこの本を見ることがあったらそこだけ立ち読みしたらいいと思う。このセリフの元ネタは86ページ辺り。

 

 

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*「第二艦隊」&「長門」編

 

※52 カトゥルス

 ガイウス・ウァレリウス・カトゥルス。紀元前84年頃-紀元前54年頃。古代ローマの詩人。恋愛詩の分野において著名。ちなみに「第二艦隊」編冒頭では『歌集』第5番からの引用で、後の「長門」編冒頭では第85番から引用されている。

 

※53 浦風

 どうしても出したかったのでちらっと出した。満足している。ただ調子に乗って広島弁(安芸弁)を濃くしすぎたかもしれない。

 

※54 ТЫ

 ロシア語では「ты(ティ)(『君』)」と「вы(ヴィ)(『あなた』)」は意味的にも文法的にも厳密に区別されている。また、親しくない相手に「君」と呼びかけることは、当然ながら失礼に当たる。なお、выは『あなたがた』『君たち』の意味も持ちうる。この点においては英語のYouと似ていると言えよう。

 

※55 そして向かい合い、グラスを持った腕を組み合わせ、そのまま飲み干した。

 ロシア語で“Брудершафт(ブルーデルシャフト)”と呼ばれる儀式。この儀式を遂行することで、二人の人物がより親しい段階に移行する(Вы(ヴィ)関係からТы(ティ)関係へ移行し、互いに「(Ты)」と呼び合えるようになる)。

 その名が示す通りドイツの文化がロシアに流入したもの。飲み干した後には互いにキスをする。その際、キスをする場所は唇が正式であるが、頬でも構わない。なお現代では別段、Ты関係に移行する上でこの儀式は必要ではない。

 

※56 キスには鼻が邪魔になる

 ヘミングウェイの有名な小説『誰がために鐘は鳴る』より。“Where do the noses go? I always wondered where the noses would go.”“Look, turn thy head.”「(キスの時)鼻はどうなるの? 邪魔になるんじゃないかってあたしいっつも思ってたのよ」「ねえ、顔を傾けてごらんよ」

 

※57 僕はこの式の存在、艦娘にとっての死そのものを(中略)焼き捨てたい衝動に駆られた

 備考→主人公に対する一部の艦娘たちの態度

 

※58 この戦争の終わりを見た艦娘は死んだ者たちだけだった。

 ジョージ・サンタヤナ(哲学者;1863ー1952)の『Soliloquies in England and Later Soliloquies.』より。「死者だけが戦争の終わりを見た」(原文は“ Only the dead have seen the end of war”)プラトンの言葉として誤って紹介されることが多い。筆者もごく最近まで勘違いしていた。誰が悪いって多分リドリー・スコットとマッカーサー。

 

※59 月面にマスドライバーを設置し(中略)月の岩を投げつける

 ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』より。なお、ハインラインは1934年に結核を患って除隊するが、それまでに海軍中尉になった。一方兄弟はミズーリ州軍少将まで昇った。

 

※60無償の行為

 利害に関係なく、動機もなく行われる行為。善悪も関係ない。二十世紀におけるフランスの大作家の一人アンドレ・ジッドが彼の作品の一つで主題として取り上げている。

 

※61 この天と地の間にはいわゆる哲学などが思いもしないようなものが存在するのだ

 シェイクスピアの『ハムレット』より。原文は“There are more things in heaven and earth, Horatio, Than are dreamt of in your philosophy.”

