競馬場で働くほどの競馬狂(ターフジャンキー)だった俺が目覚めると、一頭のサラブレッドになっていた。
名馬の父、名牝の母。最高の血統を授かり、クラシックでの勝利を夢見たのも束の間、すぐに世界の異変に気づく。サンデーサイレンスは「サンデーサイデンス」に、マルゼンスキーは「マルゼニスキー」に。ここは、俺の知る歴史とは少しだけ違う、《馬が人と話せる》競馬の世界だった。

そして、俺が生まれた「マストファーム」は、倒産寸前の危機に瀕していた。
原因は、先代から牧場を継いだばかりの、知識ゼロの女子大生オーナー。
悪徳業者に騙され、貴重な馬たちを二束三文で売り払い、馬用の温泉でくつろぐ天然お嬢様。彼女を支えるのは、馬にカレーライスを出す素人牧場長一家と、免許取りたての新人女性調教師。

このままでは肉になる――。

絶望を前に、俺は自らの蹄で運命を切り拓くことを決意する。
前世の知識をフル活用し、経営コンサル、調教、繁殖計画まで全てを影で操る「影の支配者」として。

これは、一頭の賢すぎる馬が、情熱だけが取り柄のポンコツチームを率い、理不尽だらけの世界の頂点を目指す、前代未聞の競馬英雄譚(サクセスストーリー)。
その第一歩、伝説のデビュー戦。鞍上には、馬の背中で絶叫する史上最弱の新人騎手を乗せて――。
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