もしも異能がディスクロージャーされたら?
オリジナル:現代/冒険・バトル
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人混みの中で言い争っていた一組の男女が、突然、空へ飛び上がった。
「え、今の見た?」「ワイヤーじゃね?」「映画の撮影だろw」
最初は誰もが笑っていた。だが、男女はビルの谷間を自在に飛び回り、目に見えない力をぶつけ合う。建物の外壁が砕け、道路が陥没し、逃げ惑う人々へ向けられた攻撃を女が半透明の障壁で防ぎ止めた。
動画は瞬く間に拡散。現場には警察、報道陣、そして所属不明の黒服たちが駆けつける。全国生中継で映し出されたのは、どう見てもCGでは説明できない、空飛ぶ人間同士の戦闘だった。
ネットは大騒ぎになった。
「AI動画だろ」
「いや生中継なんだが?」
「だからあの黒服は誰なんだよ!」
「政府って何か隠してないか?」
ところが、別の場所ではまったく違う会話が交わされていた。
「昼間の渋谷で異能バトルとか馬鹿だろ」
「またガス漏れで処理できるんじゃね?」
「全国中継されてんだぞ。無理に決まってるだろ」
「Tier0の連中は何してんの?」
「神様はお前らの尻拭い係じゃねえよ」
そう。この世界に異能は昔から存在していた。
覚醒した能力者は、日本だけでも約三百四十二万人。およそ三十六人に一人が、普通の人間にはできない何かをできる。彼らは学校へ通い、会社で働き、恋をして、家族と暮らしている。その裏では政府直属の秘匿機関『八咫烏』が、能力者や怪異、神格に関わる事件を処理し、社会の平穏を守ってきた。
誰も知らなかったのではない。噂も映像も目撃談も、昔からあった。ただ、それを『現実』だと社会が認めなかっただけだ。
しかし、今回ばかりは隠しきれなかった。
その夜、内閣総理大臣が記者会見で告げる。
「政府は、いわゆる『異能』と呼ぶべき力が実在することを、以前より認識しておりました」
……以前から?
じゃあ、今まで何を隠していた?
能力者を恐れる人、憧れる人、商売を思いつく人、正体を隠したまま働く人。政治も学校もネットも、手探りで新しい日常へ踏み出していく。
これは世界を救うたった一人の英雄の物語ではない。
長いあいだ秘密だった異能が、ある日突然『公然の事実』になったら――世界は、そして人々は、どんな反応をするのか。
その「もしも」を、ニュースと掲示板と人々の日常から追いかける、現代異能ディスクロージャー群像劇。
なろうカクヨムにも掲載してます。