 

※62 罰則規定によると、その罪の報いは死だけだ

 ローマ人への手紙第六章二十三節「罪の支払う報酬は死である。」(口語訳) ちなみに、英語で定冠詞付きの“よい本(The Good Book)”はしばしば聖書のことを指す。

 

※63 偽りの太陽

 ロシア映画『太陽に灼かれて』(1994)の主題歌として有名な曲“Утомлённое солнце(疲れた太陽)”の冒頭一節より。

 

※64 ДружбаではなくСлужба

 カタカナで発音を書くと、「友情(Дружба)」は「ドゥルージバ」、「義務(Служба)」は「スルージバ」となって韻を踏む。

 

※65 ヴェルギリウス

 プブリウス・ヴェルギリウス・マロのこと。紀元前70年-紀元前19年。『農耕詩』『アエネーイス』で著名。『神曲』の作者であるダンテ(十三世紀の人物)にも大きな影響を与えた。

 

 

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*「第五艦隊」編

 

※66 イワン・ツルゲーネフ

 1818-1883。オリョールの貴族の次男。詩人、小説家。十九世紀ロシア文学における三大巨頭が一(他二人はドストエフスキーとトルストイ。プーシキンは別格)だが、日本ではやや影が薄い。『初恋』が有名。「第五艦隊」編冒頭で引用されているのは彼の散文詩『ロシア語』である。

 

※67 SAR

 Search And Rescue(捜索救難)の頭字語。読んで字のごとく。

 

※68 旗艦に支給される桜花を象った特別の記章

 原作ゲームで編成画面を開いた時に、旗艦だけ「1」の数字のバックに桜花のマークが付いていることに注目した。

 

※69 その眼差しと同じぐらい冷ややかな右手

 その右手の持ち主が誰かということをその「冷ややか」さが暗示している。

 

※70明石さんに五分間だ

 ロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』。主人公ジョニーの小隊軍曹であるジェラル軍曹のセリフ「従軍牧師に五分間だ」から。

 

※71 アレクサンドル・プーシキン

 アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン。1799-1837。詩人、小説家。文学のみならず、ロシア語そのものに大きな影響を与えた。代表作は多すぎるので『青銅の騎士』と『エヴゲーニイ・オネーギン』としておく。ここで引用されているのは『***へ宛てて』(原題は『К ***』)。『アンナ・ケルンへ』の名でも知られる。

 

※72 QRF

 Quick Reaction Force(即応部隊)。

 

※73 CSAR

 Combat Search And Rescue(戦闘捜索救難)の頭字語。敵性地域に取り残された自軍や友軍将兵を救助すること。

 

※74 ミネソタの冬

 ミネソタは、アメリカ合衆国中西部の北に位置し、カナダと接している州の一つ。いわゆる大陸性気候に属しており、冬寒く夏暑い。過去最低気温は96年の-51℃。最高気温は36年の46℃であった。厳冬から「アメリカの冷蔵庫」と呼ばれている。なおアラスカ州は「アメリカの冷凍庫」扱いの模様。

 

※75 「ラスティ・ネイル。リンスタイプで、ウィスキーはアイラモルトを。ドランブイとウィスキーの比率は一対三。氷はクラッシュアイスで」

 ラスティ・ネイルはドランブイによる甘みが特徴的なカクテルの一つ。ここでの「僕」は大人の男気取りで、リンスタイプ……つまり「グラスにドランブイを入れてステアしてから捨て、そこにウィスキーを注ぐ」という、甘さが非常に控えめになる作り方を指定している。(そして慣れていないのでその後うっかり比率まで指示している)そこまでならまだちょっとした背伸びで済むのだが、最後に氷を溶けやすいクラッシュアイスと指定して、ウィスキーがより早く薄まって飲みやすくなるようにしている辺り、どうにも格好をつけきれていない。

 

※76 「ウォッカ」

 「僕」など比べ物にならないほどの、毅然とした、いとも敬愛すべき親愛なる真のロシア的精神の持ち主によるその魂の音声的発露。

 

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*「洋上」編

 

※77 ウィリアム・アーネスト・ヘンリー

 1849-1903。イギリスの詩人、評論家。イングランド、グロスター出身。若い頃に結核によって足の切除を余儀なくされた。なお「洋上」編の冒頭で引用されているのは、彼の最も有名な作品と言えるであろう『インヴィクタス』である。また彼は本作タイトルの元ネタの作者であるロバート・ルイス・スティーブンソンの友人であり、『宝島』の著名なキャラクター、ジョン・シルバーのモデルでもある。

 

※78 ペンギンを非公式マスコット

 艦これユーザーの多くは猫とペンギンに特定の感情を抱く傾向があるという。

 

※79 Хрень

 ロシア語スラング「マット」で、男性器の意を持つ単語。ただし、その意味で最もポピュラーなのはХуй(フイ)であって、Хрень(フリェーニ)ではない、と思う。

 

※80 コルコバードの救世主像

 コルコバードのキリスト像は、ブラジル独立百周年を記念して、1922年から1931年にかけて建設された巨大な像である。リオデジャネイロに存在する。石鹸石でできているので当然白っぽいのだが、2009年にはイルミネーションでカラー化された。ターンごとの文化力+5。新たな社会制度採用に必要な文化力-10%。

 

※81 こちらに気づかないまま水平線と夜の闇の向こうへと消えていった。

 映画『史上最大の作戦』より。米軍落下傘兵の一隊とドイツ軍守備兵の一隊が、両者ともに上空の航空機に気を取られて、互いに気付かず真横を通り抜けていくシーンがある。

 

※82 『彼を信頼するものは、失望させられることがない』

 ローマ人への手紙第十章十一節。“聖書は、「すべて彼を信じる者は、失望に終ることがない」と言っている。”(口語訳)

 

※83 『武器は、それを振るう腕よりは重要でない。腕は、それを導く精神よりは重要でない』

 アンドレ・ジッド『テゼ』より。正確には「武器は、それを持つ腕よりは重要ではない。そして腕は、それを導く理知的な意志よりも重要ではない」。

 

※84 彷徨うのはユダヤ人かオランダ人

 ユダヤ人→刑場へ引かれてゆくキリストを嘲った罰で最後の審判の日まで放浪を続ける運命を背負わされたユダヤ人の伝説より。

 オランダ人→ままならぬ風を受けて神を呪った結果神罰を受けたオランダ人船長の伝説より。フライング・ダッチマン。

 

※85 道を歩いている時に、ふとすれ違って振り向くぐらいのさり気なさで再会したい。

 聖伝(キリスト教における伝説;史実性は薄い)によれば、第一の使徒聖ペテロは迫害から逃れてネロ帝統治下のローマを去る途上、キリストとすれ違ったという。そこでペテロが“Domine, quo vadis(主よ、何処へ行かれるのですか?)?”と尋ねると、ローマの信徒たちを見捨てたお前の代わりに、十字架に掛けられに行くのだ、とキリストは答えた。その言葉で自らの使命を悟ったペテロは引き返し、逆さ(はりつけ)になって殉教したとされる。

 

 

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*「大規模作戦」編

 

※86 ポール・ヴェルレーヌ

 1844-1896。ポール・マリー・ヴェルレーヌ。フランスの詩人。いわゆる「象徴派」の一人。「大規模作戦」編冒頭で引用されている、この『秋の歌』で特に有名。三十三歳で教職に就いている時に教え子の美少年に惚れて学校を首になったり、その美少年と二人でイギリスに渡ったり、少年の夭折後は彼の故郷を放浪するなど、実に詩人らしいアレな人生を送った。

 

※87 一つの体には多数の器官があってあらゆる器官が同じ働きはしない

 ローマ人への手紙第十二章四節より。「一つのからだには多くの器官があって、すべての器官が同じ働きはしないのと同じように、」(新改訳)

 

※88 ビゼー

 ジョルジュ・ビゼー。1838-1875。フランスの作曲家。代表作はオペラ『カルメン』。ただし『カルメン』はプロスペル・メリメ(1803-1870)による原作を基にしたものである。

 

※89 『お前が投げたこの花を』

 オペラ『カルメン』の第二幕で歌われるアリア「花の歌」の別称。歌の冒頭の歌詞からこう呼ばれる。ここでの“僕”は『カルメン』主人公のホセ気分で「お前が投げたこの花を 俺は牢の中でも手放さなかった しぼんで干からびてしまっても その甘い匂いは変わらなかった」などと考えていたものと思われる。

 

※90よくもまあぬけぬけと、営倉になど入っていられたものだ。

 スターリンが独ソ戦開始時に、かつて粛清した部下を収容所から解放して「よく刑務所なんかに入っている暇があったものだ」と言った、というエピソードがまことしやかに語られているが、英露での出典は見つけられなかった。

 

※91 深海から上がってきた大亀の首がたまたま流木のうろにすっぽりとはまってしまう

 盲亀浮木。『雑阿含経』 『涅槃経』などにある仏教説話より。滅多にないことのたとえ。「優曇華の花」と続ける場合もある。

 

※92 靴と一緒に煮て食べてしまう

 チャップリンの『黄金狂時代』より。空腹の余り革靴を煮て食べるシーンがある。

 

※93 その名を謳われることのない英雄たちは、誰でも彼女なんだ。

 ハインライン『異星の客』より。

 

※94 アブサンかあ。そんなら黒タバコも用意しないと

 特に「ゴロワーズ」としたい。

 

※95 ヒコーキ野郎

 『素晴らしきヒコーキ野郎』(1965)、『華麗なるヒコーキ野郎』(1975)より。

 

※96 Хуй в рот

 Хуй в ротは英語で言うところの“Suck my dick”ぐらいの意味で、ロシア語スラングにおける一つの決まり文句である。

 

※97 говнолёты

 говно(「クソ」)とсамолёты(「飛行機」の複数形)の合成語。もちろん正式な単語ではないが、ロシア人による使用例も一応ある。

 

※98 それは自殺行為だ...独学で飛行機を飛ばすとか...瞬間接着剤を昼食代わりに摂取する...

 2012年11月頃にオーストラリアのメトロ・トレインズ・メルボルンという鉄道会社によって公開された公共広告キャンペーン・ムービーで歌われた“Dumb ways to die”「おバカな死に方」という曲より。歌手はTangerine Kittyであり、SoundCloudにて無料で聴くことができる。

 

※99 一人を救うのと世界を救うのとは、大体同程度の価値がある。

 コーラン第五章三十二節「人の生命を救う者は、全人類の生命を救ったのと同じである」より。なおこの一節は、この作品そのものの元ネタの一つとも言えるハインライン『宇宙の戦士』にも引用されている。

 

※100 「光あれ」すると光があった。

 創世記第一章三節『神は「光あれ」と言われた。すると光があった。 』より。

 

※101 「どうしてこんな戦争を始めたのか?」(略)「我々が?」

 ジョー・ホールドマン『終わりなき戦い』(1974)より。ハインラインの『宇宙の戦士』(1959)と並ぶ戦争SF作品だが、ベトナム戦争に従軍したホールドマンと大戦期の人間であるハインラインでは描き出される戦争の雰囲気が違っていて、非常に興味深く読み比べることができる。少々具体的に述べると、ホールドマンの方が戦争の悲惨さや兵士の悲哀、反暴力などの点を深く描き出しているのに比べ、ハインラインの描く戦争は人の死はあっても非常に明るく、また作中では暴力の行使を異常な行為であると認めつつ、軍隊や戦争そのものについても理論立てて肯定しており、ややもするとプロパガンダ映画的とさえ言える。これはハインライン批判に取れるかもしれないが、筆者は(どちらも好きだが、敢えて選ぶとすれば)ハインラインの方が好き。なお、これらの二作品について文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所の白鳥克弥という人物が2009年に『戦争SFの成立と背景』というタイトルで興味深い考察を行っている。ネットで読めるので、参考までに紹介しておく。

 

※102 コンラート・フェルディナント・マイヤー

 1825-1898。スイスの作家、詩人。十九世紀ドイツ語圏でも指折りの作家。なお、引用された彼の詩は彼自身の作品としてよりもむしろ、アルノルト・シェーンベルクによる楽曲『地上の平和』の詩として知られている(ように思われる)。

 

 

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*「融和」編

 

※103 ロバート・フロスト

 ロバート・リー・フロスト。1874-1963。特にアメリカで非常に人気のある詩人の一人。ピューリッツァー賞を四度受賞した。ここで引用した詩は彼の詩でも随一の知名度を誇る『選ばれざる道』だが、個人的には『雪の降る夕方森に寄って』の方が好み。

 

※104 それは大体こういうものだ。~生きる。

 イーゴリ・ヤルケーヴィチ『Ум. Секс. Литература』(知とセックスと文学)より。ペレーヴィンよりこっちの訳本出て欲しい。

 

※105 TANSTAAFL

 ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』より。タンスターフル。"There Ain't No Such Thing As A Free Lunch"。直訳すると「無料の昼食などというものはない」だが、意味は「ただより高いものはない」。

 

※106 救いはこの中にある

映画『ショーシャンクの空に』より。

 

※107 主は私の羊飼い

 詩篇第二十三篇より。

 

※108 死の陰の谷を行く時~欲しいのだ。

 ベトナム戦争時代に流行った聖書の一節の改変ネタ「たとえ死の陰の谷を歩むとも悪を恐れず、何故ならこの俺が谷で一番悪党だからだ」より。英語では“Though I walk through the valley of the shadow of death, I will fear no evil for I am the evilest son of a bitch in the valley.”

 

※109 「定員オーバーだ」

 最初ここは映画『エアフォース・ワン』風に「私の車から下りろ!」もしくは「私の車から出て行け!」にしようと思っていた。

 

※110 シルバー船長とジム少年

 スティーブンソン『宝島』の登場人物。敵同士の関係だが、状況によっては協力し合うこともあり、奇妙な友情で結ばれている。

 

※111 アテナとオデュッセウス

 ホメロス『オデュッセイア』で、女神アテナはお気に入りの英雄オデュッセウスをしばしば助ける。

 

※112 ロランとオリヴィエ

 フランスの武勲詩(叙事詩)『ロランの歌』などの登場人物。実在。二人は親友同士で、猛将ロランに知将のオリヴィエといった具合だが、実はオリヴィエの方が活躍していることもある。最期は数で勝る敵軍相手に援軍を要請することを面子が立たないからといって拒否したロランのせいで二人とも死んだ。

 

※113 ローゼンクランツとギルデンスターン

 シェイクスピア『ハムレット』やそれを基にしたトム・ストッパードの戯曲『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』の登場人物。死ぬ。

 

※114 ヒースクリフとキャシー

 エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(1847)の登場人物。死ぬ。キャシーに至っては亡霊(の幻覚)として現れる。

 

※115 ブッチとサンダンス

 実在の犯罪グループ、ワイルドバンチ強盗団のメンバー。『明日に向かって撃て!』などの映画で有名。最期ははっきりとしないが、銃撃戦の末に殺害されたとされている。

 

※116 ボニーとクライド

 ボニー・パーカーとクライド・バロウは1930年代前半に強盗や殺人を繰り返した実在の犯罪者カップル。最期は短機関銃によって蜂の巣にされて死んだ。

 

※117 アナベル・リー

 アメリカの小説家、詩人であるエドガー・アラン・ポー(1809-1849)最後の詩。ポーの死後二日目に新聞に掲載された。詩の中でアナベル・リーは死ぬ。

 

※118 彼女の微笑みのきらめきは

 ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ『イル・トロヴァトーレ』(1853)、主人公マンリーコの恋敵、ルーナ伯爵がヒロインを想って歌ったアリア「君が微笑み」より。個人的に、1975年のジョルジョ・ザンカナーロがルーナ伯爵を演じているものが好き。

 

※119 「武蔵にフライドチキンとワッフル、飲み物はコーラで、デザート代わりにキャンディバーを出してやってくれ」

 ステレオタイプなアフリカ系アメリカ人の好物。

 

※120 「こいつにはフライドステーキとコーンブレッドを。飲み物はスイートティーだ」

 ステレオタイプなアメリカ南部人の食事。もう少し言っておくと、「僕」が武蔵を黒人扱いしたので、武蔵は「僕」を(差別的風土が残る)南部人扱いした。

 

※121 「今のロシア語を通訳してくれないか?」

 国連総会に出席したフルシチョフが、ソ連に都合の悪い演説を靴で机を叩いて遮ろうとした際に、その演説者がこう言った、という話があるが、出典は見つけられなかったのでアネクドートの一つかもしれない。ただしフルシチョフが机を叩いて演説の妨害をしたのは事実である。Youtubeで“Kruschev Gets Angry”と検索するとその際の様子が見られる。

 *英語版Wikipediaにこの件を解説した「Shoe-banging incident」という名前のページがあった。そこでは、この発言は1960年にニューヨーク市で開催された第902回国連総会で行われたもので、演説者(ロレンソ・スムロン;フィリピンの政治家)ではなく、イギリス首相ハロルド・マクミラン(当時)によると書かれている。(2020/06/27追記)

 

 

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*「Home is the sailor」&「歴史的補遺」

 

※122 アルフレッド・エドワード・ハウスマン

 1859-1936。十九世紀イギリスの詩人、評論家。オックスフォード大出身。ギリシア抒情詩に通じる。個人的な印象だが、他の詩人と比べて理解が平易な詩を書くことが多い気がするので、英語学習にも向いているのではないだろうか。特に田舎に住む一人の青年が折々の感慨を歌うという体裁を取った『シュロップシャーの若者』(原題“A Shropshire Lad”)(1896)などは、強くそのように思われる。筆者お気に入りの詩人の一人でもあり、意識的に多用を避けなければならなかったが、結局二回使った。なお『シュロップシャーの若者』はアーサー・サマヴェルによって歌曲化されており、『歴史的補遺』の冒頭で使われている『通りで兵士の行進する音がする』(原題“The street sounds to the soldiers' tread”)もその中に含まれている。劇的で情感たっぷりの歌曲版はエピローグにぴったりなものとなっているので、ぜひ一聴してほしい。「Bryn Terfel: The complete "A Shropshire Lad" (Somervell)」で検索を掛けるとYoutubeの動画が出てくる。08:11からの曲が『通りで兵士の行進する音がする』である。付け加えるのを忘れていたが「Home is the sailor」編冒頭で引用されているのはハウスマンの詩『R.L.S』であり、これは「Robert Louis Stevenson」を意味する。

 

※123 「ああ、お前、私の息子! よく帰ってきたね!」

 ドイツ民謡「ハンス坊や」より。この歌は映画『戦争のはらわた』で用いられたことでも有名。

 

※124 人類史上、かくも多数の人々が

 チャーチルが第二次大戦のバトル・オブ・ブリテンを振り返って述べたとされる言葉「かくも多数の人々が、かくも少数の人々によって、これほど多くの恩恵を()けたことはかつてなかった」より。原文は“Never was so much owed by so many to so few.”である。

 

※125 それにきっと響の残していったボトルの中身はとても酸っぱくなっているだろう。

 イソップ寓話の一つ、『すっぱい葡萄(ぶどう)』より。

 

※126 「武器よさらば」

 アーネスト・ヘミングウェイの長編小説『武器よさらば』(1929)より。

 

※127 那珂ちゃん

 人類の決戦存在。

 

※128 「西海岸?」

 ハインライン『宇宙の戦士』の終盤で、主人公「ジョニー・リコ」が家ではタガログ語(フィリピンの言語の一つ)を話す(≒有色人種である)と読者に知れるシーンがある。これはそれまで主人公を(無意識的に、固定観念によって)英語を母語とする白人だと思い込んでいた当時のアメリカの読者に対して、驚きを与えるものだった。

 

※129 何たって、僕はまだ二十歳にもなっていなかったんだからな。

 ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』末尾より。

 

 


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